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第十二章 唸れ商魂!
宴の始まり。そして地獄
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私たちは各自用意された席に着く。
今から歓迎の催しがあるそうで、その準備が行われている間、私はイラに相手をしてもらっていた。
彼女から私の手に持つグラスへと蜂蜜酒がなみなみと注がれる。
「どうぞ~」
「ととっ。悪いな」
「そこはありがとうよ~」
「ふふふ、そうだな。それよりも、もう少し私のそばに寄った方がいい」
「まぁ~、大胆なお方~」
「いや、そういうことではなくて……」
私はイラへ熱い視線を送る二人に顔を向ける。
フィナとカインはイラの生態に興味津々で、目の前の豪華な食事も忘れ、じ~っと、イラを見ている。
「二人とも、失礼だぞ」
「そんなこと言ったって~」
「すみません、どうしても興味深くて」
「この二人は。イラ、彼らには近づくなよ」
「うふふ~、ありがとう~。でも、大丈夫よ~。もうすぐそれどころじゃなくなるから~」
「ん?」
私は首を傾げる。
すると、ちょうどキャビットたちが集まり、歓迎の催しが始まった。
キャビットたちはその見目の愛らしさを強調するような衣装や着ぐるみを着て、演劇や歌を披露する。
その姿を目にすれば口にどれだけチャックをしようと隅からキャビットへの禁句――『可愛い』が零れ落ちかねない。
さらに、子どものキャビットたちが私たちにまとわりつき、お腹を見せて、くりくりのお目目で見つめてくる。
……撫でたい。だが、それも非礼に当たる。
私たちは口を閉じ、手を押さえ、衝動という衝動に耐え抜くしかない。
例えるなら、飢えに苦しむ者の前に豪勢な食事を出して食べてはいけないと言われているようなもの。いや、例えというかまんまの話だが。
私とフィナとカインは太ももに爪を立て、歯茎から血が流れかねないほどの力で歯を噛み、その隙間から呻きのような声を漏らす。
「こ、これは、きついな……」
「これが、歓迎? どこが……」
「なるほど、親父さんが天国ような宴で地獄を味わうことになると言っていたそうですが、このことでしたか」
私たち三人が全力で欲望に耐え抜く中、キサはマフィンのふかふかお腹に背中を預け、演目を行うキャビットたちへ素直な思いを言葉にしていた。
「うわ~、みんな可愛いねぇ」
「そうにゃろそうにゃろ。ニャハハ」
これにフィナが噛みつく。
「ちょっと、なんでキサだけ許されてるのよっ」
「キサは特別だからニャ。息子の嫁になるかもしれねぇ子だからニャ」
「ずるいずるいずるいずる~い」
「ニャハハ、辛そうニャね~。仕方ニャい、カオマニー」
「はい、ここに控えていますニャ」
「あれをニャ」
「はいニャ」
カオマニーは返事をして、木製の看板を掲げた。
そこには、
可愛い一回・1000ジユ
なでなで一回・2000ジユ
と……。
これを見てフィナは、森の葉が飛び散る勢いで大声を上げ、カオマニーは三角帽子の上から耳を押さえる。
「はぁぁぁあっぁぁぁ!! なによそれぇぇぇぇぇぇ!?」
「やっかましいニャね~。見ての通り、お代を頂ければ、非礼に目をつぶるニャ」
「せっこ! だったらこっちは、そんなの無視して言いまくってなでなでしまくってやる!」
「それは好きにすればいいニャ。でも、そんなことすれば、交流は絶望的ニャよ」
「うっ」
「フィナは錬金術で使う貴重な道具を欲してるニャ。私たちがいないとなかなか手に入らないニャよ」
「うぐっ。あんたら、病気の面倒を見てやった恩義を仇で返すつもりっ?」
「薬の見返りに道具類をタダにしてあげてるニャ。ただし、交流がなくなったらお代を頂くことににゃるニャ。それはそれはとても残念ニャ~」
「それを仇で返してるっていうのよぉぉぉ!」
フィナは叫び、カオマニーはにゃふふふと笑う。
だが、フィナの叫びはもっともだ。
私はイラの言葉とカオマニーの態度を思い出しつつ、マフィンに抗議の籠る声を上げた。
「寒くなる、剥がれるとは懐と身のことか、それにカオマニーの含み笑い……マフィン、歓迎の宴にこれは少し……」
「たしかにそうだニャ。これから友人として付き合うにゃら、あまりがめついこともできにぇ~ニャ。仕方にゃい。特別に半額にしてやろうニャ」
「半額……」
と、私が声を出すと、カインは懐に手を置いた。
「半額、半額かぁ。二・三回なでなでするくらいなら……」
「早まるな、カイン! これは罠だぞ! 値を下げることによってお得感を見せている。そうして、こちらを泥沼に引きずり込む魂胆だ!」
「そうであって、この苦痛から逃れられるなら!」
「今すぐ懐から手を抜けっ。一度でも金を出せば、もう止まらない。これはそういう類のものだぞ!」
「そこは、何とか、自制して見せます……だから、一度だけっ、一度だけ!」
私が必死でカインが説得している最中も、キサはマフィンのお腹に顔を埋めたり、可愛いと言いながら、子どものキャビットを撫でている。
その姿を見て、私は下唇を強く噛んだ。
「くっ、なるほど。キサだけ自由であることによって、私たちの欲望の呼び水となっているのかっ。考えたな、マフィン!」
「にゃっはっはっは、それは誤解というものニャ~。それでどうするニャか~?」
「私は負けないっ!」
そう、宣言した横から、フィナとカインは財布からお札を取り出す。
「五千出す!」
「一万払います!」
「二人とも!?」
我慢に耐えかねた二人は金を支払い、目の前のお子様キャビットを愛で始めた。
二人はキャビットの喉をコロコロしたり、お腹に顔をうずめたりしている。
「なんてことだ……誘惑に負けるとは……」
「ニャハハ、ケントはどうするニャ?」
「クッ、マフィン。私は彼らほど弱くない!」
「さてさて、どうかニャ~?」
と、挑発をするマフィン。
そこへイラが私を背中から抱きしめてきた。
「ふふ~ん、ケント様には私がいるから大丈夫よ~。ねぇ、ケント様?」
彼女の柔らかな胸と蕩けるような肢体が私の背中に伝わる。
見た目は水っぽく冷たそうに見えるが、生き物であるためほんのり温かい。
その温かさが、より一層の色欲を掻き立てるのだが……。
フィナとカインはふわふわ可愛いに挟まれて、恍惚の表情を見せている。
彼らの姿を見て、今、私が欲しているものが見える。
「……イラ、君は大変魅力的な女性だ」
「まぁ」
「だが、それとこれとは別問題なのだ……私はもう、自分を抑えられない」
私は懐から財布を取り出す。
それを見たイラはマフィンにビシッと親指を立てていた。
どうやら、彼女の行動は私の理性を崩すための行為。そう、二人はグルだった!
しかし、もうそのようなことはどうでもいいっ!
今は自分に正直であるだけだ!!
――この日の散財
ケント――四万七千ジユ
フィナ――七万六千ジユ
カイン――十九万九千ジユ
今から歓迎の催しがあるそうで、その準備が行われている間、私はイラに相手をしてもらっていた。
彼女から私の手に持つグラスへと蜂蜜酒がなみなみと注がれる。
「どうぞ~」
「ととっ。悪いな」
「そこはありがとうよ~」
「ふふふ、そうだな。それよりも、もう少し私のそばに寄った方がいい」
「まぁ~、大胆なお方~」
「いや、そういうことではなくて……」
私はイラへ熱い視線を送る二人に顔を向ける。
フィナとカインはイラの生態に興味津々で、目の前の豪華な食事も忘れ、じ~っと、イラを見ている。
「二人とも、失礼だぞ」
「そんなこと言ったって~」
「すみません、どうしても興味深くて」
「この二人は。イラ、彼らには近づくなよ」
「うふふ~、ありがとう~。でも、大丈夫よ~。もうすぐそれどころじゃなくなるから~」
「ん?」
私は首を傾げる。
すると、ちょうどキャビットたちが集まり、歓迎の催しが始まった。
キャビットたちはその見目の愛らしさを強調するような衣装や着ぐるみを着て、演劇や歌を披露する。
その姿を目にすれば口にどれだけチャックをしようと隅からキャビットへの禁句――『可愛い』が零れ落ちかねない。
さらに、子どものキャビットたちが私たちにまとわりつき、お腹を見せて、くりくりのお目目で見つめてくる。
……撫でたい。だが、それも非礼に当たる。
私たちは口を閉じ、手を押さえ、衝動という衝動に耐え抜くしかない。
例えるなら、飢えに苦しむ者の前に豪勢な食事を出して食べてはいけないと言われているようなもの。いや、例えというかまんまの話だが。
私とフィナとカインは太ももに爪を立て、歯茎から血が流れかねないほどの力で歯を噛み、その隙間から呻きのような声を漏らす。
「こ、これは、きついな……」
「これが、歓迎? どこが……」
「なるほど、親父さんが天国ような宴で地獄を味わうことになると言っていたそうですが、このことでしたか」
私たち三人が全力で欲望に耐え抜く中、キサはマフィンのふかふかお腹に背中を預け、演目を行うキャビットたちへ素直な思いを言葉にしていた。
「うわ~、みんな可愛いねぇ」
「そうにゃろそうにゃろ。ニャハハ」
これにフィナが噛みつく。
「ちょっと、なんでキサだけ許されてるのよっ」
「キサは特別だからニャ。息子の嫁になるかもしれねぇ子だからニャ」
「ずるいずるいずるいずる~い」
「ニャハハ、辛そうニャね~。仕方ニャい、カオマニー」
「はい、ここに控えていますニャ」
「あれをニャ」
「はいニャ」
カオマニーは返事をして、木製の看板を掲げた。
そこには、
可愛い一回・1000ジユ
なでなで一回・2000ジユ
と……。
これを見てフィナは、森の葉が飛び散る勢いで大声を上げ、カオマニーは三角帽子の上から耳を押さえる。
「はぁぁぁあっぁぁぁ!! なによそれぇぇぇぇぇぇ!?」
「やっかましいニャね~。見ての通り、お代を頂ければ、非礼に目をつぶるニャ」
「せっこ! だったらこっちは、そんなの無視して言いまくってなでなでしまくってやる!」
「それは好きにすればいいニャ。でも、そんなことすれば、交流は絶望的ニャよ」
「うっ」
「フィナは錬金術で使う貴重な道具を欲してるニャ。私たちがいないとなかなか手に入らないニャよ」
「うぐっ。あんたら、病気の面倒を見てやった恩義を仇で返すつもりっ?」
「薬の見返りに道具類をタダにしてあげてるニャ。ただし、交流がなくなったらお代を頂くことににゃるニャ。それはそれはとても残念ニャ~」
「それを仇で返してるっていうのよぉぉぉ!」
フィナは叫び、カオマニーはにゃふふふと笑う。
だが、フィナの叫びはもっともだ。
私はイラの言葉とカオマニーの態度を思い出しつつ、マフィンに抗議の籠る声を上げた。
「寒くなる、剥がれるとは懐と身のことか、それにカオマニーの含み笑い……マフィン、歓迎の宴にこれは少し……」
「たしかにそうだニャ。これから友人として付き合うにゃら、あまりがめついこともできにぇ~ニャ。仕方にゃい。特別に半額にしてやろうニャ」
「半額……」
と、私が声を出すと、カインは懐に手を置いた。
「半額、半額かぁ。二・三回なでなでするくらいなら……」
「早まるな、カイン! これは罠だぞ! 値を下げることによってお得感を見せている。そうして、こちらを泥沼に引きずり込む魂胆だ!」
「そうであって、この苦痛から逃れられるなら!」
「今すぐ懐から手を抜けっ。一度でも金を出せば、もう止まらない。これはそういう類のものだぞ!」
「そこは、何とか、自制して見せます……だから、一度だけっ、一度だけ!」
私が必死でカインが説得している最中も、キサはマフィンのお腹に顔を埋めたり、可愛いと言いながら、子どものキャビットを撫でている。
その姿を見て、私は下唇を強く噛んだ。
「くっ、なるほど。キサだけ自由であることによって、私たちの欲望の呼び水となっているのかっ。考えたな、マフィン!」
「にゃっはっはっは、それは誤解というものニャ~。それでどうするニャか~?」
「私は負けないっ!」
そう、宣言した横から、フィナとカインは財布からお札を取り出す。
「五千出す!」
「一万払います!」
「二人とも!?」
我慢に耐えかねた二人は金を支払い、目の前のお子様キャビットを愛で始めた。
二人はキャビットの喉をコロコロしたり、お腹に顔をうずめたりしている。
「なんてことだ……誘惑に負けるとは……」
「ニャハハ、ケントはどうするニャ?」
「クッ、マフィン。私は彼らほど弱くない!」
「さてさて、どうかニャ~?」
と、挑発をするマフィン。
そこへイラが私を背中から抱きしめてきた。
「ふふ~ん、ケント様には私がいるから大丈夫よ~。ねぇ、ケント様?」
彼女の柔らかな胸と蕩けるような肢体が私の背中に伝わる。
見た目は水っぽく冷たそうに見えるが、生き物であるためほんのり温かい。
その温かさが、より一層の色欲を掻き立てるのだが……。
フィナとカインはふわふわ可愛いに挟まれて、恍惚の表情を見せている。
彼らの姿を見て、今、私が欲しているものが見える。
「……イラ、君は大変魅力的な女性だ」
「まぁ」
「だが、それとこれとは別問題なのだ……私はもう、自分を抑えられない」
私は懐から財布を取り出す。
それを見たイラはマフィンにビシッと親指を立てていた。
どうやら、彼女の行動は私の理性を崩すための行為。そう、二人はグルだった!
しかし、もうそのようなことはどうでもいいっ!
今は自分に正直であるだけだ!!
――この日の散財
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フィナ――七万六千ジユ
カイン――十九万九千ジユ
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