1歳児天使の異世界生活!

春爛漫

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村長の家に行く

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 初めは私のことを気にして歩いていた村長も、三輪車でサチがついてくると分かったら普通に歩き出した。
 村長の後ろをキコキコとペダルをこいでついて行く。

 村は畑と家があって穏やかな雰囲気だ。
 気軽に村長に村人が挨拶しているが、私のことは不思議そうに見てくる。

 目的地に着いたようだ。
 村の中でも大きい家だ。
 村長の家かな?

「乗り物から降りなさい。いや、私が抱っこした方が早いか」

 村長にヒョイと抱っこされてしまった。
 びっくりだ。
 今の私の小ささが思い出される。
 抱っこなんて大きくなってからされたことなんて無かった。
 今は子供なんだと思い知る。

 玄関の扉を開けて入って、そのまま家の中を進む。
 高い場所から眺める景色の方がしっくりとくる。
 古いが綺麗に掃除されている建物だ。
 壁にかけられている刺繍された布が家を明るく見せている。

 多分、食事をする机に座らされた。
 村長は椅子に座っている。
 目線を合わせてくれたようだ。

「さあ、話しをしようか。サチ、君は何処からきたのかね?」

「や! ま! かりゃ」

「山からか。一緒にいた大人はどうした?」

「おとにゃ、はじめかりゃいにゃかった」

「はじめからいない? じゃあいったいどうして1人でいるんだい?」

 どうして1人でいるかなんて、創造神様に幼児にされて1人にされたからだ。
 なんて答えようか。

「ひといでいきていくかりゃ」

「君みたいな小さい子は1人で生きられないよ。誰かのお世話がないと」

 ふむ、確かにそうかもしれない。
 服も1人じゃ脱げないだろうし。
 どうしようか。

「明日、街に野菜を卸しに行く時にサチも連れて行く。おそらくそこで君の身元がわかるだろうから安心しなさい。今夜はこの家に泊まるといい。妻が喜ぶだろう。君はかわいいから」

 自分でも可愛いと思ったが、この世界の人でも可愛いと思うのか。
 まあ、外見がよければお得だよね。


 この家の家族が帰ってきたのか、入り口あたりが賑やかになった。
 足音と声が一緒に近づいてくる。

「父さん、ここにいたんだ。村で噂になってるよ。村長といた幼子は誰かって。その子かい?」

 村長を若くして少し細身にしたような男性が入って来た。
 村長を「父さん」と言っているので息子だろう。

「ああ、今夜だけ泊めることになった。名前はサチだ。よろしくな」

「かわいいね~。サチちゃんでいいのかな? よろしくね」

「よりょちく」

「凄いね~。話せるんだねー」

「かわいいわ。私もよろしくね。サチちゃん」

 村長に似たお兄さんと、村長の奥さんだろう優しそうな夫人が来て挨拶してくれた。
 この家の人は良い人らしい。

「サチちゃんかわいいわねー。抱っこしていいかしら?」

「いいよ」

 手を夫人に伸ばす。
 抱っこしての体勢だ。
 夫人は優しく抱っこしてくれた。
 村長もだけど夫人も抱っこに慣れてそうだ。
 違和感や不快感が無い。

「まあ、まあ、可愛いわ~。体温が高いわね~。赤ちゃんだからかしら?」

「あかちゃんじゃないでしゅ」

「赤ちゃんじゃないの~? しっかりしゃべるわね~。いい子いい子」

 柔らかい女性に抱っこされると安心するのか眠気がきた。天使の身体は睡眠がいるのか。
 あくびをする。

「あら、眠たいの? 寝ていいわよ~。ねんね、ねんね、サチちゃん、ねんね」

 夫人の優しい包み込むような声に身を委ねてサチは寝てしまった。

 夫人はサチを起こさないように静かに歩き、寝室のベッドの上にサチを寝かせた。
 首にかかっている不思議な容器を外して、サイドチェストの上に置く。
 夫人はしばらくサチの寝顔を見ていたが、さらりとサチの髪を撫でた後、村長達の所へ戻った。

「で、サチちゃんはどこの子なの? 父さん」

「わからん。が、名字持ちだ。あの子の乗っていた乗り物も見たことがないしの。良い家の子供だということは確かだろう。明日、野菜を街に卸しに行く時に私が一緒についていく。村のことはおまえに任せたぞ」

「それはいいけど気になるなぁ。あんな可愛い子が1人だなんて。何かトラブルでもあったんじゃないの?」

「おまえもそう思うか。幼児が1人で泣きもしない。厳しく躾られたのだろう。こちらの言葉もわかってたしの」

「まあ、まあ、そこまででいいじゃないですか。一晩かわいい子が同じ屋根の下で暮らすのですから。今から夕食の準備をしますよ」

「ああ、よろしく頼むよ」

 ◇◇◇

 むぅ、むぅ、いい匂いがする。
 食欲をそそる匂いだ。
 でも、まだ眠いの。
 寝ようかな?

 意識を遠ざけようとしたら、身体、お腹と胸の辺りをぽんぽんと叩かれる感じがした。

「サチちゃん、サチちゃん、起きてちょうだい。まんまを食べますよ。サチちゃん、サチちゃん」

 リズムよく叩かれる感触に意識が浮上してくる。
 優しい声だ。
 起きてくれと言っている。起きなきゃ。

「ふにゅ~う。だりぇ? わたち、おきうの?」

「そうですよ、サチちゃん。まんまの時間です。抱っこするから驚かないでね」

 寝起きで寝ぼけていると、身体がふわりと浮いた。
 意識の覚醒が促される。
 ぼんやりと目をあけると何処かに運ばれているようだ。
 いい匂いが近づいてきた。
 お腹は空いていないが、涎が出そうだ。
 じゅるりと涎をすする。
 歯は生えそろっているようだから食事も食べれるな。
 楽しみになってきて、だんだんと目が開いてきた。

 ダイニングだろう場所に着いたら、大人と子供がいた。
 大人は村長とその息子、多分嫁だろう女性。
 子供は7・8歳くらいの女の子と4・5歳くらいの男の子が椅子に座っている。

 サチは空いている椅子に座らされて、夫人がサチの横の席に座ると食事が始まった。
 とくに食事前の挨拶はないようだ。

 夫人がサチの口におかずがのったスプーンを当ててくる。
 食べ物だ。
 サチがぱかりと口をあけるとさっとスプーンが入ってきた。
 もぐもぐと食べるとおかずはサチの為に小さくきざんでくれたようで食べやすい。
 味付けは塩だろうが、野菜の旨味が感じられて素朴で美味しい。
 また口にスプーンがちょんちょんと当たると、ぱかりと口を開けてスプーンを迎えいれる。

 夫人に介助されながらサチは食事を楽しんだ。
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