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第3章
森に置き去りにされました
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(——どうしてこんなことになったんだろう)
静かな夜の森に一人取り残された佑那は突然の出来事に呆然としていた。
今までと変わらない生活に戻れると信じていたのに、直前のシュルツの言葉と冷たい風が現実だと伝えている。
『どうか幸せに』
どうやって幸せになれというのだろう。シュルツに、大切な人に見放されたというのに。
あまりの衝撃のために佑那は近づいてくる足音に気づかなかった。
「ユナ……ユナ!」
自分の名が呼ばれていることにようやく気づき、声のほうに視線を向けると、そこにはフィラルド王国筆頭魔術士であるウィルの姿があった。
「ウィル…?何で、ここに……」
それだけ告げると不意に目の前が真っ暗になり、佑那は意識が遠のくのを感じた。
柔らかな日差しに目を細めながら、視界に映る見慣れない天井を見て自然と涙が溢れてくる。昨晩のことが夢ではなかったと思い知らされたからだ。
(何で、何で、何で…。私はもう必要ないの?)
声を殺して毛布の中で泣いていると、控えめなノックの音と聞き覚えのある声がした。
「ユナ、起きていますか?朝食の準備ができたので、下りてきてください」
問いかけの形を取っているが、ウィルは佑那が起きていることを確信している。嗚咽が外まで漏れていたのかもしれない。気を遣ってくれたのだろうウィルを思えば、無視することが躊躇われる。腫れた目元をこすって佑那は緩慢な仕草で身体を起こした。
準備された朝食に食欲は湧かなかったが、ウィルの好意を無駄にしたくなくて押し込むように口に運んだ。食事中はひたすら無言だったウィルが口を開いたのは食後のお茶を一口飲んでからだった。
「ユナ、あの後起こったことを教えてくれますか?」
真剣な口調に佑那は正直に話すべきか迷った。
そのまま話してしまうことがシュルツの不利益にならないだろうかという不安がよぎったからだ。
シュルツは佑那を大切にしてくれたが、それをウィルが信じてくれるかは分からない。逆に信じてくれたとしても、魔王であるシュルツの弱点と見なされれば利用されるかもしれなかった。佑那に対して友好的であったとしてもウィルはフィラルド国を護る立場にあり、その責務を果たすためならあり得ないことではないだろう。
(シュルツが困ることはしたくない。でも、もうシュルツは私のことなんて……)
そのことを考えるだけで胸に痛みが走り、涙が込み上げてくる。シュルツが佑那を森に置き去りにした、それはつまり気持ちが冷めてしまったということなのだろう。
「ユナ、一つだけ先にお伝えしておきますが、俺は今休職中なんです」
「え?!」
本当は辞職するつもりだったんですけどね、さらりと付け足された言葉に佑那は動揺のあまり、目元に浮かんだ涙は引っ込んでしまった。
筆頭魔術士になるには並大抵の努力では叶わないという。さらにはウィルのように忠誠心が厚い人物が何故辞職など考えることになったのか。
「え、どうして?」
思わず口から出た佑那の言葉にウィルは苦笑めいた表情を浮かべる。
「それはまた後程ということで。ですから俺の立場に配慮せず、一人の友人として聞かせてもらえませんか?あの時ユナを救えなかった俺に挽回するチャンスをください」
その言葉と温かい眼差しに胸が熱くなる。何が起きたか明確に分からずとも、佑那が言いづらい理由を察して伝えてくれたのだ。そんなウィルを疑った自分が恥ずかしくなる。
さらに昨晩自分の身に起こったことをこれ以上一人で抱えることが苦しくて、佑那は藁にもすがる思いでウィルに全てを打ち明けることにした。
攫われてからシュルツに求婚されたこと、命を狙われたことや声が出なくなったこと、そして想いが通じ合って幸せな日々を送っていたこと——。
そんな幸せだった過去に心が震えそうになりながらも、佑那は出来るだけ客観的に状況を説明していく。
「事情は分かりました。攫われた当初は気が気ではありませんでしたが、ユナが無事に過ごせていたようで何よりです」
そう言ってウィルは新しく準備した紅茶を佑那のカップに注ぐ。話に夢中になっていたが、結構な時間が経っていたことに、喉の渇きを覚えて初めて気づいた。
「それで、昨晩あの場所にいたのはどうしてですか?」
本当は一番先に伝えなければいけないことだったのに、、何と説明してよいのか佑那自身分かっていないのだ。
「……分からないの」
どうしてこうなったのか定かではなかったが、そのきっかけになった出来事には心当たりはある。言葉を探しながら、佑那はその出来事を思い返していた。
静かな夜の森に一人取り残された佑那は突然の出来事に呆然としていた。
今までと変わらない生活に戻れると信じていたのに、直前のシュルツの言葉と冷たい風が現実だと伝えている。
『どうか幸せに』
どうやって幸せになれというのだろう。シュルツに、大切な人に見放されたというのに。
あまりの衝撃のために佑那は近づいてくる足音に気づかなかった。
「ユナ……ユナ!」
自分の名が呼ばれていることにようやく気づき、声のほうに視線を向けると、そこにはフィラルド王国筆頭魔術士であるウィルの姿があった。
「ウィル…?何で、ここに……」
それだけ告げると不意に目の前が真っ暗になり、佑那は意識が遠のくのを感じた。
柔らかな日差しに目を細めながら、視界に映る見慣れない天井を見て自然と涙が溢れてくる。昨晩のことが夢ではなかったと思い知らされたからだ。
(何で、何で、何で…。私はもう必要ないの?)
声を殺して毛布の中で泣いていると、控えめなノックの音と聞き覚えのある声がした。
「ユナ、起きていますか?朝食の準備ができたので、下りてきてください」
問いかけの形を取っているが、ウィルは佑那が起きていることを確信している。嗚咽が外まで漏れていたのかもしれない。気を遣ってくれたのだろうウィルを思えば、無視することが躊躇われる。腫れた目元をこすって佑那は緩慢な仕草で身体を起こした。
準備された朝食に食欲は湧かなかったが、ウィルの好意を無駄にしたくなくて押し込むように口に運んだ。食事中はひたすら無言だったウィルが口を開いたのは食後のお茶を一口飲んでからだった。
「ユナ、あの後起こったことを教えてくれますか?」
真剣な口調に佑那は正直に話すべきか迷った。
そのまま話してしまうことがシュルツの不利益にならないだろうかという不安がよぎったからだ。
シュルツは佑那を大切にしてくれたが、それをウィルが信じてくれるかは分からない。逆に信じてくれたとしても、魔王であるシュルツの弱点と見なされれば利用されるかもしれなかった。佑那に対して友好的であったとしてもウィルはフィラルド国を護る立場にあり、その責務を果たすためならあり得ないことではないだろう。
(シュルツが困ることはしたくない。でも、もうシュルツは私のことなんて……)
そのことを考えるだけで胸に痛みが走り、涙が込み上げてくる。シュルツが佑那を森に置き去りにした、それはつまり気持ちが冷めてしまったということなのだろう。
「ユナ、一つだけ先にお伝えしておきますが、俺は今休職中なんです」
「え?!」
本当は辞職するつもりだったんですけどね、さらりと付け足された言葉に佑那は動揺のあまり、目元に浮かんだ涙は引っ込んでしまった。
筆頭魔術士になるには並大抵の努力では叶わないという。さらにはウィルのように忠誠心が厚い人物が何故辞職など考えることになったのか。
「え、どうして?」
思わず口から出た佑那の言葉にウィルは苦笑めいた表情を浮かべる。
「それはまた後程ということで。ですから俺の立場に配慮せず、一人の友人として聞かせてもらえませんか?あの時ユナを救えなかった俺に挽回するチャンスをください」
その言葉と温かい眼差しに胸が熱くなる。何が起きたか明確に分からずとも、佑那が言いづらい理由を察して伝えてくれたのだ。そんなウィルを疑った自分が恥ずかしくなる。
さらに昨晩自分の身に起こったことをこれ以上一人で抱えることが苦しくて、佑那は藁にもすがる思いでウィルに全てを打ち明けることにした。
攫われてからシュルツに求婚されたこと、命を狙われたことや声が出なくなったこと、そして想いが通じ合って幸せな日々を送っていたこと——。
そんな幸せだった過去に心が震えそうになりながらも、佑那は出来るだけ客観的に状況を説明していく。
「事情は分かりました。攫われた当初は気が気ではありませんでしたが、ユナが無事に過ごせていたようで何よりです」
そう言ってウィルは新しく準備した紅茶を佑那のカップに注ぐ。話に夢中になっていたが、結構な時間が経っていたことに、喉の渇きを覚えて初めて気づいた。
「それで、昨晩あの場所にいたのはどうしてですか?」
本当は一番先に伝えなければいけないことだったのに、、何と説明してよいのか佑那自身分かっていないのだ。
「……分からないの」
どうしてこうなったのか定かではなかったが、そのきっかけになった出来事には心当たりはある。言葉を探しながら、佑那はその出来事を思い返していた。
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