星屑のビキニアーマー

ぺんらば

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第1章 ビキニアーマーができるまで

食い違い

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 午後になると、ケレンはお爺さんと二人で畑に出かけていった。留守を任されたタケルは、梅干しの入ったおにぎりを食べながら、雪見の看病を続けていた。

「……あれ? タケルくん……ここはどこ……?」

「雪見ちゃん! 目を覚ましたんだね。ここはケレンさんがお世話になってるお爺さんの家だよ」

「お線香のにおいがする……。私、確か旧校舎で……」

「旧校舎で倒れていた雪見ちゃんを、ケレンさんが見つけて、ここまで連れてきてくれたんだよ」

 タケルはラグラーク製の薬を雪見に渡した。

「さぁ、これを飲んで。目が覚めたら飲ませるようにって、ケレンさんから言われてたんだ。魔法力の乱れを治してくれる効果があるらしいよ」

「ありがとう……」

 雪見は言われたまま、素直に薬を飲んだ。心なしか、雪見の顔色は元に戻ってきた。

「気分がだいぶ落ち着いてきたよ」

「雪見ちゃん。今朝、何があったか思い出せる?」

「うん。私、神山先生と話をしていたの……」

「神山先生と?」

 タケルが旧校舎で見た雪見の一人芝居は、雪見にかけられた幻想魔法によるものだが、雪見はその事実をまだ知らない。

「どうして、神山先生と話をしていたの?」

「それは──」

 雪見は図書館の広場でケルベロスに襲われたときのことをタケルに話した。

「なるほど。それで生徒会の中村さんが、ケルベロスの標的は雪見ちゃんだと言ったんだね。……そして、ケルベロスを裏で操っているのが神山先生だと……」

「だから直接、神山先生に話を聞きに行ったの。生徒会が動き出してからでは、会うことも難しくなると思ったから」

 タケルは一度、友依に事実確認をしてみる必要があると思った。図書館で起きたこと自体が、幻想魔法によって見せられた幻覚という可能性もあるからだ。

「神山先生は、ケルベロスのことを話してくれた?」

「私の話を聞くだけで、何も認めようとはしなかった。ただ……ケルベロスを討伐し続けている現状は、良い結果を出さないとも言ってた。腹を空かせたケルベロスは、学校以外でも出没するようになるだろうって」

 雪見の話が事実なら、すでに図書館にケルベロスは現れている。しかし、狙いが雪見だとするなら、出没範囲は狭まるはずだ。雪見の周りをガードすれば、被害を事前に防ぐこともできる。

「神山先生は、何故そんなに詳しいんだろう。ケルベロスと無関係ってわけではなさそうだな。神山先生との会話はそれだけ? 他に何も無かった?」

「うん。それだけだよ」

 制服のボタンを外していたことは何だったのか。雪見が覚えていないだけなのか、それとも、はぐらかしているだけなのか。

「あ!」

 雪見は何かを思い出したように声を張り上げた。

「胸を……触られました」

 恥ずかしそうに顔を赤らめ、雪見は自分の胸をぎゅっと押さえた。

 タケルはそれが幻想魔法による幻覚だと分かっていたが、それでも神山への怒りだけが、ぐんぐんと込み上げてきた。

「あのデブマッチョめ! 雪見ちゃんのおっぱいを揉むとは許せん!」

「え……私、揉まれたとは言ってないよ。それに、神山先生はデブマッチョと言うよりは細マッチョだと思うんだけど……」

「デブとか細いとか、体型なんかはどうでも良いんだよ。雪見ちゃんのおっぱいを揉んだことが許されないんだ! ……って、あれ? ちょっと待てよ……」

 それが、どうでもことにタケルは気づいた。雪見が魔法で見せられていた幻覚の神山は、実在する神山とは別人ということになるのではないか。

「そうだ。そこにズレがあっちゃいけないんだよ……」

「え?」

 雪見に幻想魔法をかけた人物が、神山の設定を間違える分には問題ない。だが、雪見がその間違いに気づいていないのが大問題なのだ。それはつまり、魔法をかけた人物と、かけられた人物の間で、神山という男への認識が等しいことを示す。このことから導き出される答えは一つ。雪見は、魔法をかけたのだ。

「何故だ……。何のために……」

「タケルくん。どうかしたの?」

「ごめん。ちょっと留守番を頼んで良いかな。今すぐ調べたいことができたんだ」

 タケルは雪見を一人残し、学校へ向かった。
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