無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ

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第10話

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 ネコノの家に入って待つと、制服を着たネコノが戻って来た。
 ナイフが至る所にセットされている。

 両腰に2つ
 背中に4つ
 太ももに2つ
 計8つか。

「ちなみに太もものナイフは前からつけているのかな?」
「配信でアドバイスを貰ってからつけてるよ」

 絶対にエロアクシデント狙いのアドバイスだ。
 ナイフを取りだす瞬間のスカートがめくれ上がるパンチラを見たいんだろう。
 それ以前に太ももにナイフホルダーをつけている時点で魅力的に見える。

「その、コメントに騙されてないか?」
「ええ、でも便利だよ!投げやすいし、ほら、すっと取り出せる」

 ネコノが太ももを少し上げてナイフを取り出した。
 動きが綺麗で見ていて絵になる。
 動きを見ると取りやすそうでもある。

「そっか、確かに取り出しやすいように見えた」
「でしょ、配信してもいいかな?今日はプライベートな事はあまり話さないようにするから」

 一瞬嫌な予感がした。
 でも、もう部長と縁は切れた、両親も来ない。

 部長の事は忘れたい。
 部長とのつながりを精神的に断ち切る儀式として、配信をするのもいいか。

 俺はもう部長に縛られる必要はない。
 自由なんだ。
 配信をしてもいいし、会社を辞めたからもう部長は関係ない。 

「分かった。駅からスタートしよう」
「うん、行こ」

 住所の特定を防ぐため駅に移動した。
 駅から配信をスタートすれば住所は特定されない。
 ネコノのぱんにゃんはもう住所が特定されてるけど住んでいる家を特定されたら面倒だ。


「水分補給をしていい?」
「大事だな」 

 自販機で飲物を買い、2人ベンチに座った。

「配信を始める前に、連絡先を交換しよ?」
「……ちょっと、使い方が分からなくて、一人で生活してたから手間取るんだ。それと、今は会社を辞めたばかりだから落ち着いてからにしよう」

 ネコノは美人で性格がいいのも分かっている。
 気分で話をしたり気まぐれだったりとそういう部分は枝葉で、根っこの性格は優しい。
 でも俺は躊躇した。


「……貸して」

 ネコノが俺に近づいて後ろに回り込んだ。
 俺の後ろから耳元で囁くようにアプリの操作を教えてくれる。

 さっきから胸が当たっており、囁き声にドキドキする。
 俺は、迷ったままなすがまま連絡先を交換する。

 ネコノに接近されると鳥肌が立ち、

 ネコノの吐息で一瞬にして全身の血が体を駆け巡るように熱くなってしまう。


「こうして、ここを開いてっと、OK]
「あ、ありがとう」
「そろそろ配信をはじめよ?」

 そう言って左手の人差し指で制服を下げて胸元を露出させた。
 右手で紋章に触れる。

「あ、ごめんね、紋章の発動に慣れてなくて、紋章を触らないと発動できないからちょっと時間がかかるよ」

 そういう事じゃない。
 無防備すぎる。
 ネコノの胸が見えそうになって顔が熱くなる。

 ネコノの胸元にある紋章が光って、空中にこぶし大の紋章が発生した。
 これがカメラの機能を果たす。

 空中の紋章が前に移動して俺達を映し出した。

「始めるね」
「分かった」

「ネコリコチャンネルのリコです。よろしくね」
「あ、どうも、きゅうチャンネルをやっている者です。きゅう、挨拶して」
「きゅう」
「カケルさんも挨拶だけはしよ」
「カケルです、よろしくお願いします」
「今日は大穴に向かうよ」

 急に始めたはずだがコメントがどんどん増えていく。

『待ってました』
『休日はPC前待機が基本だ』
『みんな早いな。最速の俺ですら3番手とはな』
『3番手は最速じゃないってwwwwww』
『カケル、話し方が堅い。サラリーマンの挨拶かよwwwwww』

「今日は大穴に行くよ。出発~!」

 歩いて大穴に向かう。

「離れて歩いた方がよくないか?」
「え?」
「ネコリコチャンネルのファンが怒り出すから」
「迷惑かな?」
「迷惑じゃないけど、嫉妬はあるから」
「じゃあそのままでいいよ。ほとんどの人はいい人だし、酷い人はブロックするよ。それに離れると配信が見にくくなっちゃう」

 ぱんにゃんに人が押し掛けナンパされていた件を話しておこう。
 俺が悪者になって言った方が角が立たない。
 ネコノに言わせるのは違うと思った。

「そう言えば、今日お詫びの品をぱんにゃんに持って行きましたがその時事件が起きたました」

『お?お?』
『急に語りだしたな』
『待て待て、黙って泳がせようぜ』
『普通に興味ある』

『カケルの話を聞こうぜ』
『カケルって少し変わってるよな。面白い』


「ぱんにゃんで整理券を渡すネコノを邪魔するようにナンパや聞き込みが行われていました。この配信を見ている人にそういう人はいないかもしれませんが、ぱんにゃんの営業に支障が出ているのでそういう事はやめて欲しいです」

『何だと!許せん!』
『あまりしつこい様なら営業妨害で警察に連絡した方がいいね』
『そういうことをされるとリコちゃんがぱんにゃんで手伝えなくなるね』
『お詫びの品って何なんだろ?』

「昨日はカケルさんに迷惑かけちゃったから、プライベートな事は言わないよ」
「10万円と謝罪文を入れた封筒を持って行きましたが、受け取って貰えませんでした」

『謝罪文wwwwww』
『謝罪文って、絶対に面白いだろ。こういうのは言わないと駄目だ』
『文章を見せて』
『文章の朗読を頼むwwwwww』
『カケル面白いわ。いいキャラしてる』
『言葉が堅い、普通に話してくれ』

「自分で作っておいて、文章はちゃんと覚えてないけど、本当に申し訳ありませんでした、的な文章かな」

『あー分かった。何となくイメージ出来るわ』
『だから朗読はよ』
『きゅうチャンネルから来ました。カケルさんも可愛いですね』
『ワイもきゅうチャンネルからきたで、きゅうを見せて』

『まだ会話が堅いで』
『緊張してるんだろ?今まで金稼ぎより身バレ防止を優先してきた奴やで?』
『きゅうを見せて』

 きゅうを持ってアップで映す。

「きゅう~」

『可愛い』
『天使すぎる』
『意味不明生物来たあああ』

「私にも触らせて」

 ネコノが手を差し出すときゅうが手に乗った。

『おおお!懐いとる』
『昨日はあんなに隠れてたのにもうテイムしたのか』

「う~ん、人には懐かないはずなんだけどなあ」

『カケル君が悲しそうな顔をしてるwwwwww』
『リコちゃんが天使だからだろう』
『カケルが気を許したからじゃないか?』
『カケルの顔が面白いwwwwww』
『ショックを受けるカケルwwwwww』

『慣れただけだろ』
『きゅうは悪い人には懐かない。だってきゅうは天使だから』
『リコも天使だから当然きゅうは懐く』

「原因は分からないなあ。俺も、きゅうの事はよく分からないから。そろそろ住宅街を抜けたから、走ろう」

『ご主人様も分からない意味不明生物wwwwww』
『カケルの頭の上で佇んでおられる』
『きゅう神様だな』
『おい!きゅうがあくびしたぞ』

 俺はきゅうを頭に乗せて走って大穴に向かった。

『今日はかなり手加減して走ってるね』
『十分早いぞ』
『ハンターとしては一般的な速度だ』
『昨日ひき殺しそうになる速さだったからな』
『これが平常運転なんだろう。カケルの表情が昨日よりマシになった』

 大穴を進んで大穴に入った。
 地下は大穴の迷路になっている。

 きゅうとネコノが同時に同じ方向を向いた。

「大虫か?」

『アリだな』
『3体、リコが構えたぞ』

「私にやらせて!」

 リコが太ももからナイフを取り出して投げた。
 アリの顔面にヒットして動きが一瞬止まると、両手で腰のナイフを抜いて3度斬りつけた。
 アリが霧になって消え魔石を落とす。

 だが横から1体がネコノに急接近する。

 ナイフを腰にしまい、後ろに下がりながら背中からナイフを2本取り出して投げると、更に2本を取り出して投げた。
 そして腰のナイフで斬りつけ止めを刺した。
 
 残ったアリがネコノに突進してきた。
 腰に差していたナイフ2本を持ったまま横に飛んで突進を躱す。
 壁にぶつかったアリを後ろから斬りつけるとアリが方向転換する前に魔石に変わった。

「倒したよ!」

 ネコノがナイフと魔石を拾う。

『おお!リコちゃんは強いんだな』
『ハンター高校でも強い方だろう』
『魔石をある程度注入して能力値を上げてるね』
『そりゃ、ぱんにゃんのリコママは激務だ。体力強化は必須だろ』

 ナイフを投げてひるんだ隙に斬りつけて倒すスタイルか。
 その為に8本もナイフを持っている。
 腰の2本が近接用で残り6本が投げる用……

 でも、3体のアリを倒す為にほとんどのナイフを投げた。
 もしも連戦になったりアリが5体、6体と出てきたらナイフを拾えない。
 危ない気がする。

「ネコノはパーティーを組んでいるのかな?」
「ううん、組んでないよ」
「仲間がいた方がいいと思う」

「え?カケルさんにはパーティーがいるの?」
「お、俺は、い、いないけど、」
「えええ!カケルさんはパーティーを組んでないのに私はパーティーを組まないと駄目なの?」

『こんなきれいな論破ってある?』
『完全論破されてる』
『ネコリコが直球で言ったwwwwww』
『カケル君が信頼されているからリコは安心して言えるんだよ』
『確かに、信頼できない相手なら言わないだろうね』
『2人は結構いいコンビだな』

 俺は危なっかしいから言ったんだけど……確かに俺がパーティーを組まないのに人には組めとか言うのはおかしい。
 これじゃあ部長がやっている事と変わらなくなってしまう。

 正確に言えばきゅうがいるから1人と1匹パーティーとも言えなくもない。
 でも、きゅうの強さを見せて、それを言う流れも変な感じがする。
 それ以前に本当に部長のような行動は取りたくない。

「そっか、確かにおかしい事を言った。ごめん」

『特大ブーメランwwwwww』
『ネコリコが危なっかしいのは分かる。でもお前が言うななんだよなあwwwwwww』
『カケル君、言いたいことは分かる。カケル君は強いからパーティーはいらない。ネコリコは危なっかしい。分かるよ。でも自分もパーティーを作ってから言おうか』

『カケルとリコちゃんの会話は話の軸がずれてるな。でもだからこそ会話が面白い』
『見ててにやにやしてしまう。嫉妬する奴もいるかもだけど俺は楽しめるで』
『カケルのあの何かを飲み込んだような顔が可愛いな』
『18才と20才か、初々しくて良い』
『カケルが面白いわ』

 俺に対する特大ブーメランコメントが続いて大穴配信は終わった。

 
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