転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!

DAI

文字の大きさ
48 / 80

第48話

しおりを挟む
ここはウエス国の森の中。

フィーネは、一通り話終えると、ふぅっと息を吐いた。
それを聞いていた、リリィも、イブも、ハクも、モックとドンキーさえも、固唾を飲み微動だにしない。
リビングに重い空気が立ち込めていた。
「フィーネ、大変だったんだね。」
リリィが、やっと口を開いた。
「おいら、フィーネがそんなに辛い目に遭ってたなんて知らなかった。ごめんよ。」
ハクが声を絞り出すように言う。
「フィーネ、可哀想キー。」
「可哀想キキー。」
モックとドンキーも言葉が出ない。

「フィーネ、よく話してくれたな。ありがとう。」
イブが神妙な顔で言う。

フィーネは黙って紅茶を淹れた。
フィーネが紅茶を口に運ぶと、他のみんなも紅茶を一口飲んで、ふーっと息を吐いた。

「私はこの丸太小屋にたどり着いた後、古い魔法の本を見つけた。それで魔法を覚えたわ。運良くこの丸太小屋は空き家だったから、手直しして住むことにした。」
フィーネが昔を懐かしむように話した。

「さあ、食事にしましょう。」
フィーネが、言う。
その夜は、エルフの里の人たちを弔うような満月が浮いていた。


翌朝。
フィーネは、町の人に頼まれた薬を届けるため一人で町に向かった。
今回はリリィたちは留守番である。

歩くこと1時間と少し。森が終わり、町が見えた。
薬を届ける家に向かう。
トントン。
玄関の扉を叩くと、中年の女性が出てきた。
「あ。フィーネさん。」
「お薬を持ってきました。」
「わざわざありがとう。はい、代金ね。」
「ありがとう。それじゃ。」
中年の女性は、薬を受け取ると、直ぐに家の中に引っ込んだ。

「これで用件は終わりね。オルガの所にでも行こうかしら。」
フィーネは、オルガの家に行くことにした。
「オルガ!いる?」
オルガの家の前でフィーネが呼び掛ける。
「今、行きます!」
家の裏の方から声がした。
玄関の扉が開いて、オルガが顔を出した。
「フィーネさん!今日はどうしたんですか?」
「他に用事があって、ついでに寄ったのよ。」
フィーネが言う。
「フィーネさん、どうぞ中へ。」
オルガがフィーネを誘い入れる。
「お邪魔します。」
フィーネは家の中に入った。
「どうぞ、そこにかけて。」
オルガに促されてフィーネは椅子に座る。
「オルガ、今日はお仕事?」
フィーネが尋ねると、
「今日は休みだよ。」
紅茶を淹れながら、オルガが答えた。
「ホウオウとスザクは?」
「二人も休みだから、何処かに出掛けてるんじゃないかな?」
「そうなんだ。」
フィーネは紅茶を一口飲んだ。
「やっぱりオルガが、淹れた紅茶は美味しいわ。」
「ありがとう。」

オルガも座り、しばらくの間、フィーネと他愛の無い話をして過ごした。

「そうだ、フィーネさん。町の市場に遊びに行こうよ。」
「良いわよ、行きましょうか。」
オルガとフィーネは市場に行くことにした。

町の市場は、沢山の人で賑わっている。衣料品の店、野菜を売る店、小物や雑貨を売る店、肉や魚を売る店、料理を振る舞う店......
様々な店が立ち並び、呼び込みの声が引っ切り無しに聞こえて、活気がある。
「このお店、見て良い?」
フィーネが言うと、オルガはうなづいてついて行く。
色とりどりの髪飾りやアクセサリーが置いてある店だ。
「欲しいものがあったら買うよ。」
オルガが言う。
「じゃあ、本気で選ぼうかな?」
フィーネが笑って言った。
「安いので頼むよ。」
オルガが小声で言うと、二人同じタイミングで笑った。

同じ頃。
「姉さん!この串焼美味しいね。」
「スザク、落ち着いて食べなさい。」
ホウオウとスザクの姉妹も市場にいた。
「あれ?もしかしてオルガじゃない?」
ホウオウが指差した方に、オルガがいた。笑っている。
「本当だ。一緒にいるのは...フィーネ!?」
「デートかしら?」
ホウオウはそう言った後、しまった!と言う顔をした。
スザクは、明らかに嫉妬している。
顔を赤くして拳を握り、体が小刻みに震えていた。
「姉さん、オルガの後を尾けるわよ。」
スザクが言う。
ホウオウはやれやれという顔をして
「わかったわ。」
と言った。


そうとは知らないオルガとフィーネはデートを楽しんでいた。
「うーん、この青いのも綺麗だな。こっちのも素敵。あ、それも可愛いな。」
フィーネは相当迷っている。
「ゆっくり考えて決めて良いからね。」
オルガが言う。
「ごめんね。なるべく速く決めるから。」
フィーネは申し訳なさそうだ。
それからしばらく選び続けて、何とか一つに決まった。
「おじさん、この髪飾りにするわ。」
「お嬢さん、ありがとう。」
オルガが代金を払い、早速、フィーネの髪に髪飾りをつけた。青い蝶の形をした髪飾りだ。
「フィーネさん、似合ってるよ。」
オルガが言うと、
「ありがとう。オルガ。」
フィーネは、少し顔を赤らめながら言った。
二人は店を出て歩き出した。


「姉さん、ターゲットが動き出したわ。」
「スザク...放っといてあげれば?」
「ダメよ、姉さん。二人に怪しい動きがないか、見張らないと。」
「もう、気が済むまでやれば良いわ...」
真剣なスザクにホウオウは呆れ気味だが、二人の尾行はまだ続くようだ。


そんなこととは知らず、オルガとフィーネは市場を歩いていた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

処理中です...