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第三章
第127話 黒髪黒目の少年たち(キリアン視点)
しおりを挟むいつものように依頼を済ませた帰りだった。
冒険者ギルドの前で看板を見上げている少年が二人居た。
この街に少年の冒険者は珍しい。
その上、少年たちを覆うように微かな魔力を感じて興味を持った。
「ここが冒険者ギルド。思っていたよりも大きいな」
そう呟いて看板を見上げていたのは、まだ十歳にも満たない少年だった。
少年たちの会話から、この街に着いたばかりだと推測して声をかけた。
「そりゃあそうだろう。ここは元々荒れ地を開墾した場所だからな。周囲には未開の地があるし魔物の住処もある。経験を積みたい冒険者がこぞってこの街に来るのは当然のことさ」
そう伝えると、その少年が目を大きく見開いて俺を見上げた。
どうやら何も知らずにこの街に来たのだろう。
この街の周囲には強力な魔物がおり、先ず新人冒険者はある程度経験を積むまで近寄らない。
彼等はそんなことも知らないのだろうか?
注意をしようと口を開きかけた時、その少年が肩に乗った黒猫と何やら会話を交わし始めた。
会話の内容までは聞こえなかったが、その様子から少年が魔獣使いなのだと推測出来た。
あと、微かではあるが、少年たちを覆う魔力が黒猫から流れていることに気がついて悟られないようにじっくりと眺める。
あれは認識阻害か?
どうりで違和感があったはずだ。
しかし、魔獣が高度な魔法を使えるなんて話し聞いたことがない。
ますます興味を持った俺は、少年に向かって話しかけた。
「へぇ……。君、魔獣使いなのかい?何やら魔法を使っているようだが、別に君達に害を加える気はないから安心してほしい」
目の前の少年の目があからさまに泳ぐ。
どうやら彼は噓をつくのが下手なようだ。
すると、少年の肩に乗った黒猫のため息が聞こえたと思った瞬間、少年たちを覆っていた魔力が消えて姿が露になる。
……は?
黒髪黒目だとぉ!?
書物で読んで知ってはいたが、こうして直に目にした俺は言葉を失ってしまった。
「……伝承の英雄と同じ黒髪黒目の人間が二人。まさか、この目で拝めるとは……。信じられん」
ようやく絞り出した声は感動で震えていた。
それから一人で勝手に盛り上がった俺は、色々と語って二人が顔を引きつらせていたことにも気づかなかった。
その後、自己紹介を済ませて引き留めたことを謝罪した俺は、そのまま彼等について行き宿の案内を買って出た。
彼等と別れて帰路に就きながら俺は歓喜していた。
まさか、この地で英雄と同じ色を持つ者に出会えるとは思ってもみなかった。
あれだけ見事な黒い髪と瞳は見たことがない。
きっとカミール家の血筋の者だろう。
俺はその足で、現当主で領主でもあるカミール伯爵に報告することにした。
俺の雇い主でもあるカミール伯爵は、突然訪ねたにもかかわらず笑顔で迎え入れてくれた。
「お前が急に訪ねて来るのは珍しいな。まあ、温かい茶でも飲みなさい」
金色の髪を指でかき上げて青緑色の瞳を柔らかく細めた美丈夫は、カミール家現当主であるリュシアン・カミール伯爵。
見た目は若いが、すでに成人した二人の子供を持つ父親だ。
一見優男に見えるが、知力、体力共にずば抜けており非常に優秀な人物だ。
人は見た目で判断してはいけないという典型的な代表例と言えるだろう。
伯爵に促されて席に着いた俺は、温かいお茶を飲んで気持ちを落ち着かせる。
頃合いを見計らっていると、人払いした伯爵から質問を投げかけられた。
「それで話しとは何だい?何か大事な話しなのだろう?」
まだ何も言っていないというのに、その洞察力の高さには恐れ入ってしまう。
お茶をテーブルに置いて居住まいを正した俺は、真っ直ぐに伯爵を見据えると口を開いた。
「実は、依頼の帰りにある少年たちを見かけました。彼等はこの街に来たのは初めてとのことでしたので案内を買って出ました。しかし、何やら様子がおかしいと感じてカマをかけてみたところ、認識阻害の魔法で髪と瞳の色を変えていたのです」
そこで一旦話しを終えて深呼吸をする。
伯爵はただ黙って話しの続きを待っていた。
「なんと!かの英雄と同じ黒髪黒目だったのです!あのような見事な黒髪を初めて見ました!書物で読んで知っていましたが、実際に間近で見たのは初めてで興奮が抑えられませんでした!」
深呼吸をして落ち着かせたつもりが、興奮が抑えられずに前のめりになっていた。
伯爵の美麗な眉がピクッと微かに上がる。
「……黒髪黒目だと?それは誠か?」
その声色は信じられないといった感情が滲んでいた。
それからほんの数秒目を閉じて考える素振りを見せた伯爵は、そっと目を開けると話しの続きを促した。
「キリアン。彼等についてもう少し話しを聞かせてくれ」
てっきり伯爵のお身内かと思っていたが、どうやらそうではなさそうだ。
これでは彼等が何者なのか聞ける様子ではない。
そう判断した俺は、彼等と出会った経緯を詳しく説明していった。
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