1歳児天使の異世界生活!

春爛漫

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不自然な空気 2

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 サチの『おうち』にサチとラズが避難し終えてエレナが倒した襲撃者達を監視しながら警戒を続けていると、通りの奥からエレナに向かって刃物が飛んできた!
 サチのお守りのネックレスが反応して刃物を弾き、エレナも新たな襲撃に気がついた! 飛んで来た方に身構える。
 男性らしき体格のしなやかな、顔を隠した襲撃者が2人来た。
 サチ様のお守りがあるから死にはしないが苦戦を強いられるだろうとエレナは考え、サチから貰った切れ味の良い剣に持ち変えて襲撃者に剣を構える。
 この教会関係者の安否も気になるが、今この時を乗り越えなければいけない!
 エレナは己の力量を見誤ってはいなかった。

 襲撃者がエレナに切り掛かってくるが、サチの剣で相手の剣を受け止め受け流そうとして両断してしまう。
 パキンっと音を立てて剣を切断したエレナに襲撃者が怯んだが、もう1人がフォローするように切り掛かってくるので、剣を持つ腕を切り落とす!
 エレナは追い詰められている状況だ。
 襲撃者に慈悲は無い。
 襲撃者が逃げようとするが、即座に足を切ると、その場に倒れた。
 ロープは手元に無い。
 襲撃者は出血多量で苦しがっているが、エレナは敵に情けをかけるだけの余裕が無い。
 ひたすらに監視だ。

 エレナは女性の聖騎士だ。
 訓練で己の、女性特有の腕力の無さや力不足を自覚している。
 それを技で補って、男性の聖騎士とやり合っている女性聖騎士だ。
 常に「押し切られるかも」と緊迫感を持って、旅に出てからもカイザーと訓練を繰り返している。

 エレナは垂れてきた汗を拭った。
 襲撃者達から刃物を遠ざける。

 神聖魔法で襲撃犯の止血だけはする。
 聖騎士は神聖魔法は使えるが、そこまで上手く使えないのだ。
 神官より武に進みたかった者が軽く神聖魔法を習得して聖騎士へとなれる。

 エレナの緊張が続く中で1階が騒ついた。
 カイザーが呼びに行った警備隊が来たのだろう。

 カイザーが階段を駆け上がってくると、エレナはホッとした。
 無事に帰って来た事と仲間が合流した安心感に。

「まだ、襲撃者がいたか!」

 足下の血だらけの惨状を見て、気が昂っていたカイザーが叫ぶように問いかけた。
 カイザーとしては、己がいなかった時の襲撃は仲間を1人危険に晒す行為だからだ。

「どうにかなったわ。あとは警備隊任せね」

 2人が『おうち』の近くで待っていると警備兵が来た。
 5人いる。

 エレナは初対面の警備隊に労うように礼を取る。

「お疲れ様です! 足下に転がっている者達は襲撃者です! 捕らえていただけますか?」

 惨状の後を見た警備隊達に動揺が見える。
 この街では犯罪が多い印象だったが、陰謀らしき事件には耐性が無いのだろうか?
 エレナは訝しむ。

「これは、教会でどうしたことか。犯行者を引き取ります。
 すまん! 人が足らん! もっと応援を呼んできてくれ!」

 隊長らしき人物が警備兵に言うと、後ろの警備兵が走り出した。
 ここには、襲撃者が13人もいる。
 警備兵5人じゃ足らないだろう。

 朝からお腹が空いて体力が消耗しているのに疲れたエレナだ。
 だが、応援が来た事で内心安心したところもある。


 襲撃者が全て移送されたら、返り血がついたエレナではなく、カイザーがおうちに入ってサチ達に無事を伝える。
 とりあえずは全員で借りている部屋に戻り待機することにした。
 あとの事件性は警備隊に任せればいいだろう。

 一度仕舞ったおうちを部屋で出して、おうちの中で朝食を食べる。

「朝から教会に異常事態ってなんなのよー! 今日、出発予定だったのに」

 おうちの中に入って緊張状態から解放されたエレナが小さく不満を叫ぶ。

「教会関係者の安否も分かっていませんしね。教会からは出られないでしょう」

 教会の廊下に残された血痕の後を見たラズは冷静を装って答える。
 教会は治療院の側面を持っているので治療を何度も経験したラズは血を見慣れてはいたが、壮絶な戦闘があった場所はあまり慣れていない。

「みんにゃ、よくやってくりぇましゅた。ありがとうごじゃいましゅ」

 ただ守られていたサチにも思う事はあったようだ。

「いえ、サチ様を未遂とはいえ誘拐されてしまいました。ラズをお怒りください」

 椅子にちょこんと座っていたサチの前にラズが罰を望むように跪き頭を下げた。

「ありぇは、はやかったでしゅ。りゃずでもおいちゅけにゃかったはじゅでしゅ。おこっていましぇん」

 サチは犯人の行動と足が早かったとラズを慰めるように言う。

「まーまぁ、ゆっくりしようや。どこにも行けないし。それに、サチ様は1人でも何とかなるからな」

 エレナ同様に緊張状態から解放されたカイザーがだらしなく椅子に座って真実を述べた。
 事実、サチは誘拐されても自力で帰ってきた。

「カイザー! 何ですか! その言い方は!」

 だが、襲撃にあって神経がピリピリしているラズにはその姿に責任が無いように見えて怒りを露わにする。

「だって、そうだろう? サチ様は誘拐から自力で戻ってきた。襲撃者の大半も倒してくれた。俺たちの出番なんて微々たるものだぜ」

「でも、サチ様は子供です! 守らねばならなかったのです」

「言い分は分かるが、サチ様をもっと信用してもいいんじゃね?」

 少し緊迫した空間に、幼児特有の癒しのある声が届いた。

「みんにゃ、がんばりましゅた。しょれでいいでしゅ」

「おお! 閉めたね! それで良いですよねー?」

 カイザーは笑顔だ。
 ちょっと本性が見え始めているかもしれない。
 聖騎士という職業の皮が剥がれてきている。

「カイザーはもっと真面目に! サチ様、お風呂に入りましょう。襲撃犯に汚されたわ」

「はい!」

 エレナに誘われてお風呂に行く。
 前よりはスムーズにサチのロンパースを脱がせてくれた。
 エレナにおもちゃのようにサチは洗われる。
 エレナも緊張したのだろう。
 頑張ってくれた。
 私が知らない血痕があったので戦闘したのだろう。
 私を、幼児を構って癒されるなら、それでいいんだ。

 まるっと、つるっとエレナに洗われて湯船に飛んで翼を出して浮いて浸かる。
 ふう、朝風呂は良い。

 エレナは血臭も取るように丹念に洗ってからサチの横に入ってきた。
 自肌に返り血でもあったんだろうか? 心配でサチが引っ付くと、少し筋肉質な腕で抱っこしてくれた。

「ねえ、サチ様。私達はサチ様を守るけど、どうにもできなかったら、サチ様だけで逃げてね。約束よ?」

 サチの護衛と言う名目で旅に付き従っているが、今回のような事件があった場合はサチの足手まといになるとエレナは思い、サチに告げる。

 しかし、サチは毅然と拒否した。
 裸で成人女性に湯船の中で抱っこされているので格好はつかないが。

「いやでしゅ。わたちはみんにゃでにげましゅ。しょれか、たたかいましゅ!」

「サチ様は小さいのに強いわね。かわいい」

 まったく反対のことを言ってエレナはサチに頬ずりしてきた。
 この幼児ボディに癒されてもいいんだよ?
 今は柔らかなほっぺが潰されているけども。

 お次は朝の露天風呂に癒されて、空気を楽しむ。
 ここの空間どうなってるんだろうか? 夜は暗くなるし、私のイメージ?

 エレナに抱っこされて風呂から出たら、ほかっとしたラズ達が居た。
 ラズ達もお風呂に入ってたんだろう。

 最近、みんな肌が綺麗になって女の子みたい。
 卵肌って言うのかな? キメが細かいのかな? お風呂の効果か? だって美肌の湯だからね!

 サチは知らないが、温泉とサチのエキスのせいだ。
 よく一緒に入ってるラズとカイザーはヅカに入れるレベルだ。(男だから入れないが)
 エレナも肌では負けていない。

 お風呂上がりにソファでサチの取り合いがラズとエレナの間でおきた。

 幼児には癒し効果があるので。
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