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第34話
しおりを挟むここは、ウエス国の森の中。
「いくぞー!水流の舞!」
ハクが技を繰り出すと、両手から川のような水流が現れる。
「わーい!楽しいー!」
「楽しいキー!」
「キキー!」
リリィたちは、その水流にサーフィンのように乗っている。縦横無尽に舞う水流に乗っているリリィたちは、本当に波乗りをしているようだ。
「昼ごはんの時間よ!」
フィーネがリリィたちを呼ぶ。
「今日は、フィーネ特製ふわとろパンケーキよ。」
ふわふわでトロトロのパンケーキにたっぷりの蜂蜜がかかっている。
砕いた木の実がトッピングされていて、美味しそうだ。
「やったー!パンケーキだ!」
リリィが目を輝かせて頬張る。
「おいら、このパンケーキってやつ、気に入ったぞ。」
ハクの口にも合ったようだ。
「フィーネは、前世では凄腕の料理人だったんだな。」
イブがパンケーキを口に運びながら言う。
「まあね。名の知れたシェフだった時もあったわ。」
フィーネは鼻高々だ。
フィーネが料理人だった時は、レシピ本を出せばベストセラー、テレビ番組にも引っ張りだこ、経営する店も連日予約で一杯。超有名シェフだった。
SNSでの不用意な発言で炎上して、表舞台から姿を消したのだが。
「あれは失敗だったわね。」
フィーネは、嫌なことを思い出してしまった。
「フィーネ!遊びに来たよ。」
オルガたちだ。
「いらっしゃい!ゆっくりしていって。」
フィーネが出迎える。
「フィーネ、お久しぶり。」
スザクもホウオウも、すっかり元気になったようだ。
「紅茶をどうぞ。」
フィーネが魔法で紅茶を淹れる。
「フィーネの淹れる紅茶は、いつも美味しいよ。ありがとう。」
オルガに言われて、フィーネは顔を赤らめた。
露天風呂に入って寛いでいた時だった。
「ねえ、スザクはオルガとつきあってるんでしょ?」
リリィがど直球を投げる。
「な、何?付き合ってなんかないわよ!」
スザクが顔を真っ赤にして否定する。
「スザクは、満更でもないんでしょ?」
ホウオウが笑いながら言う。
フィーネは、スザクたちと少し距離を置いた。
「私は、オルガはいい人だと思う。」
スザクが言う。
「なら、告白したら?」
リリィがグイグイ来る。
「オルガは、別に好きな人がいるみたいだから。」
スザクが言うと、聞いていたイブがニヤニヤしながらフィーネの方を見る。
フィーネは、イブから目を逸らした。
「オルガが好きな人って誰かなー?」
リリィが無邪気に言う。
「それ以上は、大人の秘密!」
ホウオウがリリィを連れて、スザクから離れる。
「つまんないの!」
リリィが不満気に言う。
それをイブは、笑いながら見ていた。
一方、男湯では。
ハクが、湯船の中を泳いでいる。
オルガは、ゆっくり湯船に浸かって疲れを癒していた。
「オルガは、スザクが好きなのか?」
ハクが突然言い出すので、オルガは耳まで赤くなった。
「急になんだよ。ビックリするだろ!」
「スザクから好きの匂いがするんだ。」
「好きの匂いって?」
オルガがハクに聞く。
「相手の人が好きだと好きの匂いがする。嫌いだと嫌いの匂いがする。おいらにはわかるんだ。」
ハクは、感情が匂いでわかるらしい。
「僕は匂わないだろ?」
ハクは少し考えて、
「オルガはフィーネといる時に好きの匂いが、強くなる。」
オルガは真面目な顔で言う。
「匂いのことは、他の人には言っちゃダメだぞ。」
「わかった。誰にも言わない。」
ハクとオルガは指切りをした。
その夜。
「リリィが女神の魂を持つ子供だったのは分かった。私がこの世界を救う鍵だってことも分かる。じゃあ、具体的に何をしたら良いの?」
フィーネは、当然の疑問をイブにぶつけた。
「時が来れば分かる。今は、それしか言えない。」
イブは、奥歯に物が挟まったような言い方でこたえた。
「魔神を倒すのが、私たちの役目なの?」
「そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるな。」
「何だかよく分からないわね。」
フィーネは戸惑っている。
「すまない。ぼくの口からはこれ以上は言えない。」
「もう分かったわ。魔神は倒す。世界も救う。やり方は、その時になって考える。それまでは、今まで通り、のんびり過ごすわ。」
フィーネは紅茶を一口飲んだ。
イブも紅茶を一口飲んだ。
「待てー!」
「待つキー!」
「待つキキー!」
「おいらは捕まらないぞ!」
リリィたちは、追いかけっこをしている。
「こんなにたくさんの星が空にはあって。私たちはこの世界で出会った。それだけで十分。今はこうして、のんびり暮らしてる。紅茶を飲みながら。難しい事は、その時になったら考えればイイ。」
フィーネはつぶやいた。
「君たちには、重い運命を背負わせてしまって、申し訳なく思ってる。その分、ぼくは全力で君たちを支えるつもりだ。」
イブがフィーネの方を見て言った。
ウエスの森の中は、いつも通りにのんびりとした空気が流れている。
これから起こるであろう大きなうねりは、静かに確実に近づいて来ているのだった。
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