1歳児天使の異世界生活!

春爛漫

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特級ギルド証

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 サチに負けたギルド長は、水に溺れていた体が回復するとサチに確認してきた。

「約束だ。特級ギルド証を作る。名前はサチでいいのか?」

 サチが答える前に大司教様が応えた。

「いえ、サチ・スメラギと作ってください」

「ダヴィド、わかったか?」

「分かりました」

 地面に座っていたギルド長が立ち上がり、ダヴィドさんを除いた全員でギルド長室まで行く。
 ソファに座って、全員で一息つく。

 そこでギルド長が疑問を大司教様に問いかけた。

「大司教様、何ですか、その子供は?」

 大司教様は重々しく頷いた。

「いずれ、公になるでしょうが、今はトップシークレットです。ギルド長は秘密に出来ますか?」

「……わかった。秘密にするから教えてくれ」

「サチ・スメラギ様は創造神様の使徒の天使です。ステータスの水晶を使っていただいても結構ですよ」

「……は?」

 ギルド長は脳が理解するのを拒否しているようだ。

「いや、まてまてまてまて。そんな存在いるのか!?」

「サチ様、マントを外しますよ。飛んでください」

 サチが翼を出して飛ぶとギルド長はまたもや、バカ面を見せてくれた。

「はぁ? はあーーーーー!?」

 サチはワザとギルド長に近づいて翼を見せる。
 ギルド長が無意識か、サチの翼を触ってきた。

「あ、ふわふわ」

「サチ様、こちらに来てください」

 なんか、大司教様が不機嫌な声を出している。
 サチは逆らわずに大司教様の膝の上に着地すると、大司教様も翼を触ってきた。
 翼を触りたかったのだろうか。

 ギルド長がソファの背もたれに、だらーんと身体を伸ばした。
 その顔は呆けていて、現実逃避をしているようだ。

 ギルド長室にノックの音が聞こえた。
 大司教様がサッとサチにマントを着せてくれる。

 ダヴィドが部屋に入ってきた。
 ギルド長を見て呆れている。

「ギルド長、お客様がいるのに何をしているんですか?」

「現実とは何かを考えていた」

「何、訳の分からないことを。
 サチ様、こちらが特級ギルド証です。依頼を受けなくても問題ありませんが、魔物の氾濫が起きた時は、真っ先に協力する義務があります。それだけご承知ください」

「はい」

 サチはダヴィドから特級ギルド証とやらを貰った。
 なんか凄いらしい。
 でも、嬉しいな。
 ひっくり返していろんな角度から見てしまう。
 ゴールドだ。
 豪華だ。
 今日は豪華の大放出だろうか。

「ギルド長! いい加減しっかりしてください! 小さい子供に負けたのを見られたって大丈夫ですよ。生きてますし」

「ぐっ」

 ギルド長は胸を押さえて、何かを我慢したようだ。

「しょりぇで、まもにょはかってくりぇましゅか?」

「あ?」
「え?」

 ギルド長とダヴィドの2人が、サチ語を聞き取れずに問い返した。

「それで、魔物は買ってくれますかと聞いています」

 大司教様がサチのフォローをしてくれる。

「……声がかわいい」

 ポツリとダヴィドさんが呟いた。
 いやん、照れてしまうじゃないか。

「あー、解体場に行こうか」

 ギルド長は丁寧に喋るのをやめたらしい。
 真っ先に立ち上がってドアから出て行く。
 なんか背中がすすけて見えた。
 大司教様も立ち上がってついて行く。
 私は抱っこのままだ。

 1階に下りて受付横を通って奥に向かう。
 通路は広い。
 だんだん、嫌な匂いがしてきた。
 腐ったような、鉄臭いような。

「ホビー! いるか?」

「はいはい、いますよ。解体ですか?」

 『ホビー』と呼ばれた中年の男性が顔を出した。

「そうだ。魔物はここに出してくれ」

 広い部屋に来た。
 床が赤黒い。
 いや、黒い。
 これ、血の色だ。

 サチは魔物を出してと言われたのでその通りにする。

「おおきいにょで、きをつけてくだしゃい」

 サチは収納から大きな猪を出す。
 広い解体場が一気に狭くなった。
 猪の獣臭い匂いも結構する。

「これは、ビッグボアか! 大物だな」

「凄いですね、サチ様。ギルド長! もう1匹ありますよ」

「マジか。隣の解体場に出してくれ」

 大司教が歩いて隣に行ってくれるたので、また収納からアルキマイラを出す。

「おお! アルキマイラ! すげぇ、全部、顔に1発ずつだ」

 興奮したギルド長がアルキマイラの死体を確認する。

「おお、これが! ギルド長! これは剥製にしてください! 教会が買い取ります」

 大司教様も興奮したようにアルキマイラの引き取りを願い出たが、ギルド長は少し残念そうな顔をした。

「いや、顔がぐちゃぐちゃだ。剥製にできねぇ」

「顔はそのままでいいです。サチ様の偉業を讃える為ですから」

「それなら……まぁ、出来るか。いいぞ。剥製を作った代金だけ貰うわ」

「ギルド長、太っ腹ですね」

「持ち込みだぞ、それくらいするわ」

 ギルド長と大司教様の掛け合いに、サチが口を出す。

「ぼあのおにくはおいしいでしゅか?」

「あ? ビッグボアの肉か? うまいぞ。ステーキが1番美味い」

 それを聞いたサチは想像して、緩くなった口から涎が垂れそうになったが、我慢した。

「おにくはひきとりましゅ」

「はあ、わかった。皮と牙と内臓だけ買い取りな」

 ギルド長がガクリとした。
 私が倒したのだから肉を全部引き取ってもいいじゃないか。
 仕方ない。
 ギルド長を殺しかけたみたいだし、解体した後の肉を一塊あげるか。

「ホビー! ビッグボアの肉は引き取りだ!」

「そんな、こんなにあるのに」

 ホビーさんも残念がっている。
 でも、孤児院と教会に寄付したいんだ。

「だいしきょしゃま、こじいんときょうかいに、おにくをきふしましゅ」

「そうですか! サチ様は優しいですね。ありがとうございます」

 大司教様とサチのやり取りを見ていたギルド長とホビー。

「てことらしいぜぇ」

「それなら仕方ないですね」

 2人は納得した。

 大司教様が解体の確認をする。

「解体の時間はどれくらいですか?」

「1時間くらいですね。どうしますか? 待ちますか?」

「サチ様、どうします? 待ちますか?」

「ほうしぇきやにいけましゅか?」
(宝石屋にいけますか?)

 何故かサチ語をマスターしている大司教様が素早く答える。

「いいですよ。肉は後から取りにきます」

「はい、わかりました」

 ギルド長に挨拶して、冒険者ギルドから出て教会の馬車に乗った。
 解体場の匂いはきつかった。
 まだ匂う気がする。
 大司教様と私に消臭をかけた。

「おや、匂いが、サチ様ですか。ありがとうございます。宝石屋に何をしに行くのですか?」

「ほうしぇきにょ、かいとりをしてもりゃいましゅ」

「それなら教会がしますものを!」

「だいしきょしゃまも、ほうしぇきほしいでしゅか?」

「サチ様が作られた物ならなんでも欲しいです」

「それじゃあ、こりぇあげましゅ」

 1カラットあたり1番高い宝石『ファンシービビッドオレンジダイヤモンド』。
 価値ははかりしれない。
 サチは創造で作る。
 私も実物を見るのはこれが初めてだ。
 なんと澄んだオレンジ色だろうか。
 きらめきも1級品だ。
 作ったばかりだから傷もないだろう。

 大司教様もサチの手の中の宝石から目が離せない。

「これは……この間いただいたピンクダイヤモンドに勝るとも劣らない。素晴らしい。本当にいいのですか? いただいても?」

 サチは大司教様の手に宝石を押し当てた。

「いいでしゅよ」

「ありがとうございます。宝物にします」

「あ、ちょっとまってくだしゃい」

 宝石に手をかざして持ち主が幸福になるように祈る。
 サチの能力は『創造』に『想像』だから、イケると思ったのだ。

 大司教様が疑問を口に出す。

「何かしてくれましたか?」

「ひみつでしゅ」

 内緒にしていた方が楽しい。
 大司教様にはお世話になってるからね。
 もう一つ『ファンシービビットオレンジダイヤモンド』創造する。
 これは売り物。

「ふふっ、お揃いですね」

 大司教様があまりにも嬉しそうに笑うから売れなくなってしまうじゃないか。
 それでは売らずに、私の物にして幸福のお祈りしておこう。

 それなら何を売ろうか?
 よしっ、ルビーの『ピジョンブラッド』を作ろう。
 これも画像を見ただけだけれど、価値が高い宝石だ。
 創造神様の能力を信じよう。

 〈いでよ! ルビーのピジョンブラッド!〉

 手の中にコロンと出て来た。
 燃えるような赤でも透き通っている。
 それにこのきらめき。
 紛うことなき宝石だ。
 大司教様も魅入られている。

「みましゅか?」

「いいのですか? それでは失礼して」

 大司教様はいろんな角度から『ピジョンブラッド』ご覧になっている。
 ルビーは目を引くからね。

 大司教様が満足したように、ほぅ、と息を吐いた。

「これも素晴らしいですね。私は先程いただいた宝石の方が良いですけども」

 既に宝石に愛着が湧いているようだ。
 嬉しいね。

 宝石屋では、いくらで売れるかな?
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