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第三章
第138話 ホーリー草十本の効果
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応接室にヒデさんとブロンを残して、足早に廊下を歩いていく領主様の背中を追いかける。
すれ違う使用人たちが慌てて壁際に寄り頭を下げるが、領主様は彼等の姿が目に入っていないのか、ひたすら廊下を進んで行った。
そんな使用人たちを横目にしながらズンズンと進む領主様の後を半ば走るようにして追いかけていくと、ある扉の前で立ち止まり振り返って口を開いた。
「ここが息子の部屋だ。前回ホーリー草を煎じたポーションを飲ませてからそろそろひと月が経つ。一刻の猶予もない状況だ。ユーリ殿、確認なのだがこのポーションを一口飲ませれば良いのだな?」
領主様は不安を隠しきれずに瞳を揺らして、手に持っているポーションを見ながら確認してきた。
息子さんの体が心配なのは分かるが、実際にこの目で見ていないので答えようがない。
私は慎重に言葉を選びながら答えた。
「病状が分かりませんので断言出来ません。先ずは一口飲ませて様子を見てみるのはいかがでしょう」
「……うむ。息子の体に負担をかけるわけにもいくまい。そのようにしよう。では、入ろう」
その言葉に納得したのか領主様は小さく頷くと、扉を叩いて部屋に居るであろう息子さんに声をかけた。
「ルイス。私だ。入るぞ」
そう告げて室内に足を踏み入れると、領主様は大きなベッドに向かって足早に歩いて行く。
その部屋は外の景色が一望できるように窓が多く、日当たりも良い。
換気もマメにしているのか、澱みは無く清潔に保たれているようだ。
それだけ領主様は息子さんのことを気にかけているのだろう。
眠っていると思っていた息子さんは目が覚めていたようで、弱々しいながらも領主様の声に応えた。
「……父上」
起き上がろうとしていた息子さんを手で制して、領主様は穏やかな口調で語りかける。
「ああ、良い良い。そのままで話しを聞いてほしい。これはホーリー草入りのポーションだ。今までの物とは違い透明ではないが、一口飲めば怪我や病気が癒えるそうだ。そうであろう?ユーリ殿」
領主様に声をかけられた私は、慌てて領主様の横に移動すると息子さんに一礼して口を開いた。
「はい。大抵の怪我や病気であれば一口飲めば治ります。しかし、ご子息の病状が分かりませんでしたので、そのポーションを飲む前に診察をさせていただければと存じます。領主様、よろしいでしょうか?」
領主様は、驚いたと言わんばかりに目を見開いて尋ねてきた。
「診察……とな?ユーリ殿は医療の心得があるのか?」
その質問にどう答えれば良いのか躊躇してしまう。
だってこれから私が行うのは、鑑定のスキルで息子さんの状態を視ることだったから。
だけど、今は説明している時間はない。
私は曖昧に微笑むと、短く言った。
「では、診察をさせていただきます」
鑑定のスキルを発動させて、今にも儚くなりそうなやせ細った少年に意識を集中させる。
栄養が行き渡っていない淡い水色の髪は艶を失くし、水色の瞳には諦観の色が滲んでいた。
彼はすでに死を覚悟しているのかもしれない。
人生を諦めるには早過ぎる!
より一層意識を集中させていくと、半透明のボードに今までになかった情報が付け加えられていく。
彼の病状は、先天的な病である魔力器官の未発達によるものだった。
表示された情報によると、未発達のまま生まれた子供は魔力を全身に循環させることが出来ずに、そのほとんどが十歳を迎えることなく亡くなってしまうらしい。
でも、このポーションを二口飲んでもらえれば完治するとのことだったので、ホッと安堵した。
「診察が終わりました。そのポーションを二口飲んでいただけますか?ゆっくりで構いません」
息子さんの顔をしっかりと見据えて告げたあと、領主様に顔を向ける。
領主様は無言で頷くと、ベッドに腰を下してポーションが入った瓶の蓋を取る。
「ほぉ……。甘い香りがする。ルイス、二口だけ飲みなさい。重いから私が支えよう」
枯れ枝のように細い彼の腕ではガラス瓶を持つのは難しいだろう。
領主様は彼の背中に腕を回して支えると、もう一方の手でガラス瓶を口に近づけた。
彼は、それを何の躊躇もなくゴクリゴクリと飲み干した。
その姿は、一縷の望みに縋るというよりも半ば自棄のようにも見えた。
しかし、その瞳は次の瞬間キラキラと耀き始めた。
「っ!?か、体が温かい……?息苦しくない……」
見た目には変化が無かったが、鑑定のスキルを発動させたままの私の目には、完治の文字が表示されていた。
ホーリー草を十本使用した効果を目の当たりにした私は、純粋に完治したことに喜んだ。
すれ違う使用人たちが慌てて壁際に寄り頭を下げるが、領主様は彼等の姿が目に入っていないのか、ひたすら廊下を進んで行った。
そんな使用人たちを横目にしながらズンズンと進む領主様の後を半ば走るようにして追いかけていくと、ある扉の前で立ち止まり振り返って口を開いた。
「ここが息子の部屋だ。前回ホーリー草を煎じたポーションを飲ませてからそろそろひと月が経つ。一刻の猶予もない状況だ。ユーリ殿、確認なのだがこのポーションを一口飲ませれば良いのだな?」
領主様は不安を隠しきれずに瞳を揺らして、手に持っているポーションを見ながら確認してきた。
息子さんの体が心配なのは分かるが、実際にこの目で見ていないので答えようがない。
私は慎重に言葉を選びながら答えた。
「病状が分かりませんので断言出来ません。先ずは一口飲ませて様子を見てみるのはいかがでしょう」
「……うむ。息子の体に負担をかけるわけにもいくまい。そのようにしよう。では、入ろう」
その言葉に納得したのか領主様は小さく頷くと、扉を叩いて部屋に居るであろう息子さんに声をかけた。
「ルイス。私だ。入るぞ」
そう告げて室内に足を踏み入れると、領主様は大きなベッドに向かって足早に歩いて行く。
その部屋は外の景色が一望できるように窓が多く、日当たりも良い。
換気もマメにしているのか、澱みは無く清潔に保たれているようだ。
それだけ領主様は息子さんのことを気にかけているのだろう。
眠っていると思っていた息子さんは目が覚めていたようで、弱々しいながらも領主様の声に応えた。
「……父上」
起き上がろうとしていた息子さんを手で制して、領主様は穏やかな口調で語りかける。
「ああ、良い良い。そのままで話しを聞いてほしい。これはホーリー草入りのポーションだ。今までの物とは違い透明ではないが、一口飲めば怪我や病気が癒えるそうだ。そうであろう?ユーリ殿」
領主様に声をかけられた私は、慌てて領主様の横に移動すると息子さんに一礼して口を開いた。
「はい。大抵の怪我や病気であれば一口飲めば治ります。しかし、ご子息の病状が分かりませんでしたので、そのポーションを飲む前に診察をさせていただければと存じます。領主様、よろしいでしょうか?」
領主様は、驚いたと言わんばかりに目を見開いて尋ねてきた。
「診察……とな?ユーリ殿は医療の心得があるのか?」
その質問にどう答えれば良いのか躊躇してしまう。
だってこれから私が行うのは、鑑定のスキルで息子さんの状態を視ることだったから。
だけど、今は説明している時間はない。
私は曖昧に微笑むと、短く言った。
「では、診察をさせていただきます」
鑑定のスキルを発動させて、今にも儚くなりそうなやせ細った少年に意識を集中させる。
栄養が行き渡っていない淡い水色の髪は艶を失くし、水色の瞳には諦観の色が滲んでいた。
彼はすでに死を覚悟しているのかもしれない。
人生を諦めるには早過ぎる!
より一層意識を集中させていくと、半透明のボードに今までになかった情報が付け加えられていく。
彼の病状は、先天的な病である魔力器官の未発達によるものだった。
表示された情報によると、未発達のまま生まれた子供は魔力を全身に循環させることが出来ずに、そのほとんどが十歳を迎えることなく亡くなってしまうらしい。
でも、このポーションを二口飲んでもらえれば完治するとのことだったので、ホッと安堵した。
「診察が終わりました。そのポーションを二口飲んでいただけますか?ゆっくりで構いません」
息子さんの顔をしっかりと見据えて告げたあと、領主様に顔を向ける。
領主様は無言で頷くと、ベッドに腰を下してポーションが入った瓶の蓋を取る。
「ほぉ……。甘い香りがする。ルイス、二口だけ飲みなさい。重いから私が支えよう」
枯れ枝のように細い彼の腕ではガラス瓶を持つのは難しいだろう。
領主様は彼の背中に腕を回して支えると、もう一方の手でガラス瓶を口に近づけた。
彼は、それを何の躊躇もなくゴクリゴクリと飲み干した。
その姿は、一縷の望みに縋るというよりも半ば自棄のようにも見えた。
しかし、その瞳は次の瞬間キラキラと耀き始めた。
「っ!?か、体が温かい……?息苦しくない……」
見た目には変化が無かったが、鑑定のスキルを発動させたままの私の目には、完治の文字が表示されていた。
ホーリー草を十本使用した効果を目の当たりにした私は、純粋に完治したことに喜んだ。
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