転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第126話 薄々感じていたこと

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 ブラッディホーンベアを討伐した後も、街に近づく魔物を次々と倒していった。
 斜め掛けのバッグに魔物を収納していると、キリアンさんに声をかけられて振り返る。

「……さっきから気になっていたんだが、その鞄の収納量はどうなっているんだ?俺も付与された布袋を持っているが、せいぜい十体が限度だぞ」

 そう言って腰に下げた布袋を見せてくれた。
 鑑定のスキルによると確かに魔法が付与されており、容量としては中と表示されている。
 私のはメイスが用意してくれたもので、魔法付与されていないただのバッグだ。
 焦った私は咄嗟に噓をついた。

「へ、へぇ、そうなんですね。このバッ、鞄は母の形見なので収納量まではちょっと分かりませんね」

 いつものようにバッグと言いかけてすぐに言い直す。
 こちらの言葉に変換するとバッグはカーゴと発音するため、バッグと言ったところで通じないからだ。
 形見と聞いたキリアンさんが、途端にばつが悪そうに眉尻を下げて謝罪の言葉を口にした。

「形見……そうか。それは辛いことを聞いてしまったな。すまん」

 咄嗟に思いついた言い訳だったが、もっと他に言いようがあったはず。
 申し訳なさそうに眉尻を下げたキリアンさんを見て罪悪感が募る。
 しかし、これ以上突っ込んで聞かれることがないと思うと少しだけ気が楽だ。
 あと、人前で収納する時はもっと注意しようと反省した。

「大丈夫です。僕も配慮が足りませんでしたから。次からは気をつけます」

「……はは。君、本当に十歳?年上の人と話しているみたいだよ」

 その言葉に対して、私は曖昧に笑みを浮かべるだけに留めておいた。
 







 気配察知のスキルを発動させて周囲に魔物が居ないか探っていく。
 あらかた魔物を討伐したせいか、私達に近づく魔物は居ない。
 というよりも、魔物の方が蜘蛛の子を散らすように逃げて行っているようだ。
 これ以上追うのは無理だろう。
 そう判断した私はキリアンさんに声をかけた。

「今日はこれくらいにして切り上げませんか?」

 その問いかけに周囲に視線を巡らせたキリアンさんは、納得するように頷いた。

「……ふむ。魔物の気配が遠ざかっていっているな。これ以上深追いしても無駄だろう。よし!今日はこれまでとしよう」

 よかった。いくらキリアンさんが悪い人じゃないと分かっていても、これ以上行動を共にしていたら何かボロを出してしまうかもしれない。
 そのまま冒険者ギルド裏の解体場に向かい魔物を買い取ってもらうと、その日はそこでキリアンさんと別れた。
 家に帰る道すがら大きくため息を吐く。

「は―……。疲れたぁ」

 肉体的には疲れていないのだけど、精神的な疲労が濃かった。
 隣を歩いていたヒデさんが苦笑を浮かべる。

「おつかれさま。キリアンさんと行動して感じたんだけど、どうやら僕らって常識から少し外れているみたいだね。何が常識で何が非常識なのかいまいち分からないんだけど、出来るだけ目立たないように気をつけないといけないね」

 少し?たぶん、少しじゃないと思う。
 でも、ヒデさんが言うように、私達の常識とは多少のズレがあるのは薄々感じていた。
 というのも、私もヒデさんも普通というのを知らなかったから。
 私達は、メイスが教えてくれたことが当たり前なのだと思い込んでいた。
 だけど、今回キリアンさんと行動を共にしたことで、はっきりと確信した。

 あとは魔力量が多いこと。
 特に私は、魔力量もさることながら全属性持ちだ。
 さすがに私でも、全属性を持つ人間が少ないだろうことは理解しているつもりだ。
 だから、キリアンさんの前でも魔法はなるべく使わないように気をつけていた。

 もし、今後もキリアンさんと行動を共にするなら気を引き締めないといけないだろう。
 ……ああ、憂鬱だ。
 ご先祖様が暮らした領地でのんびりと過ごせると思ったのに……。
 これなら転移魔法をもっと真剣に取り組んでおけば良かった。
 一瞬で転移出来ればキリアンさんに見つからずに自由に行動出来るのに。
 そこで私は、ヒデさんの言葉を思い出した。

 『どこでも〇アみたいにパッと移動出来る魔法があれば便利だよなぁ……』

 そうよ!それよ!
 そのイメージなら私でも出来るわ!


 かくして私は、その日から転移魔法を習得するために練習に励むこととなった。
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