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8.今も愛していると言えますか?
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カットとカラーを終えて車に戻ると、和輝はエンジンを止めて積んであった大判のブランケットをかけて眠っていた。
ドアを開ける前に窓に映った自分を見て、少し心配になる。
だが、今更だ。
ドアを開けると、和輝が目を覚まし、首を捻って私を見た。
それから、笑った。
「うん。似合う」
私も笑った。
「良かった」
美容師さんに短くて手のかからない髪型にして欲しいとお願いすると、前下がりのマッシュボブにしてくれた。後ろから見るとショートだが、横から見るとボブ。
以前のパーマが残っていない位置でカットしたから、ブラシを通しながら内巻きにブローするだけだと言われた。
こんなに短くするのは初めてで、首が寒い。
「さて」と、夫がシートを起こす。
「他に行きたいとことかない?」
午後三時。
雪がちらちら降ってきて、空は薄暗い。
和輝がワイパーを動かした。
「積もり出す前にホテル、行くか」
「どこに泊まる? 家の近くに帰って――」
「――任せてくれる?」と言った彼の表情から察するに、もう決めてあるのだろう。
「いいけど、あんまり高いところは――」
「――うん。あんまり高くないところ。ちょっと買い物して行くか。飲み物とか」
「うん」
すぐ近くのスーパーで何本かの飲み物と、小腹が空いた時用のお菓子を買った。
どこのホテルに泊まるのか聞いたが、和輝は教えてくれない。
家の方面には向かわず、海沿いを走る。十五分ほど。
海を背に大きく湾曲したダークブラウンの建物が見え、まさかと思って隣の夫を見た。
視線に気づきながらも夫は何も言わず、昼間なのにピンクのライトで照らされた料金の看板を横目に、駐車場を目指す。建物の一階部分が駐車場。
「和輝? ここって――」
「――来てみたかったんだよな」
「ラブホテルに!?」
「そ。柚葉と来たことなかったろ?」
確かに、来たことはない。
私は和輝が初めての彼氏だし、和輝はひとり暮らしをしていたから、ホテルを利用する必要もなかった。
が、気になったのはそこではない。
私は窓の外に目を向けた。
建物正面に噴水が見えるが、さすがに冬の間は止まっている。
「歴代の彼女とは来たけど、私とはないから来てみたかった……と」
「えっ!? 違う! そういう意味じゃないから」
土曜日とはいえまだ昼間なのに、随分と混んでいるようだ。
空いているスペースに車を止めると、和輝はシートベルトを外した。そして、私のベルトも外す。
「ねぇ、普通の――」
「――安いぞ? ここ」
「え?」
「旅館よりゼロが一つ少ない」
それはそうだろう。
「ジャグジーとかサウナもあるって」
「ジャクジー……」
「マッサージチェアがある部屋もあるって」
「マッサージ……」
「飯も美味いらしい」
私ははぁ、とため息をつく。
「何事も人生経験だと思う」
確かに、この機会を逃せば私は一生、ラブホテルに泊まることはないだろう。
こういったホテルに泊まる理由は一つだろうが、それはどのホテルにも言えること。
最近のラブホテルは女子会で使われることもあると聞くし、何よりも安いのは魅力だ。
お母さんには絶対、言えないな。
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