転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

文字の大きさ
151 / 180
第三章

第151話 * ワイバーン討伐

しおりを挟む

 小一時間程休憩をした私は、ブロンに急かされて先を進んだ。
 嬉々として前を歩くブロンが、何度も振り返って急かしてくる。

『おねえちゃん、はやくはやく』

 そう急かされても大きな石がごろごろと転がって足場が不安定なため、速く歩こうにも歩けない。
 元の大きさに戻ったブロンとは歩く速度も歩幅も違うため、どうしても時間がかかってしまうのだ。

「ちょ、ちょっと待って。足場が悪くって速く進めないの」

 何と言ってもまだ十歳児。
 いくら頑張っても限界がある。
 足場が悪い岩場で身体強化を掛けたとしても、石に足を取られてすっ転ぶ未来しか視えない。
 そんな私に痺れを切らしたブロンが地面に体を伏せて言った。

『おねえちゃん、乗って。その方がはやいから』

 乗る?
 ブロンの背に乗れってこと?
 確かにその方が速く目的の場所に着くだろう。

 ……だけど、振り落とされたりしない?
 若干の不安はあるが、それよりも好奇心の方が勝っていた。

「じゃあ、乗らせてもらおうかな」

 地面に体を伏せて乗りやすい体勢をとってくれたブロンの背に跨る。
 私が跨ったのを確認したブロンがゆっくりと立ち上がると、それに合わせて視線が高くなり思わず感嘆の声が漏れる。

「おぉ~」

『おねえちゃん、行くよ』

 ブロンに声をかけられて咄嗟に首に手を回す。
 最初はゆっくりだった速度がどんどん速くなり、視界が徐々に狭まっていった。
 あまりの速さに声にならない悲鳴をあげる。
 振り落とされないように必死にしがみついていたら、いつの間にか目的地に到着したようだ。

『おねえちゃん、ついたよ』

 その声にハッと我に返り上空を見上げると、そこには二匹のワイバーンが大きな翼を広げて悠然と飛んでいた。

「でっか……あんな大きいワイバーンを狩るの?ホントに?」

 無意識のうちに心の声が漏れ出ていたようで、その疑問にブロンは弾んだ声で答えた。

『うん!あれはまだ小さい方だから余裕だよ。ぼくが狩ってくるからおねえちゃんはここで待ってて!』

 そう告げるなり、ブロンはワイバーンに向かって駆け出した。
 目測だけど、あのワイバーンは翼を広げた状態で優に十メートルはありそうだ。
 それなのに、あれでまだ小さい方!?
 嘘でしょう!?
 私は動くことも出来ずにその場に茫然と立ち尽くしていた。

 元の大きさに戻ったこともあってか、ブロンは跳躍してあっという間にワイバーンに近づいた。
 それまで悠然と空を飛んでいたワイバーンがブロンに気がついたが、すでにその喉元にブロンの牙が食い込んでいた。

『ギ、ギェ――!』

 何とか逃れようと必死に体を捩るワイバーンに対して、ブロンは慌てた様子を見せずに軽く首を捻った。

 ゴキッ

 鈍い音が聞こえたと思ったら、くの字に首が折れたワイバーンが勢いよく落ちていく。
 突然の出来事にホバリングしていたもう一匹のワイバーンが、慌てて向きを変えて逃げ出す。
 しかし、すぐにブロンに追いつかれて、断末魔をあげることなく鋭い爪で首を切り落とされてしまった。

「……ブロンにかかるとワイバーンがまるでそこら辺の魔物みたいに思えてきたわ。ブロンって凄いのね……」

 そう。ワイバーンといえば、金級冒険者でも容易に倒せない上位の魔物と言われている。
 硬い鱗のような皮膚と、その巨体に見合わぬ俊敏な飛行能力が厄介とされていた。
 そのワイバーンをいとも簡単に倒したブロンは、一体どれだけ強いのか想像するのも恐ろしい。

 ……フェンリルだから強いのか、それともブロンだから強いのか……。

 そんなことを考えていた私に、ブロンはきょとんと首を傾げて言った。

『ワイバーンなんてこわくも何ともないよ。空をとぶけど、それだけだもん』

 そんなことを平然と言って退けるのは、たぶんブロンとメイスくらいだろう。
 私は遠い目をしながら相槌を打つ。

「……へぇ、そうなんだ」

 人間にとっては十分脅威なんだけどな、と思いながらワイバーンを亜空間に収納して、私達は帰路に就いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

底無しポーターは端倪すべからざる

さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。 ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。 攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。 そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。 ※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。 ※ごくまれに残酷描写を含みます。 ※【小説家になろう】様にも掲載しています。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。 現在は 『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』 として連載中です。2026.1.31 どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。 あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。 そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。 だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。 そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。 異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。 畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。 ……なのに、人々の噂はこうだ。 「森に魔王がいる」 「強大な魔物を従えている」 「街を襲う準備をしている」 ――なんでそうなるの? 俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。 これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、 のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。 ■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■

処理中です...