【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第1話 目覚めたら…

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 誰かを呼ぶ声が聞こえて、次第に意識が浮上する。

「ミリー!ミリー!ああ、良かった。気が付いたのね」

 この綺麗な人は誰だろうと、ぼんやりした頭で考える。
 目の前には薄茶色の髪の外国人が、翠色の瞳に涙を滲ませて覗き込んでいた。
 なんだか疲れているように見える。

「?」

 状況が分からないまま起き上がろうとした途端、後頭部に痛みが走った。

「痛っ!」

 そっと頭に触れると包帯が巻かれていた。
 訳が分からないといった表情の私に、外国人女性が話し掛けてきた。

「ミリー?急に起きたらいけないわ。あなた木から落ちたの……覚えてる?」

「木?……あっ」

 その言葉をきっかけに、自分の身に何が起きたのか全て思い出した。
 木によじ登ろうとして足場になっていた枝が、体重を支えられずに折れて落下したことを。
 そして気づいたらベッドに居た。

 それから私自身のことも。
 私はミリアーナ.ハーベストとしてこの伯爵家に生まれた。
 前世は日本人だった。

 ミリアーナとして生まれ育った記憶は薄っすらと残っているが、今は前世の意識の方が強く出ている。
 これは事故の後遺症的なものなのか、それは分からない。
 以前の私も確かに私なのは何となく理解出来た。

「ごめんなさい。お母さま」

 目の前の女性は今世の私の母だ。

「意識が戻って本当に良かった。気が気じゃなかったのよ」

 目の前の女性は涙に濡れた顔をくしゃくしゃにして、私をそっと抱き寄せた。
 私は心配掛けたことを心の中で何度もごめんなさいと呟いた。

 母に目覚めたことを告げられた父と弟が、もの凄い勢いで扉を開けて飛び込んで来て、身体が飛び上がるほど驚いた。
 二人は母に𠮟られて肩を落としていたが、私の方は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
 父も母も私と弟を無条件に愛して、のびのびと育ててくれて感謝している。

 それと同時に不安もある。
 前世の記憶があることを伝えるべきか散々悩んだ末、家族の愛情を信じて告げる決意を固めた。
 父も母も最初こそ戸惑っていたが、数日もすると私の性格が以前と然程変わっていない様子から、今まで通り愛情を注いでくれるようになった。
 二人からは、拒絶や嫌悪といった感情は一切見受けられなかった。
 弟のマーカスはまだ幼いせいか理解していないようだが、変わらず懐いてくれている。





 我が家は祖父の代の借金を抱えており、執事もメイドも雇えないほど貧乏だが、私と弟に溢れるほどの愛情を注いで育ててくれた。

 前世の私は早くに両親を事故で亡くし祖父母に育てられたが、その祖父母も高校卒業間近に相次いで亡くし天涯孤独の身となった。
 私自身は、病気を患い若くして死んだ。
 悔いの残る人生だったから、今世では悔いのないように生きたいと思う。

 私はこの大切な家族を守りたいと微弱ながら何か出来ることはないかと思案していた。
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