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悠久の章
理想の明日を求めて、私たちは歩みを止めない
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――トーワ城・執務室
除幕式から一か月後。
執務室では、白の法衣に黒の外套を纏ったケントが執務机の椅子に腰を掛けて嘆いていた。
「あああああああ、もう! 王なんかになりたくないっ!」
彼の声に、フィナが呆れを交えた唾を飛ばす。
「ちょっとっ! そこ、私の椅子なんだからどきなさいよっ!」
「はぁ~、トーワの領主だった頃が懐かしい」
「懐かしいって、まだ、ひと月しか経ってないじゃん」
「そのひと月で何が起こったと思うっ?」
ケントは椅子から立ち上がり、確かな光を宿す銀眼を執務室内にいたフィコンやキサへ向けて、さらに指差す!
「フィコンはルヒネ派の影響力拡大に精を出し、キサは商売で表も裏も牛耳ろうと暗躍する! さらにアグリスの貴族が己の立場を誇示し、二十二議会は政治ではなく辺境を支える軍の方面から口を出し影響力を残そうとする! 控えめに言っても、あそこは地獄だぞ!!」
指を差されたキサとフィコンは小さくベロを出す。
「てへ、ごめんね陛下のお兄さん。これも商人の権利のためだからね~」
「うむ、てへ、だな。フィコンもルヒネ派の信徒を守らねばならぬ故な」
「何がてへっ! だ! 特にフィコン。少女とはいえ十六の娘に今のはちょっときついぞ!」
「うぐ、なんと失礼な奴だ! エムト! こやつを即刻斬れ!」
「残念ながらフィコン様。私はいま、陛下をお守りする守護騎士であります。フィコン様の命とは言えお受けできません」
「この~、フィコンに忠誠を誓ったのは偽りかっ」
「偽りではありませんが、それはそれ、これはこれでございます」
この二人の会話にフィナが疑問を纏う。
「あれ、エムトってフィコン第一じゃなかったの?」
「無論、その通りだ。だが、陛下が四方八方と責め立てられていれば、このエムト。守護騎士として、力添えをせぬわけにはいかぬ」
「ああ~、判官びいきってやつかぁ」
どうやらエムトは、王となったケントがあまりにも無体な状況にさらされたため、同情が前に出て肩を持ってしまったようだ。
フィナはケントをちらりと見る。
「王様、情けなくない?」
「うるさいっ、それに正式な即位は一か月後だ! まだ王ではないっ!」
「いや、もう逃げられないんだから、覚悟しなさいよ……」
「しかしだな、王になる前からこうだぞっ。あ~、先が思いやられる……今ならネオ陛下のお気持ちがわかる。私にあの方ほどの民や政治を治める才があれば、私も程よく力を抜いてだらだらしたいところだ。でなければ、やってられん!」
「でも、ケントにはないから、全力で頑張るしかないね」
「はぁ~、本当に嫌だ……」
ケントはため息を床にまき散らし、何度か呼吸を繰り返して、まっすぐと背筋を伸ばした。
「さて、愚痴もここまでだ。もう、みんなは揃っているのか、フィナ?」
「うん、中庭の方に。入りきれなかった兵士たちは、城壁内に詰めてる」
「よろしい。では、行こうか」
彼は愛用の宝石の冠のついた錫杖を手に取る。
腰には古代人の銃を装備。
武装した彼へフィナが声を掛ける。
「目の調子はどう?」
「ああ、何ら問題ない。世界に色がついて見える。素晴らしい色の世界が……見たくもない色も一緒になっ」
彼はちらりとキサとフィコンを睨んだ。
二人は仲よくケントへ微笑みを返す。
ケントは軽く肩を落として銀眼をフィナヘ戻す。
「君とカインのおかげだ。改めて礼を言う。ありがとう」
「どういたしましてっ。ま、今日という日に間に合ってよかった」
「そうだな。目の悪いままでは足手纏いになってしまうところだった」
そう唱え、彼は執務室から出ると、廊下を歩み、一歩一歩着実に階段を降りていく。
後ろからは、和やかな雰囲気を消し去り、戦意を纏うフィナたちが続く。
彼らは皆が待機しているという、城の中庭に向かった。
――トーワ城・中庭
中庭には多くの仲間や兵士が集まり、中央には金属らしきもので造られた人工物。
それは、人が一挙に数十は通り抜けられるアーチ状の門であった。
ケントは大勢の前で、こう言葉を発する。
「これは私の我儘だ! 皆に無理を押すような話ではないっ。それでも、私の声に集まってくれたことに感謝する!」
ざっと視線を全体に振り、再び多くへ声が届くように心の底から言葉を広げる。
「私には、救いたい世界がある! 助けたい人々がいる! 彼らはいまだ絶望を前にしても諦めず、歯を食い縛り戦い続けているだろう。そのような勇気ある彼らに私は恩がある! その恩を返したい!!」
視線を緑豊かとなった北の大地へ向ける。
「我々は、巨大な敵を前にして戦い、辛くも勝利した。いや、あの時は戦いにすらならなかった! だが今はっ、我々には敵と対抗する力がある!! フィナ!」
「ええ、完璧よ。この一年、遺跡の隅々を調べ尽くし、多くの力を知った! トーワの秘密を知った!」
フィナは大きく前に出て、皆に知という名の危険な剣を御した者として言葉を発す。
「ここに、トーワ領主であり、実践派の長・フィナ=ス=テイローとして宣言する! 遺跡の力は巨大であり封印されるべきもの! だが、今日、この日だけはっ、遺跡から得た力の全てを開放する!!」
彼女の声に応え、中庭の中央に鎮座したアーチ内部に水のような幕が張られた。
その水膜の前にケントが立ち、皆に言葉を響かせる。
「さぁ、彼らに知識を伝えようっ。トーワの秘密を伝えよう! そして、希望を渡そう!! では、行こう! 絶望に立ち向かう、もう一つのトーワへ!!」
章間4・終焉のトーワへと続く――
除幕式から一か月後。
執務室では、白の法衣に黒の外套を纏ったケントが執務机の椅子に腰を掛けて嘆いていた。
「あああああああ、もう! 王なんかになりたくないっ!」
彼の声に、フィナが呆れを交えた唾を飛ばす。
「ちょっとっ! そこ、私の椅子なんだからどきなさいよっ!」
「はぁ~、トーワの領主だった頃が懐かしい」
「懐かしいって、まだ、ひと月しか経ってないじゃん」
「そのひと月で何が起こったと思うっ?」
ケントは椅子から立ち上がり、確かな光を宿す銀眼を執務室内にいたフィコンやキサへ向けて、さらに指差す!
「フィコンはルヒネ派の影響力拡大に精を出し、キサは商売で表も裏も牛耳ろうと暗躍する! さらにアグリスの貴族が己の立場を誇示し、二十二議会は政治ではなく辺境を支える軍の方面から口を出し影響力を残そうとする! 控えめに言っても、あそこは地獄だぞ!!」
指を差されたキサとフィコンは小さくベロを出す。
「てへ、ごめんね陛下のお兄さん。これも商人の権利のためだからね~」
「うむ、てへ、だな。フィコンもルヒネ派の信徒を守らねばならぬ故な」
「何がてへっ! だ! 特にフィコン。少女とはいえ十六の娘に今のはちょっときついぞ!」
「うぐ、なんと失礼な奴だ! エムト! こやつを即刻斬れ!」
「残念ながらフィコン様。私はいま、陛下をお守りする守護騎士であります。フィコン様の命とは言えお受けできません」
「この~、フィコンに忠誠を誓ったのは偽りかっ」
「偽りではありませんが、それはそれ、これはこれでございます」
この二人の会話にフィナが疑問を纏う。
「あれ、エムトってフィコン第一じゃなかったの?」
「無論、その通りだ。だが、陛下が四方八方と責め立てられていれば、このエムト。守護騎士として、力添えをせぬわけにはいかぬ」
「ああ~、判官びいきってやつかぁ」
どうやらエムトは、王となったケントがあまりにも無体な状況にさらされたため、同情が前に出て肩を持ってしまったようだ。
フィナはケントをちらりと見る。
「王様、情けなくない?」
「うるさいっ、それに正式な即位は一か月後だ! まだ王ではないっ!」
「いや、もう逃げられないんだから、覚悟しなさいよ……」
「しかしだな、王になる前からこうだぞっ。あ~、先が思いやられる……今ならネオ陛下のお気持ちがわかる。私にあの方ほどの民や政治を治める才があれば、私も程よく力を抜いてだらだらしたいところだ。でなければ、やってられん!」
「でも、ケントにはないから、全力で頑張るしかないね」
「はぁ~、本当に嫌だ……」
ケントはため息を床にまき散らし、何度か呼吸を繰り返して、まっすぐと背筋を伸ばした。
「さて、愚痴もここまでだ。もう、みんなは揃っているのか、フィナ?」
「うん、中庭の方に。入りきれなかった兵士たちは、城壁内に詰めてる」
「よろしい。では、行こうか」
彼は愛用の宝石の冠のついた錫杖を手に取る。
腰には古代人の銃を装備。
武装した彼へフィナが声を掛ける。
「目の調子はどう?」
「ああ、何ら問題ない。世界に色がついて見える。素晴らしい色の世界が……見たくもない色も一緒になっ」
彼はちらりとキサとフィコンを睨んだ。
二人は仲よくケントへ微笑みを返す。
ケントは軽く肩を落として銀眼をフィナヘ戻す。
「君とカインのおかげだ。改めて礼を言う。ありがとう」
「どういたしましてっ。ま、今日という日に間に合ってよかった」
「そうだな。目の悪いままでは足手纏いになってしまうところだった」
そう唱え、彼は執務室から出ると、廊下を歩み、一歩一歩着実に階段を降りていく。
後ろからは、和やかな雰囲気を消し去り、戦意を纏うフィナたちが続く。
彼らは皆が待機しているという、城の中庭に向かった。
――トーワ城・中庭
中庭には多くの仲間や兵士が集まり、中央には金属らしきもので造られた人工物。
それは、人が一挙に数十は通り抜けられるアーチ状の門であった。
ケントは大勢の前で、こう言葉を発する。
「これは私の我儘だ! 皆に無理を押すような話ではないっ。それでも、私の声に集まってくれたことに感謝する!」
ざっと視線を全体に振り、再び多くへ声が届くように心の底から言葉を広げる。
「私には、救いたい世界がある! 助けたい人々がいる! 彼らはいまだ絶望を前にしても諦めず、歯を食い縛り戦い続けているだろう。そのような勇気ある彼らに私は恩がある! その恩を返したい!!」
視線を緑豊かとなった北の大地へ向ける。
「我々は、巨大な敵を前にして戦い、辛くも勝利した。いや、あの時は戦いにすらならなかった! だが今はっ、我々には敵と対抗する力がある!! フィナ!」
「ええ、完璧よ。この一年、遺跡の隅々を調べ尽くし、多くの力を知った! トーワの秘密を知った!」
フィナは大きく前に出て、皆に知という名の危険な剣を御した者として言葉を発す。
「ここに、トーワ領主であり、実践派の長・フィナ=ス=テイローとして宣言する! 遺跡の力は巨大であり封印されるべきもの! だが、今日、この日だけはっ、遺跡から得た力の全てを開放する!!」
彼女の声に応え、中庭の中央に鎮座したアーチ内部に水のような幕が張られた。
その水膜の前にケントが立ち、皆に言葉を響かせる。
「さぁ、彼らに知識を伝えようっ。トーワの秘密を伝えよう! そして、希望を渡そう!! では、行こう! 絶望に立ち向かう、もう一つのトーワへ!!」
章間4・終焉のトーワへと続く――
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