転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第30話 カントーリの冒険者ギルド

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「はふぅ……。熊肉があんなに美味しいなんて知らなかったわ。また食べたいなぁ」

 ポッコリと膨らんだお腹をさすりながら、肩にメイスを乗せて通りを歩く。
 メイスも熊肉には満足したようで、顔や前足を舐めながら相槌を打つ。

『ああ。ブラッディホーンベアがあんなに美味いとはな。雑魚ざこだと思って相手にしなかったが、これからは食材の目録に加えておこう』

 メイスが何か恐ろしい事をサラッと言ったが、私は敢えて無視をした。

 さて、今日はこのまま街を発つ前に寄っておきたい場所がある。
 私達はその場所へ足を進めた。

 ある看板が目に入り足を止めて見上げる。
 ロージスの街でも見た剣と盾と動物が描かれており、その下には冒険者ギルドの文字が刻まれていた。

「ここだ。メイス、入るよ」

 それだけをメイスに伝えて冒険者ギルドの扉に手をかけた。
 冒険者ギルドに来るのは二度目となるが、やはり未だに緊張してしまう。
 そっと扉を引いて中に足を踏み入れると、そこには冒険者達が多く集まっていた。
 ほとんどの冒険者は成人を迎えているようで、皆背が高く見上げていると首が痛くなって辛い。
 精神は大人だけど、体は十歳を迎えたばかりの子供にすぎない私には、彼等が大きな壁のように見えて前に進むにもひと苦労だ。
 彼等の間を縫うように進み、受付カウンターへと向かう。

「おはようございます。あのぅ、買い取りをお願いします」

 私が声をかけると、受付で作業をしていた女性が声に気がついて顔を上げた。
 若い女性は一瞬目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべて尋ねた。

「おはようございます。買い取りですね。失礼ですが、冒険者カードをお持ちですか?」

 若い女性の問いかけに、すぐさま斜め掛けのバッグから冒険者カードを取り出してカウンターに置いた。

「はい。冒険者カードです」

「お預かりします。少々お待ちください」

 若い女性は手慣れた様子でカウンターに置かれた冒険者カードを手に取ると、こちらから見えない場所で何やら作業をし始めた。
 それから一分も経たずに、次の質問を投げかけてきた。

「確認いたしました。では、買い取りとのことですが、どんなものか伺ってもよろしいですか?」

 女性に尋ねられた私は頷いて素直に答えた。

「はい。先ず『ホーリー草』が五本と、『ブラッディホーンボア』が一体、それと――」

 そこまで口にした途端、カウンターから身を乗り出した女性が、慌てたように私の口を手で押さえてきた。
 何が起きたのか分からないまま固まっていたら、女性は周囲に視線を向けた後、声をひそめて自分について来るようにささやいた。
 女性に言われるままついて行くと、そこは二階の個室だった。
 ソファに座って待つように言われた私は、頭上に幾つもの疑問符を浮かべながら腰を下ろす。
 女性は丁寧な対応で待つように言うと、足早に個室から出て行った。
 メイスと二人個室に残された私は、段々と不安が襲ってきた。

「……ねぇ、メイス。私、何かおかしな事したのかな?」

 肩に乗っていたメイスは膝の上に飛び降りると、首を傾けて返事をした。

『さあな。人間のことは俺には分からん。まっ、お前に害を成そうとするなら、この俺が懲らしめてやるから安心しろ』

 メイスなら本当にやりかねない。
 出来れば穏便に済ませたいのだが、見た目が子供の私ではちゃんと対応出来るのか不安だ。
 私はメイスに視線を向けて、大事おおごとにならないように言い含めた。

「メイス。私、出来れば目立ちたくないの。だから、大人しくしてもらえると助かる。くれぐれも暴れたり大怪我を負わせることはしないでね」

 ジッと目線を合わせて言い含むようにお願いされたメイスは、ふいっと視線を逸らすと不承不承ながら返事をした。

『……人間とは面倒な生き物だな。分かった。大人しくしていよう。だが、命の危険があると判断したら勝手に行動をさせてもらうぞ』

 膝の上に顎を乗せて横になったメイスは、これ以上の議論を避けるように琥珀色の瞳を閉じた。




 その後、静寂に包まれた個室で緊張したまま訪れを待った。
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