星屑のビキニアーマー

ぺんらば

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第1章 ビキニアーマーができるまで

ケルベロス・ダーク

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 早朝。青みがかった済んだ空には雲一つ無く、空気はどこまでも透明で、遠くの信号機の色まで良く見える。

 雪見はケレンに稽古をつけてもらうため、道場に向かって歩いていた。風の剣術を学んでからは身体が軽い。実際、体重は前よりも減ったのだが、心まで軽くなっているのだ。

 道場の鍵を開けて、更衣室で制服を脱ぎ、剣道着に着替える。そして、タケルと一緒に作ったプラスチックソードを、鏡の前で構えて一振り。道着の摩擦が邪魔をするが、こればかりは仕方がない。雪見は更衣室を出て、何気なく玄関へ向かった。

「よう」

 突然、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り返ると、そこには人のような形をした黒いかたまりが立っていた。

「驚いたか? 無理もないな。この姿を見せるのは始めてだからな。俺だよ。神山だ……」

「神山……先生?」

 黒い塊はグニャグニャ動いて形を留めていない。それは不安定で、不確実な存在。

「何これ……。気持ち悪い」

「気持ち悪くて当然だろうよ。俺はお前の憎悪、嫉妬、醜い欲求の塊なんだからな」

 雪見は動くことが出来なかった。身体はビリビリと痺れ、吐き気すら催す。立っているのも辛かったが、身体が言うことを利かないのだ。

「忠告したはずだ。腹を空かせたケルベロスを放っておくとどうなるか……」

「どういう……意味?」

「ケルベロスは本来、人を食う魔物。だがそれを、だけを食うように変えてやってたんだよ。この俺……つまり、お前の心が、だ」

「何を言ってるか分からない……気持ち悪くて吐きそう……」

「だが、魔力供給を絶たれたケルベロスは暴走する」

「魔力供給……? 何なの、それ」

「魔力供給は、お前が真の姿へ戻るために必要なのさ。だがお前はケルベロスを拒み続けた。空腹に耐えられなくなったケルベロスは、本来の、人を食う魔物に戻る」

 雪見は意識が朦朧としてきた。黒い塊の話も、ほとんど耳には入ってこない。

「気持ち悪い……。話が……長い……」

「ケルベロスはケルベロス・ダークへと進化し、人間を……。おい、大事な話をしているんだ。ちゃんと聞け」

「聞いてるから早く話して……」

「ケルベロスは人間を……もう話は終わりだ。話す気が失せた」

 雪見の態度は黒い塊の機嫌を損ねてしまった。黒い塊は霧となって消えていく。そして、雪見はすぐさまトイレに駆け込んだ。

 雪見は断片的に聞いていた黒い塊の話を思い出そうとしていた。魔力供給、そして、ケルベロスが人を食う。

 確かに、今までケルベロスによる死者は出ていなかった。ケルベロスと戦って怪我をした者たちも、大きな怪我ではなく、転んだりした程度の、軽い傷だけしか負っていない。

 ケルベロスは威嚇しかしていなかったのだ。人間を怖がらせ、その恐怖心だけを食う。魔力供給に必要な魔力は、ほんのわずかしか取れないが、長期的に見れば安全で、確実な方法だったのだ。しかし、それはもはや過去の話。ケルベロスは本来の、どう猛な姿に戻ってしまった。

 ケルベロス・ダークの誕生である──

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