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孤児院に 1
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教会で昼食を食べてから孤児院に行こうとすると、ラズが「少し待っていてください」と何処かに行った。
あ、ラズの昼食は私が先生と勉強している時に食べているみたい。
おやつを食べているのに、よくお腹に入るよね。
ラズが帰って来たので、礼拝堂を通るからラズに神のマントをつけてもらって飛んで行く。
一般人に驚かれながら教会の入り口に着くと、聖騎士が4人居た。
護衛だって。
ラズがいなくなっていたのは護衛の手配の為だったらしい。
前後を2人ずつ聖騎士に囲まれて、ラズと一緒に隣の孤児院まで行く。
私が飛んでいると、やっぱり一般人に驚かれた。
『空飛ぶ1歳児』
驚くわな。
普通は。
孤児院に着くと孤児院の先生に案内されて院長室まで来た。
サチの胸が期待に膨らむ。
院長室の中に入ると、綺麗な院長が微笑んでいた。
私は思わず飛び出す。
「いんちょーー!」
ひしっと胸に抱きつくと、院長は驚いていたが抱っこしてくれた。
「サチちゃん、ようこそ。よく来てくれましたね。院長は嬉しいですよ」
「いんちょ、わたちもうりぇちいでしゅ」
「かわいいサチちゃん。ラズも久しぶりですね。よく来てくれました。会えて嬉しいですよ」
院長とラズは顔見知りだったらしい。
そういえば、ラズは孤児院の出だと言っていたから、この孤児院出身だったようだ。
「院長、ご無沙汰しています。今日はサチ様が肉の寄付に来ました」
「それは、それは、ありがとうございます」
しばし、院長と抱擁してから厨房に案内される。
さて、肉の寄付だ。
サチが倒した魔物のビッグボアの肉だ。
飛んでいるサチの小さな胸が無意識に張ってしまっていた。
魔物を倒した時は怖かったのに、ソレを倒して孤児院に寄付できるのが誇らしいのだ。
「いんちょ、にくのきふをしましゅ」
ちょっと自慢げな口調で宣言してしまった。
盛大に噛んでいるので全てが台無しだが、幼児の発表会だとしたら微笑ましい。
「ありがとうございます。サチちゃん」
律儀にも院長は付き合ってくれた。
サチはいい気持ちのまま、厨房の机の上にビッグボアの肉をどんどんだしていくと、収納に入っていた肉が全てなくなった。
そのあまりに大量に積まれた肉は『寄付』の常識を超えた量だった。
魔物肉が腐りにくいとしても、毎日孤児院で肉だけ食べても腐ってしまう量だ。
これには院長が思わず言葉を溢す。
「あらあら、嬉しいけど困ったわ。肉が多すぎますね」
良い気分に浸っていたサチの耳が院長の困った声を聞き、くりん、と振り返った。
「いんちょ、こまりゅ?」
「そうねぇ、困ったわ」
院長は頬に手を当てて「本当に困った」顔をしていた。
サチは『善意』での『肉の寄付』をしたかったのであって、院長を困らせたかった訳では無いが、現実問題として院長は「嬉しい」よりも「困った」顔をしていて、サチは「う~む」と悩む。
そうだ! 村長に布をプレゼントした時のように『大きなマジックバッグ』を創造して、肉を保存出来るように時間停止にしたら良い!
即、行動だ!
〈いでよ! 大きいマジックバッグ! 時間停止でね〉
何も無かった空間に『大きなトートバッグ』が出て来た。
「私のイメージなんてこんなものよね」と、サチは少し黄昏た後にすぐに正気に戻った。
心は『大人』なので。
ちょっと、最近、体に心が引き摺られているようで危ういが。
「ここに、にくをいりぇてくだしゃい」
サチの無意識の傲慢な指示にラズが従ってくれて、床からトートバッグを拾って肉を中に入れていく。
院長と厨房の料理人が一連の流れに驚いていた。
ラズが次々に肉をトートバッグの中に入れていくのに、一向に膨らまずに底無しのようにポイポイと肉が入っているのを見て、誰に言われずとも『普通』のトートバッグでは無いと気がついたからだ。
自分の行いに満足していたサチに院長が声をかける。
孤児院に『寄付』しにきた肉を、サチとラズが見せてつけてから持って帰るとは院長は考えてもいなかったからだ。
「サチちゃん。マジックバッグなんて高価な物、困ってしまうわ」
そう。
サチとラズは『マジックバッグ』ごと「肉の寄付」をするつもりだ。
世間ではマジックバッグがとても高価なのに。
サチはそんな事はもちろん知らないが、孤児院育ちで教会所属のラズも世間一般な、この事実を知っているかはーー怪しい。
「いんちょ、きふでしゅ。こまりまちぇん。じかんていちでしゅ」
見た目が若くて、ラズの事も知っている院長は『善意100%』を飲み込んだ。
疑う予知は無い。
サチは幼児だし(飛んでいるが)、ラズは生真面目な性格だと理解しているからだ。
「ありがとうね。サチちゃん。孤児院の食事が豪華になります」
院長の優しい手でサチはお尻を撫でられた。
背中に翼があったので。
他意は、無い。
……ちょっと、ぷりっけつが可愛かったとかーーあるかもしれない。
サチは単純に、優しく微笑んで感謝を込めた言葉をくれる院長に嬉しい気持ちになった。
お尻を触れられたのは気にしない。
幼児なので。
ラズが肉を入れ終わった『肉入りマジックバッグ』を料理人に渡している。
料理人は恐る恐るバッグを受け取っていた。
院長が「貰う」と決めたのなら料理人も気持ちを飲み込む。
……高価なマジックバッグを持つのが、恐い、とかーーもちろん思っている。
さて、サチの用事は終わったけど、まだ教会に帰りがたい。
もうちょっと院長と一緒にいたいのがサチの無意識な甘えだった。
「りゃず、すきにうごいていいでしゅよ。わたちはいんちょしちゅにいましゅ」
そう、サチは孤児院育ちのラズを好きに行動させることによって院長と一緒にいる口実にした。
無意識に。
「サチちゃんは責任を持って預かるから、ラズは行きたい所に行きなさい。少し人員も変わってしまっていますけどね。会いたい者もいるでしょうから」
それに乗っかったのは、善意の院長だ。
こちらにはやましい気持ちは無い。
生真面目なラズは言葉の通りに受け止めた。
院長にサチを預かってもらえれば安心だ。
「サチ様、院長、お心遣いありがとうございます。それでは行かせてもらいます」
ラズは足早に去っていった。
会いたい人でもいたんだろうな。
私は院長に抱っこされて院長室に行く。
大司教様に抱っこされすぎて慣れてしまったサチだ。
抱っこされたまま院長室に向かうサチ一行だった。
◇◇◇
「サチちゃん、元気にしていましたか? 不自由はしていませんか?」
「いんちょ、だいじょうぶでしゅ。きょうかいはいいとこりょでしゅ」
院長室に着いて、そのまま院長の膝の上に座っていたサチは院長に心配される。
まぁ、見た目は幼児なので。
結構、好き勝手しているのだが。
サチは心配してくれる院長の気持ちが純粋に嬉しかった。
私の事を気にしてくれるだけで嬉しい。
院長の胸、女性だからか安心する。
男性と違って柔らかい身体。
幼児はこれを求めていたんです。
サチの幼児返りは止まらない。
「サチちゃんは飛んでいましたね。飛べるようになったんですね。凄いです」
『凄い』で済む問題では無い。
飛べる人種はいないのだ。
「はい、とべましゅ」
サチは不器用な小さい手で神のマントを外す。
「いんちょ、みててくだしゃい」
サチは翼を出して飛ぶ。
院長室の中を飛び回り、院長の前に滞空した。
「あら! あらあらまあまあ! 凄いわ! サチちゃん!」
サチはドヤ顔だ。
肉の寄付の時も散々飛んでいたのを忘れているのだろうか?
1歳児の「ドヤ顔」。
可愛い、の、かも、しれない。
「しゃわってもいいでしゅよ」
サチは当たり前のように院長の膝の上に座り、翼を出したままにする。
子供に長い時間付き合ってきた院長は、サチ語を聞き取った。
「触ってもいいですよ」と。
院長が震える手でサチの翼を触る。
優しく触られるとくすぐったい。
サチは小さく笑う。
「柔らかい。素晴らしいわ、サチちゃん」
「こんにゃこともできましゅ」
いい気になったサチは、豪華なプレートに乗ったプリンアラモードを机の上に創造する。
甘い匂いが漂った。
「まあ! 素晴らしいわ! 芸術だわ!」
「ぷりんありゃもーどでしゅ」
「プリンアリャモードね」
「あ! ら! でしゅ」
「プリン、ア、ラ、モードかしら?」
自分は言葉を噛み噛みなのに、院長の間違いは許容できなかったようだ。
「そうでしゅ。いんちょ、いっしょにたべりゅんでしゅ」
まさか!
院長は『プリン・ア・ラ・モード』が食べられるとは考えてもいなかった!
が、長く生きているので、食べ物だと認識するのも早かった。
甘い匂いがするもので。
「食べてしまうの? 形を崩すのが勿体ないわ」
サチは能力でスプーンを動かしてプリンをすくい、院長の口元まで持っていく。
院長はその能力に、また驚いていたが、勇気を出すように食べた。
その溶けるような食感に目を見開いて味わった。
「ごくん。これは、美味しいわ! とろりとして滑らかで、でも優しい味があって。こんなに綺麗なのに美味しいなんて! なんて贅沢な!」
院長も甘味好きな女性だ。
いや、甘味が嫌いな女性もいるだろうが。
「もっとたべていいでしゅよ」
サチは座っていた院長の膝から降りてその隣に座り、自分用の小さいプリンアラモードを創造して食べる。
美味しい!
サチがスプーンとフォークを能力で動かして食べてると、それを見た院長も食べだした。
ふむ、遠慮はいらない。
「美味しいわ。凄いわ。なんて甘い果物かしら。子供達にも食べさせてあげたいわ」
院長が優しいことを言うので「あとでよういしましゅ」と気軽に約束した。
それを聞いた院長はどこか躊躇って食べていたプリン・ア・ラ・モードを豪快に食べ出した。
上品ではあるのだが、スピードは早い。
そして、サチが噛んでしまったばかりに『プリン・ア・ラ・モード』と、ちょっと『おフランス』な言い方で覚えてしまっていた。
いや、決して、決して間違っていない。
奇跡的な確率であっている。
サチも昼食を食べたばかりだけど「別腹別腹」と能力を使って食べる。
パフェも好きだけど、美味しいプリンに生クリーム、豪華な果物をこれでもか! と盛り付けたプリンアラモードは贅沢だ。
優しい院長。
孤児院で1人だけ豪華なスイーツを食べるのを躊躇ってしまう優しさが好き。
幸せな空間の中でプリンアラモードを完食した。
ふぅ、お腹ぽんぽこりん。
あ、ラズの昼食は私が先生と勉強している時に食べているみたい。
おやつを食べているのに、よくお腹に入るよね。
ラズが帰って来たので、礼拝堂を通るからラズに神のマントをつけてもらって飛んで行く。
一般人に驚かれながら教会の入り口に着くと、聖騎士が4人居た。
護衛だって。
ラズがいなくなっていたのは護衛の手配の為だったらしい。
前後を2人ずつ聖騎士に囲まれて、ラズと一緒に隣の孤児院まで行く。
私が飛んでいると、やっぱり一般人に驚かれた。
『空飛ぶ1歳児』
驚くわな。
普通は。
孤児院に着くと孤児院の先生に案内されて院長室まで来た。
サチの胸が期待に膨らむ。
院長室の中に入ると、綺麗な院長が微笑んでいた。
私は思わず飛び出す。
「いんちょーー!」
ひしっと胸に抱きつくと、院長は驚いていたが抱っこしてくれた。
「サチちゃん、ようこそ。よく来てくれましたね。院長は嬉しいですよ」
「いんちょ、わたちもうりぇちいでしゅ」
「かわいいサチちゃん。ラズも久しぶりですね。よく来てくれました。会えて嬉しいですよ」
院長とラズは顔見知りだったらしい。
そういえば、ラズは孤児院の出だと言っていたから、この孤児院出身だったようだ。
「院長、ご無沙汰しています。今日はサチ様が肉の寄付に来ました」
「それは、それは、ありがとうございます」
しばし、院長と抱擁してから厨房に案内される。
さて、肉の寄付だ。
サチが倒した魔物のビッグボアの肉だ。
飛んでいるサチの小さな胸が無意識に張ってしまっていた。
魔物を倒した時は怖かったのに、ソレを倒して孤児院に寄付できるのが誇らしいのだ。
「いんちょ、にくのきふをしましゅ」
ちょっと自慢げな口調で宣言してしまった。
盛大に噛んでいるので全てが台無しだが、幼児の発表会だとしたら微笑ましい。
「ありがとうございます。サチちゃん」
律儀にも院長は付き合ってくれた。
サチはいい気持ちのまま、厨房の机の上にビッグボアの肉をどんどんだしていくと、収納に入っていた肉が全てなくなった。
そのあまりに大量に積まれた肉は『寄付』の常識を超えた量だった。
魔物肉が腐りにくいとしても、毎日孤児院で肉だけ食べても腐ってしまう量だ。
これには院長が思わず言葉を溢す。
「あらあら、嬉しいけど困ったわ。肉が多すぎますね」
良い気分に浸っていたサチの耳が院長の困った声を聞き、くりん、と振り返った。
「いんちょ、こまりゅ?」
「そうねぇ、困ったわ」
院長は頬に手を当てて「本当に困った」顔をしていた。
サチは『善意』での『肉の寄付』をしたかったのであって、院長を困らせたかった訳では無いが、現実問題として院長は「嬉しい」よりも「困った」顔をしていて、サチは「う~む」と悩む。
そうだ! 村長に布をプレゼントした時のように『大きなマジックバッグ』を創造して、肉を保存出来るように時間停止にしたら良い!
即、行動だ!
〈いでよ! 大きいマジックバッグ! 時間停止でね〉
何も無かった空間に『大きなトートバッグ』が出て来た。
「私のイメージなんてこんなものよね」と、サチは少し黄昏た後にすぐに正気に戻った。
心は『大人』なので。
ちょっと、最近、体に心が引き摺られているようで危ういが。
「ここに、にくをいりぇてくだしゃい」
サチの無意識の傲慢な指示にラズが従ってくれて、床からトートバッグを拾って肉を中に入れていく。
院長と厨房の料理人が一連の流れに驚いていた。
ラズが次々に肉をトートバッグの中に入れていくのに、一向に膨らまずに底無しのようにポイポイと肉が入っているのを見て、誰に言われずとも『普通』のトートバッグでは無いと気がついたからだ。
自分の行いに満足していたサチに院長が声をかける。
孤児院に『寄付』しにきた肉を、サチとラズが見せてつけてから持って帰るとは院長は考えてもいなかったからだ。
「サチちゃん。マジックバッグなんて高価な物、困ってしまうわ」
そう。
サチとラズは『マジックバッグ』ごと「肉の寄付」をするつもりだ。
世間ではマジックバッグがとても高価なのに。
サチはそんな事はもちろん知らないが、孤児院育ちで教会所属のラズも世間一般な、この事実を知っているかはーー怪しい。
「いんちょ、きふでしゅ。こまりまちぇん。じかんていちでしゅ」
見た目が若くて、ラズの事も知っている院長は『善意100%』を飲み込んだ。
疑う予知は無い。
サチは幼児だし(飛んでいるが)、ラズは生真面目な性格だと理解しているからだ。
「ありがとうね。サチちゃん。孤児院の食事が豪華になります」
院長の優しい手でサチはお尻を撫でられた。
背中に翼があったので。
他意は、無い。
……ちょっと、ぷりっけつが可愛かったとかーーあるかもしれない。
サチは単純に、優しく微笑んで感謝を込めた言葉をくれる院長に嬉しい気持ちになった。
お尻を触れられたのは気にしない。
幼児なので。
ラズが肉を入れ終わった『肉入りマジックバッグ』を料理人に渡している。
料理人は恐る恐るバッグを受け取っていた。
院長が「貰う」と決めたのなら料理人も気持ちを飲み込む。
……高価なマジックバッグを持つのが、恐い、とかーーもちろん思っている。
さて、サチの用事は終わったけど、まだ教会に帰りがたい。
もうちょっと院長と一緒にいたいのがサチの無意識な甘えだった。
「りゃず、すきにうごいていいでしゅよ。わたちはいんちょしちゅにいましゅ」
そう、サチは孤児院育ちのラズを好きに行動させることによって院長と一緒にいる口実にした。
無意識に。
「サチちゃんは責任を持って預かるから、ラズは行きたい所に行きなさい。少し人員も変わってしまっていますけどね。会いたい者もいるでしょうから」
それに乗っかったのは、善意の院長だ。
こちらにはやましい気持ちは無い。
生真面目なラズは言葉の通りに受け止めた。
院長にサチを預かってもらえれば安心だ。
「サチ様、院長、お心遣いありがとうございます。それでは行かせてもらいます」
ラズは足早に去っていった。
会いたい人でもいたんだろうな。
私は院長に抱っこされて院長室に行く。
大司教様に抱っこされすぎて慣れてしまったサチだ。
抱っこされたまま院長室に向かうサチ一行だった。
◇◇◇
「サチちゃん、元気にしていましたか? 不自由はしていませんか?」
「いんちょ、だいじょうぶでしゅ。きょうかいはいいとこりょでしゅ」
院長室に着いて、そのまま院長の膝の上に座っていたサチは院長に心配される。
まぁ、見た目は幼児なので。
結構、好き勝手しているのだが。
サチは心配してくれる院長の気持ちが純粋に嬉しかった。
私の事を気にしてくれるだけで嬉しい。
院長の胸、女性だからか安心する。
男性と違って柔らかい身体。
幼児はこれを求めていたんです。
サチの幼児返りは止まらない。
「サチちゃんは飛んでいましたね。飛べるようになったんですね。凄いです」
『凄い』で済む問題では無い。
飛べる人種はいないのだ。
「はい、とべましゅ」
サチは不器用な小さい手で神のマントを外す。
「いんちょ、みててくだしゃい」
サチは翼を出して飛ぶ。
院長室の中を飛び回り、院長の前に滞空した。
「あら! あらあらまあまあ! 凄いわ! サチちゃん!」
サチはドヤ顔だ。
肉の寄付の時も散々飛んでいたのを忘れているのだろうか?
1歳児の「ドヤ顔」。
可愛い、の、かも、しれない。
「しゃわってもいいでしゅよ」
サチは当たり前のように院長の膝の上に座り、翼を出したままにする。
子供に長い時間付き合ってきた院長は、サチ語を聞き取った。
「触ってもいいですよ」と。
院長が震える手でサチの翼を触る。
優しく触られるとくすぐったい。
サチは小さく笑う。
「柔らかい。素晴らしいわ、サチちゃん」
「こんにゃこともできましゅ」
いい気になったサチは、豪華なプレートに乗ったプリンアラモードを机の上に創造する。
甘い匂いが漂った。
「まあ! 素晴らしいわ! 芸術だわ!」
「ぷりんありゃもーどでしゅ」
「プリンアリャモードね」
「あ! ら! でしゅ」
「プリン、ア、ラ、モードかしら?」
自分は言葉を噛み噛みなのに、院長の間違いは許容できなかったようだ。
「そうでしゅ。いんちょ、いっしょにたべりゅんでしゅ」
まさか!
院長は『プリン・ア・ラ・モード』が食べられるとは考えてもいなかった!
が、長く生きているので、食べ物だと認識するのも早かった。
甘い匂いがするもので。
「食べてしまうの? 形を崩すのが勿体ないわ」
サチは能力でスプーンを動かしてプリンをすくい、院長の口元まで持っていく。
院長はその能力に、また驚いていたが、勇気を出すように食べた。
その溶けるような食感に目を見開いて味わった。
「ごくん。これは、美味しいわ! とろりとして滑らかで、でも優しい味があって。こんなに綺麗なのに美味しいなんて! なんて贅沢な!」
院長も甘味好きな女性だ。
いや、甘味が嫌いな女性もいるだろうが。
「もっとたべていいでしゅよ」
サチは座っていた院長の膝から降りてその隣に座り、自分用の小さいプリンアラモードを創造して食べる。
美味しい!
サチがスプーンとフォークを能力で動かして食べてると、それを見た院長も食べだした。
ふむ、遠慮はいらない。
「美味しいわ。凄いわ。なんて甘い果物かしら。子供達にも食べさせてあげたいわ」
院長が優しいことを言うので「あとでよういしましゅ」と気軽に約束した。
それを聞いた院長はどこか躊躇って食べていたプリン・ア・ラ・モードを豪快に食べ出した。
上品ではあるのだが、スピードは早い。
そして、サチが噛んでしまったばかりに『プリン・ア・ラ・モード』と、ちょっと『おフランス』な言い方で覚えてしまっていた。
いや、決して、決して間違っていない。
奇跡的な確率であっている。
サチも昼食を食べたばかりだけど「別腹別腹」と能力を使って食べる。
パフェも好きだけど、美味しいプリンに生クリーム、豪華な果物をこれでもか! と盛り付けたプリンアラモードは贅沢だ。
優しい院長。
孤児院で1人だけ豪華なスイーツを食べるのを躊躇ってしまう優しさが好き。
幸せな空間の中でプリンアラモードを完食した。
ふぅ、お腹ぽんぽこりん。
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