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第56話
しおりを挟むここはウエス国の森の中。
「ピクニック♪ピクニック♪」
リリィが鼻歌を歌いながら歩いている。
「ピクニックキー!」
「ピクニックキキー!」
モックとドンキーがリリィの後に続く。
「3人とも、あまり離れちゃダメよ!」
フィーネが3人に叫ぶ。
「たまには森を歩くのも気持ちいいな。」
ハクが楽しそうに話すと、
「ぼくは、あまり楽しくないぞ。」
イブはブツブツ言いながらもついてきている。その足は少しだけ宙に浮いている。
「イブはずるいな、自分の足で歩いたらどうだ?」
ゴブローがイブを見て言う。
「そうよ。自分の足で歩いてこそのピクニックじゃない?」
ホウオウがゴブローに加勢する。
その後ろには、オルガとスザクが歩いている。
「女神は疲れることが嫌いなんじゃ。」
イブがゴブローとホウオウに反論した。
「みんな!そろそろ着くわよ!頑張って!」
フィーネが言う、その先に開けた小高い丘があった。
丘を登ると、眼下には一面の綺麗な花畑が広がっていた。
「うわー!凄い!」
リリィが歓声を上げる。
「これは見事だな。」
ゴブローとオルガが感嘆する。
「さあ、みんな。敷物を広げて座りましょう。」
大きな敷物を広げて、みんなでその上に座る。
フィーネ、ホウオウ、スザクは、持ってきたランチボックスを広げた。
「うわー、美味しそう!」
リリィは目を輝かせる。
「さあ、食べましょう。」
フィーネが言うと、皆待ち切れないという感じで手を伸ばした。
「こんな良い場所が、この森にあるんだね。」
ホウオウが周りを見回すと、そこには絶景が広がっていた。
色とりどりのはなが咲き乱れ、その向こうには、雪を湛えた山々が聳え立っている。空気は冷たく澄んで清々しい。
「待つキー!」
「待つキキー!」
「捕まえてみろ!」
モック、ドンキー、ハクは早速追いかけっこを始めた。
「イブ!ホウオウ!お花を摘みに行こう!」
リリィが花畑に向かって走り出す。
「俺とオルガは、あっちで昼寝してるよ。」
ゴブローとオルガも行ってしまった。
後にはフィーネとスザクだけが残されてしまった。
気まずい沈黙の時間が流れる。
「フィーネ、」「スザク、」
2人同時に話し出す。
「先に言って、」「お先にどうぞ、」
また、同じタイミングで話し出してしまって、お互いに苦笑する。
「じゃあ、私から。」
スザクが話し出した。
「フィーネ、私はあなたに感謝してるの。ビャッコの仲間だった私の目を覚させてくれた。そして、家族として迎えてくれた。」
「私は何もしてないわ、スザク。あなたが自分で決断して変わったのよ。」
フィーネは真っ直ぐにスザクを見つめて言った。
「だから、あなたとオルガの気持ちを知った時は複雑だった。私もオルガのことが好きだったから。自分の気持ちの整理がなかなかつかなかったわ。」
フィーネは黙ってスザクの言葉を聞いている。
「今でも私はオルガのことが好き。でも相手がフィーネ、あなたじゃ勝ち目は無いと思ったの。」
「スザク......」
「私はオルガと同じくらいフィーネと丸太小屋の皆んなが好きだから。今は素直におめでとうって言える。」
「ありがとう、スザク。」
「オルガと、2人で幸せになって。フィーネ。」
スザクの目から涙が溢れた。
「あれ?おかしいな。泣くつもりじゃなかったのに......」
フィーネはスザクを抱きしめた。
「スザク、私たちはずっと家族よ。」
「フィーネとスザクは、何を話してるんだろうな。」
ゴブローがオルガに言う。
「女には女同士にしか分からないことがあるんだよ。」
オルガがつぶやく。
「オルガはフィーネのどこが好きなんだ?」
ゴブローの質問にオルガの顔は赤くなった。
「それは、言えないよ。」
「隠すことじゃないだろう?」
「とにかく、言えない。」
「そうか。いつか話してくれよ。」
ゴブローは納得してないようだ。
「フィーネさんは、自分だけで抱え込んでしまうから、僕がその重荷を少しでも軽くしてあげたいんだ。」
オルガはそう言うと、体を起こした。
「なるほどな。」
ゴブローはうなづく。
「僕に何でも話して欲しいんだけどな。」
オルガはボソッと言った。
「見て!花飾り!」
リリィが頭に被って見せる。
「リリィ、上手だな。誰に教わったんだ?」
イブが言う。
「お母さんに......」
リリィはうつむいた。
「すまん!リリィ。許してくれ。」
イブは慌てて取り繕う。
「イブ、大丈夫。気にしてない。少し思い出しただけ。」
リリィは、イブに笑顔を見せた。
「それにしても、この花畑は見事ね。」
ホウオウが言う。
「また、皆んなで来たいね。」
リリィは立ち上がって、くるっと一回転した。
「そうだな。また、皆んなで来よう。」
イブが答えた。
「皆んな!まだサンドイッチが残ってるわよ!」
フィーネが叫ぶ。
「お腹空いちゃった。行って来る!」
リリィが駆け出す。
追いかけっこをしていたハクたちも後を追う。
「おいらたちの分も取っておいてくれよ!」
清々しい風が吹き抜ける。
魔神の影や、世界の行く末など、まるで感じさせない、穏やかな一日だった。
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