【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第20話 十年ぶりの父と叔父

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 裏庭ではマーカスくんが、父と魔法の練習を始めていた。
 瞳がこれでもかというほど、キラキラと輝いて楽しそうだ。
 うんうん、その気持ち良く分かるよ。
 私もワクワクして魔法が使えた時は、すっごい楽しかったもん。

 午後からバート叔父さんが来訪するという知らせに、ソフィアさん達は朝から準備で大忙しだ。
 私が幼い頃に一度会ったことがあるようだが、全く記憶にない。
 実に十年ぶりの再会に心が弾む。
 バート叔父さんは次男だから騎士として生計を立てるため王都へ行き、そこで奥さんと出会い結婚して息子さんと三人で生活をしている。
 父とはマメに手紙のやり取りはしていたようで、少額ながらも時々お金を送ってくれていたそうだ。



 そんな訳で、私は張り切ってクッキーを作っている。
 ささやかながら感謝の気持ちを込めてお礼を伝えたいから。
 後は軽食も用意しておいた方がいいだろう。
 特製マヨネーズをたっぷりと掛けたサンドイッチを多めに作った。



 昼食の時間を少し過ぎた頃、叔父さん達を乗せた馬車が屋敷に到着した。
 執事が知らせに来たので、私達も出迎えのためエントランスへ向かった。
 既にエントランスへ通されていたバート叔父さん達の姿が目に入る。
 遠目からでもガッシリしているのが分かる。
 顔つきはちょっと厳つい感じ。
 バート叔父さんの目が父を捉えた。

「兄上!ご無沙汰しております!お元気そうでなによりです!」

 さすが、騎士。
 ハキハキと話す様はテレビで見た自衛官を思い出す。
 目尻の笑い皺がすごい。
 大股で近づいてきた。

「お前も健勝で安心した。心配していたんだ」

 安堵の表情を浮かべ力強く抱きしめ合う二人。
 その瞳には薄っすらと涙が滲んでいた。
 お互い十年ぶりの再会ということで、感極まっていた。

「マリウス、皆をずっと立たせたままにしておくの?サロンにお通ししてゆっくりしていただきましょう」

 お母さまナイスです!立ちっぱなしは正直しんどかったので、助かります。
 父と叔父さんは、はっとして恥ずかしそうに頬をポリポリ描くと頷いた。
 母の案内でサロンへと連れられ、ようやく落ち着くことが出来た。

 席に就くとソフィアさんとメリダさんがサッとハーブティーとクッキーを出して部屋の隅に下がる。
 父はカップに口をつけ一息つく。
 父に続き叔父さんも一口飲む。

「う、旨い。それに……香りが良い。このような茶は初めて飲んだ。兄上、この茶は何と言うのですか?」

 一口飲んだ後、驚愕の表情で問いかける。
 あれ?デジャヴ?何処かで聞いた台詞だ。
 父は苦笑いをしている。
 同じことを思っていたようだ。

「ああ、ハーブティーという。菓子はハーブクッキーだ。旨いぞ」

 父は叔父さん達にクッキーを勧めた。

「ああ、そう言えば、今王都でも人気の茶と菓子が確かそのような名前でした」

「そうなのか、ハーブティーもクッキーも私の領の特産品だ」

 父の告げた言葉に叔父さんは間の抜けた表情になる。
 隣の奥さんと息子さんも同じ表情をして見つめていた。
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