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一章
57話
しおりを挟むあまりにもあっさりとしたヒュフーストの返答に、フォスターは呆気に取られた。
そんなフォスターを気にする事なく、ヒュフーストは続ける。
「私が創った契約魔法は、相手に対する信頼や……情、誠実さに大きく左右される。相手からの気持ちが大きければ、己の力は強く。相手からの気持ちが無ければ効果は無い」
ヒュフーストの言葉に、ウェンディは「待ってください」と口を開いた。
「ヒュフースト様の魔法は、契約が上手く結ばれ、互いに信頼関係があれば……情があれば、契約相手に力を与える、と言う認識で合っていますか?」
「ああ、概ねその通りだな」
「な、ならばっ! どうして、どうして私の成長は長年止まり……魔力も……、魔法の腕も落ちたのか……。先程ヒュフースト様はフォスターが裏切ったから、と仰いましたが相手から裏切られると──」
「ああ。この魔法は契約魔法だからな。契約を結んだ両者の間に裏切りがあれば、裏切られた相手の魔力も、能力も落ちる。……片方の情が減れば減る程に、な」
ヒュフーストの言葉に、ウェンディは唖然とした。
ならば。
「私の……成長が止まっていたのも、魔力や能力が落ち続けていたのも……っ」
「ああ。その男がウェンディを裏切っていたからだろう。明白だ」
ヒュフーストが告げた瞬間、ウェンディはフォスターを睨み付ける。
ウェンディの瞳は、強い怒りが込められ、瞳には溢れんばかりの涙が溜まっている。
「本当にっ、全部……! 全部フォスターのせいだったのですね!!」
「ウ、ウェンディ様っ、ちがっ、私は──っ」
「黙りなさい、フォスター!! この数年っ、数年もの間、あなたはずっと私を裏切り続けていたのね! 六年前から異変は始まっていたのよ、それほど前から、あなたは私を裏切り、エルローディアに好意を抱いていたのね!?」
ウェンディの言葉に、フォスターの体がぎくりと強ばり、顔が青白く変わる。
「ち、違うんですウェンディ様! わっ、私は騙されたのです! エルローディア様がっ、エルローディア様が私を誘惑したのです、私はあなたを裏切るつもりなど──」
「んぐーっ! むぐぐっ!」
フォスターは、あろう事か悪いのはエルローディアだ、と言い訳を始める。
その言葉を聞いたエルローディアは、激昂するように呻き、拘束された体をばたばたと暴れさせる。
だが、ヒュフーストは彼ら二人の拘束魔法を解く事はない。
フォスターとエルローディアは、同じソファで縛られたまま、フォスターは全てエルローディアのせいにしようとし。
エルローディアはフォスターを傷つけようと暴れる。
その光景を見ていたヒュフーストは、不愉快そうに顔を顰めた。
「醜い……。これだから人間は嫌なんだ。簡単に他者を裏切り、欺き、騙す。自分の事しか考えず、傲慢で、愚かで……救いようがない」
「……っ、仰る、通りです……耳が痛い限り、です……」
ウェンディは恥ずかしくて恥ずかしくて、謝罪する事しかできない。
ヒュフーストの言葉は尤もだ。
何一つとして間違っていない。
だが、ウェンディが申し訳なく恥じ入っていると、ふと瞳を優しく細めたヒュフーストはウェンディとヴァン。二人を交互に見やってから、口を開く。
「……だが、こうして久しぶりに真に心からお互いを思う人間を見た。ウェンディとヴァン、お前達二人は最近契約魔法を成立させただろう? その年齢で契約を成立させられる人は、少ないからな……。しかも……契約状況も上位……、いや、最上級だ」
「──えっ」
「最上級の契約成立は、私がこの魔法を王族に渡すようになって四百年ほどだが……ここ二百年ほどは見ていない」
喜ばしい事だ。
人間も捨てたものじゃないな、と嬉しそうに頷くヒュフーストに、ウェンディもヴァンも、何が何やら、といった状況だ。
契約状況?
上位、とは。最上級、とは──。
その他にも、色々と気になる単語が出てきている。
ウェンディはちらり、とヴァンに顔を向け、引きつった笑みを浮かべて口を開いた。
「ヴァン……本当に私たちは専属護衛騎士契約について、何も知らないのね……」
「ああ……無知は罪だ、と痛感した」
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