1歳児天使の異世界生活!

春爛漫

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事件の後

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「サチ様、起きてください。朝ですよ」

 ラズの優しい声が聞こえる。
 でもね、目が開かないの。
 何でだろうね。
 体も動かせない。

「サチ様? まだお休みですか? みんな、もう起きてますよ」

 ラズに優しく抱っこされる感じがした。
 あやされて、本当の赤ちゃんみたいだ。

 何とか頑張って目を開けるも、目つきの悪いサチだ。
 ついでに、あったかいラズにぴっとりと張り付く。

「おや、サチ様、起きられましたね。顔を洗いにいきますよ」

 『おうち』の中は土足厳禁だ。
 ラズはサチを抱っこしたまま洗面所に歩いていく。

 洗面所に着いてもラズから離れようとしないサチに、ラズは何かを感じたようだ。

 隣がお風呂場なので、その前に置いてあるソファに座り膝の上にサチを乗せて優しく背中をさする。

「サチ様は、まだお目覚めではありませんね。
 ですが、カイザー達のお腹がすいてしまいます。もうそろそろ朝の訓練を終わらせて庭から中に戻ってきますからね」

 サチは優しくラズに話しかけられて、だんだんと体と頭が働いてきた。
 何故か甘えたい気持ちになって、ラズのお腹に顔をうめてスリスリとぐずるように擦り付ける。

 ラズはそんなサチを「かわいいなぁ」と思いつつも『不敬だ』と思い直して、サチの背中をぽんぽんとした。

 『不敬だ』と思った割にはサチを幼児扱いしているラズだ。


「偉いですね、サチ様。起きられましたね。昨夜の宿の食事は美味しかったですよ。朝食は期待していてください」


 サチはラズになんとか神のマントを着せてもらって、顔を洗い、おまるでトイレをして、また、抱っこされて礼拝堂に行き、神に祈る。

 この時にはサチは昨日のことを思い出していた。

 創造神様、私は後悔しておりません。
 犯人達を切り刻み達磨にした事は当然だと思っております。
 今日もお見守りください。

 残酷なことを思いながらも、お祈りが終わったらラズの抱っこでおうちから出る。
 カイザーとエレナが宿の部屋に身なりを整えて待っていた。
 サチはおうちを収納にしまう。

「かいじゃー、えりぇにゃ、おはようごじゃいましゅ」

「「サチ様、おはようございます」」

「おー! いきぴったりでしゅ」

 ぱちぱちと拍手する。

 復讐は終わったのだ。
 新しい1日の始まりだ。

「さあ、朝食に行きますよ」

 ラズが明るい声を出した。
 サチが消えていた昨日の事には触れられない。
 ありがたいが申し訳ない。
 言えない事が出来て、ちょっと引け目を感じちゃうサチだ。
 根が素直である。

 神のマントをつけていたが、ラズに抱っこされて階段を降りて1階に来た。

 宿のおば、いや、お姉さんを発見したカイザーが声をかける。

「おはよう、お姉さん。もう一泊頼むよ!」

「はーい。後から精算に来てくださいね。あら、かわいい子。おはよう。いいこでちゅね~」

 ラズに抱っこされた小さなサチを目ざとく見つけてあやすようにこえをかける。

「おはようごじゃいましゅ」

「あら! 喋った。頭が良い子ね」

「この子の分の朝食もお願いします」

「はいはーい。ちょっとお待ちください」

 お姉さんは忙しそうに歩いて行った。
 私達は席に座る。

「サチ様、これは私からのお願いよ。もう、何処かに1人で行く時は私達に言ってから行く事! 約束して?」

 しっかりとした性格のエレナには、護衛対象のサチが勝手にいなくなるのは許せなかったらしい。

 サチは素直に答える。

「やくしょくできましぇん。こりぇかりゃにょことは、わかりましぇん」

「あら! そんなことを言うのはこの口かしら。このこの。あら、触り心地がいいわ」

 サチはエレナに柔らかい口とほっぺをむにむにされた。
 ほんとにこれからのことは分からないんだよぅ。

 カイザーが暗くなりそうな空気を吹き飛ばすように発言する。

「俺たち護衛が役に立ってない件な!」

「本当にそう! サチ様、私達なんでいるのかしら?」

「ごめんにゃしゃい」

「とりあえず謝っておけばいいと思ってるんじゃないかしら?」

「それな」

 2人がサチをいじめてくる。
 私1人で飛んでたら捕まるから大人は必要なんだよ~!

 ラズに助けを求める視線を送るけど、にこにこされてスルーされた。
 サチに味方はいない。

 でも、ラズが感情を顔に出すようになったな。
 初めは氷のラズだったのに。
 信頼関係が出来たってこと?

 なかなかにサチはポジティブである。

 食堂スペースに座っていたら食事がきた。
 パンにスープに温野菜にオムレツ! 卵だ! ここ高い宿なのかな? 宿の料金を立て替えしてくれた分、払わなくちゃ。

 旅行、いや、旅にかかる費用は全てサチ持ちである。
 個人的な買い物はお給料からの買い物ね。

 神に祈っていただきます。
 サチが食べようとしたら、ラズが私の食事を取った。
 私にあーんしてくる。
 むむ、心配をかけた昨日の今日だから仕方ない。
 あーんと口をあけて食べさせてもらう。
 やっぱり、とろーりオムレツはおいしい!
 あーん。
 パンは硬いけどスライスしてくれてある。
 小麦の香り。
 野菜は野菜だね。
 もぐもぐ、スープはホッとする。
 やっぱり日常が一番!

 久しぶりに給餌したラズは思った。
 サチ様、小動物みたいで可愛い! 膨らんだほっぺがラブリーです! 小さなお口で食べて。
 あー! 可愛い!

 そんな事をラズが思っているとも知らずに朝食をみんなで満喫した。

 ラズの食事が冷めてしまったので温めてあげた。
 能力の使い方が、ちょっと上手くなったんです。
 えへん!

 悪い事、では無く、復讐をしてきて、能力の使い方が上手くなっても、胸を張るサチはなんだか空元気に見える。



 サチが宿泊の料金を払って、部屋に帰る。

 おうちを出して、サチはラズとカイザーと中に入る。

 エレナは宿の部屋で待機かな?


 サチは昨日、お風呂に入らなかったからラズに入れてもらう。
 カイザーもついて来た。
 カイザーはいらないよ。
 サチにイタズラするから。
 言うといじけるから言わないけど。

 今日は高級シャンプー◯ル、スカルプを試す。
 知ってはいたけど、高くて尻込みしてた高級シャンプーをサチの創造の力で生み出した。

 ラズに使って~と渡す。
 カイザーも興味がありますって顔で見てる。
 使ってもいいよー。

 服を脱いで、というか、ラズに脱がせてもらい、浴室に入り、みんなであわあわになる。
 う~ん、心地良い洗い心地。
 見てこのキューティクル! サチはラズに身体もあわあわにされる。
 いつもより丹念じゃないですかね? ちょっとは羞恥心というものがですね。
 あ、はい、無いですね。
 幼児だからね。

 まるっと洗われたら、カイザーの入っていない露天風呂に飛んで行く。
 自衛が出来るんです。

 サチがまったりと露天風呂に浸かっているとカイザーが来た!
 なんだなんだ、来るのが早いぞ。
 イタズラされてはたまらん! と、サチはカイザーから離れる。

 カイザーはそんなサチを視界の隅に入れながら、言いにくそうに話し出した。

「あー、サチ様には俺達なんて必要じゃないかもしれんが、ちょっとは頼ってくれや。俺達の存在意義ってもんがだなぁ。あるんだよ! 教会の総意で! サチ様を守るってついてきてんだ! 俺達の顔も立ててくれよ!」

 カイザーは言いたいことだけ言うと立ち上がって内風呂の方に去って行った。
 言い逃げだ。
 要はサチに「頼ってくれ」ってことだよね。
 まだまだ青いなぁ。
 嬉しいが。

 サチは心がポカポカした。

 お次はラズが露天風呂に来た。
 カイザーがお風呂場でサチに近づいたので心配してくれたようだ。
 前科ありのカイザーだ。

「カイザーが居ましたけど、大丈夫でしたか?」

「だいじょうぶ。いいにげしていった」

「言い逃げですか。それはそれは」

 2人でぷくくっと笑う。
 青春もいいじゃないか。

 中の風呂に戻ったらカイザーは居なかった。
 照れ屋さんめ。

 お風呂の中でもラズは離してくれなかった。
 あの~、私、一応、女なんですけど、忘れてないかい?

 いいんですけどね。
 あわあわされちゃう私。
 タオルで拭き拭きされちゃう私。
 幼児ですから。
 服だけじゃなくて、パンツも履かされちゃう。

 そう、サチのパンツはモコモコだから履きづらいのだ。

 ……?

 なぜ、サチのパンツは、オムツのようにモコモコで、お漏らしをする赤ちゃんのように分厚いのか?

 ……創造神様は、サチを小さく創りすぎて、お漏らしをすると思ったのだろうか?

 ……。

 どこか、遠くから、威厳のある、気まずい、咳払いが、聞こえた、気がしたーー。


 お風呂から出てもカイザーは居なかった。
 恥ずかしがり屋さんめ。
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