26 / 64
第1章 ビキニアーマーができるまで
食い違い
しおりを挟む
午後になると、ケレンはお爺さんと二人で畑に出かけていった。留守を任されたタケルは、梅干しの入ったおにぎりを食べながら、雪見の看病を続けていた。
「……あれ? タケルくん……ここはどこ……?」
「雪見ちゃん! 目を覚ましたんだね。ここはケレンさんがお世話になってるお爺さんの家だよ」
「お線香のにおいがする……。私、確か旧校舎で……」
「旧校舎で倒れていた雪見ちゃんを、ケレンさんが見つけて、ここまで連れてきてくれたんだよ」
タケルはラグラーク製の薬を雪見に渡した。
「さぁ、これを飲んで。目が覚めたら飲ませるようにって、ケレンさんから言われてたんだ。魔法力の乱れを治してくれる効果があるらしいよ」
「ありがとう……」
雪見は言われたまま、素直に薬を飲んだ。心なしか、雪見の顔色は元に戻ってきた。
「気分がだいぶ落ち着いてきたよ」
「雪見ちゃん。今朝、何があったか思い出せる?」
「うん。私、神山先生と話をしていたの……」
「神山先生と?」
タケルが旧校舎で見た雪見の一人芝居は、雪見にかけられた幻想魔法によるものだが、雪見はその事実をまだ知らない。
「どうして、神山先生と話をしていたの?」
「それは──」
雪見は図書館の広場でケルベロスに襲われたときのことをタケルに話した。
「なるほど。それで生徒会の中村さんが、ケルベロスの標的は雪見ちゃんだと言ったんだね。……そして、ケルベロスを裏で操っているのが神山先生だと……」
「だから直接、神山先生に話を聞きに行ったの。生徒会が動き出してからでは、会うことも難しくなると思ったから」
タケルは一度、友依に事実確認をしてみる必要があると思った。図書館で起きたこと自体が、幻想魔法によって見せられた幻覚という可能性もあるからだ。
「神山先生は、ケルベロスのことを話してくれた?」
「私の話を聞くだけで、何も認めようとはしなかった。ただ……ケルベロスを討伐し続けている現状は、良い結果を出さないとも言ってた。腹を空かせたケルベロスは、学校以外でも出没するようになるだろうって」
雪見の話が事実なら、すでに図書館にケルベロスは現れている。しかし、狙いが雪見だとするなら、出没範囲は狭まるはずだ。雪見の周りをガードすれば、被害を事前に防ぐこともできる。
「神山先生は、何故そんなに詳しいんだろう。ケルベロスと無関係ってわけではなさそうだな。神山先生との会話はそれだけ? 他に何も無かった?」
「うん。それだけだよ」
制服のボタンを外していたことは何だったのか。雪見が覚えていないだけなのか、それとも、はぐらかしているだけなのか。
「あ!」
雪見は何かを思い出したように声を張り上げた。
「胸を……触られました」
恥ずかしそうに顔を赤らめ、雪見は自分の胸をぎゅっと押さえた。
タケルはそれが幻想魔法による幻覚だと分かっていたが、それでも神山への怒りだけが、ぐんぐんと込み上げてきた。
「あのデブマッチョめ! 雪見ちゃんのおっぱいを揉むとは許せん!」
「え……私、揉まれたとは言ってないよ。それに、神山先生はデブマッチョと言うよりは細マッチョだと思うんだけど……」
「デブとか細いとか、体型なんかはどうでも良いんだよ。雪見ちゃんのおっぱいを揉んだことが許されないんだ! ……って、あれ? ちょっと待てよ……」
それが、どうでも良くはないことにタケルは気づいた。雪見が魔法で見せられていた幻覚の神山は、実在する神山とは別人ということになるのではないか。
「そうだ。そこにズレがあっちゃいけないんだよ……」
「え?」
雪見に幻想魔法をかけた人物が、神山の設定を間違える分には問題ない。だが、雪見がその間違いに気づいていないのが大問題なのだ。それはつまり、魔法をかけた人物と、かけられた人物の間で、神山という男への認識が等しいことを示す。このことから導き出される答えは一つ。雪見は、自分自身に魔法をかけたのだ。
「何故だ……。何のために……」
「タケルくん。どうかしたの?」
「ごめん。ちょっと留守番を頼んで良いかな。今すぐ調べたいことができたんだ」
タケルは雪見を一人残し、学校へ向かった。
「……あれ? タケルくん……ここはどこ……?」
「雪見ちゃん! 目を覚ましたんだね。ここはケレンさんがお世話になってるお爺さんの家だよ」
「お線香のにおいがする……。私、確か旧校舎で……」
「旧校舎で倒れていた雪見ちゃんを、ケレンさんが見つけて、ここまで連れてきてくれたんだよ」
タケルはラグラーク製の薬を雪見に渡した。
「さぁ、これを飲んで。目が覚めたら飲ませるようにって、ケレンさんから言われてたんだ。魔法力の乱れを治してくれる効果があるらしいよ」
「ありがとう……」
雪見は言われたまま、素直に薬を飲んだ。心なしか、雪見の顔色は元に戻ってきた。
「気分がだいぶ落ち着いてきたよ」
「雪見ちゃん。今朝、何があったか思い出せる?」
「うん。私、神山先生と話をしていたの……」
「神山先生と?」
タケルが旧校舎で見た雪見の一人芝居は、雪見にかけられた幻想魔法によるものだが、雪見はその事実をまだ知らない。
「どうして、神山先生と話をしていたの?」
「それは──」
雪見は図書館の広場でケルベロスに襲われたときのことをタケルに話した。
「なるほど。それで生徒会の中村さんが、ケルベロスの標的は雪見ちゃんだと言ったんだね。……そして、ケルベロスを裏で操っているのが神山先生だと……」
「だから直接、神山先生に話を聞きに行ったの。生徒会が動き出してからでは、会うことも難しくなると思ったから」
タケルは一度、友依に事実確認をしてみる必要があると思った。図書館で起きたこと自体が、幻想魔法によって見せられた幻覚という可能性もあるからだ。
「神山先生は、ケルベロスのことを話してくれた?」
「私の話を聞くだけで、何も認めようとはしなかった。ただ……ケルベロスを討伐し続けている現状は、良い結果を出さないとも言ってた。腹を空かせたケルベロスは、学校以外でも出没するようになるだろうって」
雪見の話が事実なら、すでに図書館にケルベロスは現れている。しかし、狙いが雪見だとするなら、出没範囲は狭まるはずだ。雪見の周りをガードすれば、被害を事前に防ぐこともできる。
「神山先生は、何故そんなに詳しいんだろう。ケルベロスと無関係ってわけではなさそうだな。神山先生との会話はそれだけ? 他に何も無かった?」
「うん。それだけだよ」
制服のボタンを外していたことは何だったのか。雪見が覚えていないだけなのか、それとも、はぐらかしているだけなのか。
「あ!」
雪見は何かを思い出したように声を張り上げた。
「胸を……触られました」
恥ずかしそうに顔を赤らめ、雪見は自分の胸をぎゅっと押さえた。
タケルはそれが幻想魔法による幻覚だと分かっていたが、それでも神山への怒りだけが、ぐんぐんと込み上げてきた。
「あのデブマッチョめ! 雪見ちゃんのおっぱいを揉むとは許せん!」
「え……私、揉まれたとは言ってないよ。それに、神山先生はデブマッチョと言うよりは細マッチョだと思うんだけど……」
「デブとか細いとか、体型なんかはどうでも良いんだよ。雪見ちゃんのおっぱいを揉んだことが許されないんだ! ……って、あれ? ちょっと待てよ……」
それが、どうでも良くはないことにタケルは気づいた。雪見が魔法で見せられていた幻覚の神山は、実在する神山とは別人ということになるのではないか。
「そうだ。そこにズレがあっちゃいけないんだよ……」
「え?」
雪見に幻想魔法をかけた人物が、神山の設定を間違える分には問題ない。だが、雪見がその間違いに気づいていないのが大問題なのだ。それはつまり、魔法をかけた人物と、かけられた人物の間で、神山という男への認識が等しいことを示す。このことから導き出される答えは一つ。雪見は、自分自身に魔法をかけたのだ。
「何故だ……。何のために……」
「タケルくん。どうかしたの?」
「ごめん。ちょっと留守番を頼んで良いかな。今すぐ調べたいことができたんだ」
タケルは雪見を一人残し、学校へ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる