10 / 11
side M age:36
しおりを挟む
アハト様とアルベルトと魔導師長4人での話し合いが終わった後、別室で待っていたメルヴィの家族にアルベルトと共に面会した。
今のメルヴィの状態は、王族の秘密に関わる心残りがあって王城をさまよっていたミルカ・クレメラの幽霊が、その心残りを解決するまでメルヴィの身体を借りている、ということにして、アルベルトが上手に説明してくれた。
『ウフフ、あのお母様が泣いてる』
メルヴィは表には出れないものの、暗闇の中で外の音と私の心の声だけ聞こえていて、私にはメルヴィの声が聞こえている状態。メルヴィは私に身体を乗っ取られてしまったというのに焦ることもなく、メルヴィを心配して思わず泣いてしまったマリカの泣き声を聞き喜んでいた。
私が負い目を感じないように、焦りを見せないよう演じてくれてたのだと思う。
その日は、とりあえず王城の客室に泊まることになった。思えば、12歳の誕生日から”眠る”という行為もしていなかったのだと気づき、寝れるのか不安になりながら横になった私は24年ぶりに眠りについた。
そして、気づいたら私はメルヴィとだけ会話できる暗闇の中にいて、メルヴィが表に出ていた。それ以降、メルヴィが何度寝て起きても私が表に出ることはなかった。
メルヴィはアロマー侯爵家に帰り、侍女を引退していたタイナが会いに来て、タイナの声を聞くことが出来た。タイナとカリーナへ感謝の気持ちを伝えてもらうこともできた。マリカからヒルッカ伯母様の話もたくさん聞いた。メルヴィとたくさん話をした。
メルヴィを通して情報を伝えること1週間、アハト様とアルベルトは数々の証拠を抑えてヴァルトと助手を捕らえることに成功した。
ヴァルト達の処罰は、身体の時を止める魔法をかけた状態で24年牢屋へ入れることに決まった。ヴァルトは自身で開発した魔道具を使い、私にかけた身体の時を止める魔法を少ない魔力で24年間も維持していたらしいのだが、皮肉にもその魔道具を使うことで、ヴァルトに魔法をかけ続けたまま24年間放置できるそうだ。
認めたくはないのだが、ヴァルトによる人体実験によって、医療や人体学、魔道具、薬学など様々な分野が飛躍的に進歩するだろう。証拠として差し押さえた研究記録を解き明かしていくには、不明点などがあった時にヴァルトに聞くという選択肢も残るこの処罰は合理的だと思う。
ヴァルトはあの暗闇の中でも気にせず研究のことを考え続けるような気もするし、研究が出来ないことですぐに発狂するような気もする。
側室一家殺人未遂で幽閉されていたリューリ様だが、ヴァルトの研究室から過去の余罪も判明し、毒杯での処刑が決まった。50人の乳児が材料と知っていて初聖水拝領の前に魔力量増強剤を使ったこと、違法な不妊治療薬を使っていたこと、ヴィルヘルムの生物学上の母である貴族令嬢の拉致に関わっていたことがわかったそうだ。
リューリ様がヴィルヘルムの遺体をヴァルトに提供していたことは、余罪を説明してくれている中でも言われなかった。ヴィルヘルムの遺体は研究室に名札付きで堂々と置いあったから、気づかないことはありえない。
透明な防腐液と共に瓶詰めされたヴィルヘルムを見てしまったアハト様の気持ちを考えると心が痛む。
ヴァルトを捕らえたらどうせ分かることだし、メルヴィにこんな残酷なことを教えたくないために、私はヴィルヘルムの遺体のことは事前に伝えていなかったのだ。アハト様なら、ヴィルヘルムも、他にも実験体としてあの研究室にいた人たちも、皆、ちゃんとお墓に埋葬してくれるだろう。
新たな不妊治療を構想するために必要だからヴィルヘルムの遺体をよこせとヴァルトに言われた時の、光のない暗い目をしたリューリ様を思い出し、かつての初聖水拝領の時の輝かしい姿との落差に思いを馳せる。女神教では現世で悪事を積み重ねた者は、死後は地獄で罪を償うのだと言われている。リューリ様には伯父と一緒に地獄で罪を償ってほしい。
そして、今、私の身体にかかっている時を止める魔法を解くために皆が集まっている。
ヴァルトが使用していた魔法を維持している魔道具を、魔導師長が壊してくれるのだ。時を止められる前の時点で死を予感していた私の身体は、長年のヴァルトの実験により更にボロボロになっている。魔法を解いたらすぐに死ねるだろう。
メルヴィ、アルベルト、リクハイド、ミルカを抱いたパウラ様、マリカ、エーミル、メルヴィの父、タイナ、カリーナ、そしてアハト様が見守ってくれている中、魔導師長が魔道具を壊した。
「ミルカ……どうか、安らかにお眠りください」
アハト殿下の声が聞こえたきがした。
----------------------------------------------
後書き
とても理解しづらい話だったと思います。
途中で投げ出さず最後まで読んでいただいたこと、本当ありがとうございました。
本来はここで完結でした。
改めて自分で読み直し、ミルカの救いがなさ過ぎたなと気になりました。
「救いなし」タグを増やすか、救いを書き足すか迷い、次の11話目を執筆しました。
11話目は蛇足に近いので、ここで読むのをやめていただいても大丈夫です。
今のメルヴィの状態は、王族の秘密に関わる心残りがあって王城をさまよっていたミルカ・クレメラの幽霊が、その心残りを解決するまでメルヴィの身体を借りている、ということにして、アルベルトが上手に説明してくれた。
『ウフフ、あのお母様が泣いてる』
メルヴィは表には出れないものの、暗闇の中で外の音と私の心の声だけ聞こえていて、私にはメルヴィの声が聞こえている状態。メルヴィは私に身体を乗っ取られてしまったというのに焦ることもなく、メルヴィを心配して思わず泣いてしまったマリカの泣き声を聞き喜んでいた。
私が負い目を感じないように、焦りを見せないよう演じてくれてたのだと思う。
その日は、とりあえず王城の客室に泊まることになった。思えば、12歳の誕生日から”眠る”という行為もしていなかったのだと気づき、寝れるのか不安になりながら横になった私は24年ぶりに眠りについた。
そして、気づいたら私はメルヴィとだけ会話できる暗闇の中にいて、メルヴィが表に出ていた。それ以降、メルヴィが何度寝て起きても私が表に出ることはなかった。
メルヴィはアロマー侯爵家に帰り、侍女を引退していたタイナが会いに来て、タイナの声を聞くことが出来た。タイナとカリーナへ感謝の気持ちを伝えてもらうこともできた。マリカからヒルッカ伯母様の話もたくさん聞いた。メルヴィとたくさん話をした。
メルヴィを通して情報を伝えること1週間、アハト様とアルベルトは数々の証拠を抑えてヴァルトと助手を捕らえることに成功した。
ヴァルト達の処罰は、身体の時を止める魔法をかけた状態で24年牢屋へ入れることに決まった。ヴァルトは自身で開発した魔道具を使い、私にかけた身体の時を止める魔法を少ない魔力で24年間も維持していたらしいのだが、皮肉にもその魔道具を使うことで、ヴァルトに魔法をかけ続けたまま24年間放置できるそうだ。
認めたくはないのだが、ヴァルトによる人体実験によって、医療や人体学、魔道具、薬学など様々な分野が飛躍的に進歩するだろう。証拠として差し押さえた研究記録を解き明かしていくには、不明点などがあった時にヴァルトに聞くという選択肢も残るこの処罰は合理的だと思う。
ヴァルトはあの暗闇の中でも気にせず研究のことを考え続けるような気もするし、研究が出来ないことですぐに発狂するような気もする。
側室一家殺人未遂で幽閉されていたリューリ様だが、ヴァルトの研究室から過去の余罪も判明し、毒杯での処刑が決まった。50人の乳児が材料と知っていて初聖水拝領の前に魔力量増強剤を使ったこと、違法な不妊治療薬を使っていたこと、ヴィルヘルムの生物学上の母である貴族令嬢の拉致に関わっていたことがわかったそうだ。
リューリ様がヴィルヘルムの遺体をヴァルトに提供していたことは、余罪を説明してくれている中でも言われなかった。ヴィルヘルムの遺体は研究室に名札付きで堂々と置いあったから、気づかないことはありえない。
透明な防腐液と共に瓶詰めされたヴィルヘルムを見てしまったアハト様の気持ちを考えると心が痛む。
ヴァルトを捕らえたらどうせ分かることだし、メルヴィにこんな残酷なことを教えたくないために、私はヴィルヘルムの遺体のことは事前に伝えていなかったのだ。アハト様なら、ヴィルヘルムも、他にも実験体としてあの研究室にいた人たちも、皆、ちゃんとお墓に埋葬してくれるだろう。
新たな不妊治療を構想するために必要だからヴィルヘルムの遺体をよこせとヴァルトに言われた時の、光のない暗い目をしたリューリ様を思い出し、かつての初聖水拝領の時の輝かしい姿との落差に思いを馳せる。女神教では現世で悪事を積み重ねた者は、死後は地獄で罪を償うのだと言われている。リューリ様には伯父と一緒に地獄で罪を償ってほしい。
そして、今、私の身体にかかっている時を止める魔法を解くために皆が集まっている。
ヴァルトが使用していた魔法を維持している魔道具を、魔導師長が壊してくれるのだ。時を止められる前の時点で死を予感していた私の身体は、長年のヴァルトの実験により更にボロボロになっている。魔法を解いたらすぐに死ねるだろう。
メルヴィ、アルベルト、リクハイド、ミルカを抱いたパウラ様、マリカ、エーミル、メルヴィの父、タイナ、カリーナ、そしてアハト様が見守ってくれている中、魔導師長が魔道具を壊した。
「ミルカ……どうか、安らかにお眠りください」
アハト殿下の声が聞こえたきがした。
----------------------------------------------
後書き
とても理解しづらい話だったと思います。
途中で投げ出さず最後まで読んでいただいたこと、本当ありがとうございました。
本来はここで完結でした。
改めて自分で読み直し、ミルカの救いがなさ過ぎたなと気になりました。
「救いなし」タグを増やすか、救いを書き足すか迷い、次の11話目を執筆しました。
11話目は蛇足に近いので、ここで読むのをやめていただいても大丈夫です。
176
あなたにおすすめの小説
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
醜女の私と政略結婚した旦那様の様子がおかしい
サトウミ
恋愛
この国一番の醜女である私と結婚したイバン様。眉目秀麗で数多の女性と浮き名を流した彼は、不祥事を起こしたせいで私なんかと結婚することになってしまった。それでも真面目な彼は、必死に私を愛そうと努力してくださる。
──無駄な努力だ。
こんな色白で目と胸の大きい女を、愛せるはずがない。
【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜
よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。
夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。
不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。
どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。
だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。
離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。
当然、慰謝料を払うつもりはない。
あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる