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2.知ってるよ?
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「さすがにお父さんはいるよねぇ、元カノ」
「いるよ」
「知ってるの?」
「知ってる」
「修羅場!?」
「なんで」
「略奪!」
「違うから!」
タブレットを使用禁止にするべきかと、真剣に考える。
「どんな人?」
「え?」
「お父さんの元カノ」
「……」
子供に教えることじゃない。
いつもなら、適当に流す。
だが、和輝と並ぶあの女性を見てしまった。
あの頃より磨きがかかった大人の女性になった彼女は、夫ととてもお似合いだった。
「お父さんと同じ年で、バリバリのキャリアウーマンで、美人で痩せててハイヒールが似合って、和輝と並ぶとお似合いで――」
「――ただいまぁ」
私、子供相手に何を言った!?
弾かれるように立ち上がる。
「はい! お父さんと交代」
そそくさと和輝の食事を温めて食卓に並べた。
そして、前回同様、部屋を出て、聞き耳を立てる。
「お母さんと初めてデートした場所は?」
「…………」
「憶えてないの!? サイテー」
和葉、もっと言っちゃえ!
「ご飯食べに行った……と思う」
あら、知ってた?
「初めてもらったプレゼントは?」
「………………」
「マジ、サイテー」
ははは……。
「あ――」
和輝が何か言いかけたが、和葉には聞こえなかったようだ。あるいは、無視した。
「――お母さんて、お父さんの何番目の彼女?」
「はぁ!?」
ふふっ。焦ってる。
「怒らないから正直に言ってごらん」
いや、それは妻の台詞じゃぁ……。
「数えられないほどいるのっ!?」
「いない! けど、子供に言うようなことじゃ――」
「――お母さんは教えてくれたのに」
「はぁ?」
「お父さんの元カノ情報」
「え――?」
二階から由輝が下りてくる足音に、私はそっとお風呂に向かった。
和輝の様子からして、私が元カノのことを知っているなんて思いもしなかったのだろう。
でもね、知ってるよ?
知ってるんだよ……?
また、惨めになった。
夫が何か言いたげに私を見ても、知らん振りをした。
いつもなら、私から声をかけるのに。
だって、聞けるわけない。
『私があなたの元カノのことを知っていて、驚いた?』
聞けるはずないじゃない……。
それでも、私は知っている。
知っているのだ。
「いるよ」
「知ってるの?」
「知ってる」
「修羅場!?」
「なんで」
「略奪!」
「違うから!」
タブレットを使用禁止にするべきかと、真剣に考える。
「どんな人?」
「え?」
「お父さんの元カノ」
「……」
子供に教えることじゃない。
いつもなら、適当に流す。
だが、和輝と並ぶあの女性を見てしまった。
あの頃より磨きがかかった大人の女性になった彼女は、夫ととてもお似合いだった。
「お父さんと同じ年で、バリバリのキャリアウーマンで、美人で痩せててハイヒールが似合って、和輝と並ぶとお似合いで――」
「――ただいまぁ」
私、子供相手に何を言った!?
弾かれるように立ち上がる。
「はい! お父さんと交代」
そそくさと和輝の食事を温めて食卓に並べた。
そして、前回同様、部屋を出て、聞き耳を立てる。
「お母さんと初めてデートした場所は?」
「…………」
「憶えてないの!? サイテー」
和葉、もっと言っちゃえ!
「ご飯食べに行った……と思う」
あら、知ってた?
「初めてもらったプレゼントは?」
「………………」
「マジ、サイテー」
ははは……。
「あ――」
和輝が何か言いかけたが、和葉には聞こえなかったようだ。あるいは、無視した。
「――お母さんて、お父さんの何番目の彼女?」
「はぁ!?」
ふふっ。焦ってる。
「怒らないから正直に言ってごらん」
いや、それは妻の台詞じゃぁ……。
「数えられないほどいるのっ!?」
「いない! けど、子供に言うようなことじゃ――」
「――お母さんは教えてくれたのに」
「はぁ?」
「お父さんの元カノ情報」
「え――?」
二階から由輝が下りてくる足音に、私はそっとお風呂に向かった。
和輝の様子からして、私が元カノのことを知っているなんて思いもしなかったのだろう。
でもね、知ってるよ?
知ってるんだよ……?
また、惨めになった。
夫が何か言いたげに私を見ても、知らん振りをした。
いつもなら、私から声をかけるのに。
だって、聞けるわけない。
『私があなたの元カノのことを知っていて、驚いた?』
聞けるはずないじゃない……。
それでも、私は知っている。
知っているのだ。
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