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6.ひとりになりたい
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翌日。
私はいつものように三人を見送り、家中の掃除をして、買い物に出た。
カップラーメンに冷凍パスタ、冷凍チャーハンなんかを買い込む。
家に帰り、昨日のうちに買っておいた材料で唐揚げとシチューを作り、炊飯器の中のご飯を冷凍庫に入れた。米を研ぎ、タイマーをセットする。
それが出来てから、荷物をまとめて家を出た。
車は使わず、バスと電車で海を目指す。
海や夕日に向かって叫ぶつもりはない。
ただ、駅についたらその方面行きの電車がきたのだ。
スマホで検索して、近くに安いホテルのある駅で下りた。
平日の午後とあって、人通りは少ない。
四泊の予定で、シングルの部屋に入った。
素泊まり、一泊五千八百円。連泊割と土日前日割増は、ほぼ同じ金額だった。
十三階建ての十階の部屋で、海が見えた。
私はベッドに腰かけ、実家の母に電話をかけた。
インフルエンザになってしまったから、うつさないように実家に行く。
それが一番、疑われず、心配もされない理由だと思った。
母に、しばらく一人になりたいからそういうことにして欲しいと話すと、「五日で帰るのね?」と聞かれた。
もっと追及されると思ったけれど、母はそれ以上、何も言わなかった。
それでも、やはり心配だからと、ホテルと部屋番号を聞かれ、伝えた。
和葉が帰ってくる前に家に行ってくれると聞いて、安心した。
それから、和輝への連絡をどうすべきか、考えた。
電話で伝える気はなかった。
メッセージを送れば、電話をかけてくるだろう。
今日も早く帰るのかな……。
波がゆっくりと立ち上がっては消えてきくのを眺めながら、迷い続けた。そして、定時を待ってメッセージを送ることにした。
ベッドに横になり、目を閉じる。
あーあ……。
和輝はなんて言うだろう。
勝手に出て行って怒るだろうか。
心配してくれるだろうか。
結婚して、こんな風に彼から逃げたのは始めてだ。
ずっと穏やかに、幸せだった。
それは、事実だ。
けど、和輝は?
夫はどう思っていたのだろう。
私と同じように、今の生活を幸せだと思ってくれていたのだろうか。
結婚当初は若い嫁を貰ったと会社で冷やかされたりもしたと言っていたけれど、その頃の見る影もない今の私に、思うことはないのだろうか。
触れたいとも思えない妻を、不満に思うことはなかったのだろうか。
和輝は逃げたくなったこと、ある?
結婚して十五年。
誰よりも近くにいたはずの夫のホンネがわからない私は、妻失格だろうか。
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