【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第29話 日々の癒し

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 十四歳の誕生日を数日後に控えたある日のこと。
 カルラさんから本格的にポーションを作るという話しを山の散策の途中で告げられた。

「ミリーさん、そろそろ十四歳の誕生日ですね。真面目に授業を受けてくれたので、基礎は殆ど終了しました。本格的にポーション作りに入ろうと思います。よろしいですね?」

「え?いいんですか?嬉しいです!頑張ります!」

 両手を胸の前で組み笑みを浮かべてカルラさんを見つめた。
 カルラさんと山やハーブ園を散策して、時々質問されたことに対して答えただけのような気がするが。
 それでもポーションを作れるのは単純に嬉しい。
 思わずその場でピョンピョンと跳ねて護衛で付いて来ていたジークさんに笑われた。

「もう、ジークさん笑い上戸なの?」

 口を尖らせて文句を言う。
 前回は遠慮していたのだろうが、今回は腹を抱えて盛大に笑う。

「あ、ああ、すまん。お嬢様の仕草が可愛くてな。ふっ、はははっ!」

 可愛いというより面白いの間違いではと、目を細めた。
 すまん、すまんと謝るが、笑いが止まらない。

「……」

 更にジトーと見つめていると、ようやく収まった。
 目尻にはまだ涙の痕が薄っすらと残っていた。
 ジークさんは箸が転んでも可笑しいお年頃なのかしら。
 まぁ、よく笑うのは良いことだとは思うよ。

「そういう訳でミリーさん、誕生日まで授業はお休みします。今まで良く頑張りましたね」

 優しさに溢れた目を向け頭をそっと撫でた。
 その手は気持ち良く、心まで満たされる。
 じゃ、帰りましょうか、とカルラさんに告げられ来た道を引き返した。




「ミリー、お帰りなさい。今日は早かったのね。丁度お茶にしようと思っていたの。カルラさんもどうぞお掛けになってください。メリダ、お願いね」

 メリダにお茶の用意を頼むとソファに座りなおした。

 お茶の準備が整うと皆それぞれカップを手に一口啜った。

「はぁ、癒されるわ。今日はね、ローズマリーよ。ここ最近はローズマリーばかり飲んでるの。マリウスがね、ますます綺麗になったって。ふふ、はずかしいわぁ」

 乙女のように恥じらう母の姿は、確かに肌艶が良いように見える。

「ローズマリーは血行促進に抗酸化作用がありますからね。女性には嬉しい効能が沢山入っていますよ。飲み続けると効果は持続しますから続けてください」

「まあ、そうなの?分かったわ」

 ローズマリーの効果に目を丸くして、直後、首を縦に大きく頷いた。

「ミリーさんは本当に物知りね。私も頂くわ」

 カップを手にしたままのカルラさんは、もう一口二口と飲み進める。

「身体が温まるわ。それに気持ちが落ち着く。私も気に入ったわ」




 それ以降、母とカルラさんはローズマリーを愛飲するようになり、肌艶が良くなった二人を見て、ソフィアさん達もローズマリーにハマった。
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