美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ

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第2話

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「で?美人四天王って?」

 ガリが前に出た。

「説明するでおじゃる。まず、モブの妹の山田芽以がこの学校の美人四天王の一角!通り名は【リスのメイ】でおじゃる」
「ま、待ってくれないか。リスって小動物のリスかな?僕の妹をバカにしてる?」

 僕はガリに詰め寄った。

「待つのだ。最期まで話を聞いて欲しい」

 僕はマッチョに羽交い絞めにされた。

「マッチョめ!この馬鹿力が!」

「おめーシスコンすぎるんだよ」
「イラっとした」
「ガリが決めたわけじゃねーだろ」

「……そう言われればそうだね」

 僕は力を抜く。

「そうでおじゃる。次はメイと一緒に帰ったこのクラスの人気ナンバーワン。夏空日葵で通り名は双丘のヒマリでおじゃるよ」
「あー。巨乳だからかな?でも、本人が知ったらアウトだよね?」

「「黙っていてください」」

 3馬鹿が一斉に僕に口止めをした。
 全員恐怖で震えている。

 そしてすぐに復活して話を続けた。
 3馬鹿はダメージを受けてもゾンビのようにすぐ復活する特徴がある。

「しかも、美人四天王はガードが堅い事でも有名でおじゃる」
「ヒマリもメイも、男子が苦手だよな」

 だが、僕は妹のメイと何度もシテいる。
 絶対にこの事を言ってはいけない。
 ばれてもいけない。

「おめーまた赤くなったな。モブ童貞感がでてっぞ」
「悪かったな。で?他の2人は?」

「新米教師の秋月結月先生でおじゃる」
「ガードが堅い以前に先生だから付き合うの無理な気がする」

「最後まで聞くでおじゃる。先生の通り名は桃のユヅキでおじゃる」
「くびれがあってお尻が大きく見えるからかな?」
「そうでおじゃる」

「これも本人に聞かれたらアウトだよね」
「……男子しか知らないでおじゃる。黙っていて欲しいでおじゃる」

 ガリはだらだらと汗をかく。

「誰が決めたんだ?お前らが噛んでないか?」

「疑うのは良くないでおじゃる」
「突き抜ける者の名声は、自然と高まるのだ」
「俺達を何だと思ってんだ?」

「だが、怪しい」

「我らは紳士にして無罪でおじゃる」
「紳士だけど変態紳士だ」

「変態紳士も紳士には変わりないでおじゃる」

 否定しないのかよ!

「最期はこの高校を卒業したばかりの冬月雪菜先輩でおじゃる」
「ちょっといいか?」

「モブよ、ツッコミが多すぎないか?」
「いや、言わせてほしい。学校の美人四天王なのにもう卒業してるし、ガードが堅い以前にもう卒業してて会えないだろ!この四天王はおかしい。僕は違和感を感じる」

「モブよ、殿堂入りという言葉がある。ユキナ先輩の通り名は万能のユキナだ。スポーツ万能、成績優秀、そしてその魅力はやまとなでしこと言っていいだろう。殿堂入りなのだ」

「おお!ユキナ先輩だけはまともだ」
「所でモブ、家の手伝いはいいでおじゃるか?」

「そ、そうだった。じゃあまた」

「「また!」」

 3馬鹿と僕は意外と仲がいい。
 でも、3馬鹿と同じカテゴリーには入れられたくない。
 僕もお年頃なのかもしれない。

 僕はすぐに家に帰る。
 高校から家まで数分で到着するほど近い。
 

 家に帰るとメガネを外す。
 メガネは学校と勉強やPCを見ている時しかつけないのだ。
 インテリモードのスイッチの役割がある。

 そしてぼさぼさの髪をワックスで整える。
 自転車屋の接客をする僕が失礼な身だしなみではいけない。
 
 これで気分が変わった。
 背筋を伸ばし、そして笑顔で店の中に入る。

「いらっしゃいませ!」

 店に入ると、そこには飼い犬の豆柴【きゅう】を撫でる妹のメイとクラスの美女、双丘のヒマリが居た。

 リスのメイと……双丘のヒマリか。
 確かに、立派な物をお持ちで。

「あ、こんにちわ」
「お兄ちゃん遅かったね」
「え?え?もしかしてシュウ?」

「いらっしゃいませ」

 僕は笑顔で返す。
 今の僕は自転車屋の店員で、それ以上でもそれ以下でもないんだ。
 お客様として接する。

「お兄ちゃん。真面目に店員さんをやってる。ふ、ふふふふふふふふふふ!」

 メイがツボにはまって笑い出す。

「やっぱりシュウ?」
「お、いい所に来たな。父さん買い物に行って来るから、シュウ、店番を頼んだぞ」

 バレたか。
 いや、父さんはわざと僕の名前を言って楽しんでいるんだ。

「分かったよ。父さん、行ってらっしゃい」

 僕は店員だ。
 笑顔で父さんを見送る。
 メイは更に笑う。

「やっぱりシュウなのね!学校と全然違う」
「ふふふふふふ、お兄ちゃん面白い」

「お客様の前で失礼があってはいけないからね」
「いつもそうしてればいいのに……」
「お兄ちゃんは本気を出せばイケメンなんだよ」

 僕は内心焦っている。
 でも顔には出さない。
 今まで築き上げてきたモブとしての努力が崩れてしまう。
 今まで生徒が自転車屋に来ても僕だとばれなかった。
 別人だと思われてきたのだ。
 でも、あっさりバレた。

 く、お客様に失礼は出来ない。

 僕は学校では伊達メガネとぼさぼさの髪、そしてわざと少し猫背で過ごし、3馬鹿とも話す事で、いや、3馬鹿とは楽しいから話をしている。

 更にあまり発言せず、気の利いた事は言わず、影に徹し、今のモブキャラのイメージをみんなにアピールしてきたんだ。
 僕=モブと、刷り込みを行って来た。
 努力の結果僕は、注目されず、いじめられず、波風絶たないポジションをゲットした。

 でも、高校3年生の春、僕はクラス1の美人であるヒマリにメッキを剥されつつあった。
 それにしても、双丘のヒマリは立派な物を持っていらっしゃる。

「全然違うよね?」
「お客様に失礼な態度は取れないからね」
 
 僕は笑顔で言った。

「……全然、違う」

 豆柴のきゅうが僕にすり寄って来る。

「きゅきゅう♪」

 鳴き声が特殊だけど、きゅうは可愛い。
 僕の足にまとわりつく。

「あ、お客様だ。メイ、きゅうを頼むよ」
「は~い!ヒマリ、隅に行こう」
「う、うん」

 僕とお客さんとのやり取りを、ヒマリはちらちらと見ていた。



 父さんの経営する自転車屋さんは実は大きな儲けが出ている。
 自転車の販売は、大手のホームセンターが覇権を握っている。

 それでも利益が出ている。
 利益の秘密は修理の技術料にある。

 まず、この地域は人口3000人ほどしかいない田舎で、高校の学生は駅から田園地帯の砂利道を通って通勤する。
 駅から高校までの通路は1.2キロ。
 多くの者が自転車を使い、そして田園地帯の砂利道を通る。
 この事で定期的にパンク修理の仕事が舞い込む。

 更に、この田舎には自転車屋は1件しかない。
 自転車は安いホームセンターで買っても、壊れた自転車の修理の多くが家に舞い込む。

 修理内容のほとんどはパンク修理だ。

 パンク修理はそのほとんどが技術料で、高校に通うようになって自転車を毎日使うようになった学生に中には、空気入れさえ怠る者が必ず出てくる。
 そして、パンクして店に来てくれるのだ。

 僕と父さんは自転車の販売を無理に勧めない。
 そして、家で購入していない自転車の修理は必ず笑顔で請け負う。
 更に、家の決済はクレジットカードやスマホ決済を導入している。
 
 こうする事で、修理に気軽に訪れることが出来る環境を整え、修理の覇権を取って来たのだ。

 僕はお客様と笑顔で接する。
 コーヒーを無料で提供し、お客様には椅子に座って待って貰う。
 気遣いは大事なのだ。

 そして、持ち込まれた自転車のパンク修理を素早くこなす。
 僕は10歳のころからパンク修理の技術を父さんに叩き込まれた。
 修理を覚えると、父さんはストップウォッチを持ち出して、アドバイスを繰り返し、僕の修理スピードを上げてくれた。

 今では手際よくパンク修理の作業が出来る。
 次にするべき事が頭に浮かび、勝手に手が動いていく。

 お客様の自転車修理が終わると笑顔で接客し、気持ちよく帰宅して頂く。
 この仕事には達成感がある。

 だが、視線が気になる。
 僕の事をヒマリはジト目で見ていた。

 
 
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