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第三章 欲望顕現
第九十七話 躾けからの鬼畜計画
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本来の姿とは違うが、三種類の生物の融合体である魔物が完成した。
「……少し違いますが、誰か答えてみませんか?」
野次馬連中にクイズを出題してみたが、姿が変わっても王族であるため誰も何も言わない。
そんな中、貸し切りにいていた酒場の店主が手を挙げた。……この人、賭けの時もカーさんの誘いにも乗ってたよな。
「どうぞ」
「キマイラだ! そうだろ!?」
「――大正解です! こちら景品です!」
金貨を五枚入れた小さい巾着を、景品として店主に手渡した。金貨は一枚十万フリムだ。
賭け金とは別の臨時収入に喜び、サービスの料理をカーさんと狼兄弟の元に運んでいった。多分、答えるように勧めたんだろうな。
「頭の飾りは取れませんので悪しからず」
「――おいっ! 執務ができないだろうがっ!」
「頭に飾りがついただけです。五体満足なんだから問題ないはずです。さらに言えば、あなた方は現在敗者側に傾いているのですよ? つまりは奴隷予備軍です。奴隷が執務をするのですか?」
「――そ、それは……」
「あなたも参戦しますか? その場合はキマイラ二号を創ることになりますが……よろしいですか?」
迷っているうちに仕上げを行うことにしよう。
今までの会話は接着剤が乾くまでの時間稼ぎで、本番はこれからだ。
「じゃーんっ! 謎肉製調教鞭~!」
謎肉ジャーキーでお馴染みである蛙肉だ。
しかも舌ベロをそのまま使っている豪華な鞭である。
腐敗処理とか作るのに苦労した一品だ。
「……ま、まさか――! それはっ! やめるべきです!」
本当にやめて欲しいようで、語尾が敬語になっている。
「何故? 一つの武器を使うだけですよっと!」
女豹ポーズを取っている王子キマイラの尻を鞭で打った。
「んがぁぁぁぁあぁっぁぁーーー!!!」
「これから行うは、王子キマイラの調教ショーです! とくと御覧あれ!」
スキルを使う必要すら感じず、固定されている尻に鞭による連撃を喰らわせていく。
しかし、王子キマイラも馬鹿ではなかったようで、尻をくねらせて逃げようとしている。
「おぉぉぉーー! 尻の振り方が玄人のようではないですか! さすがですね、補佐官殿!」
「――だからぁぁぁ、違うと言っているッ!」
「咆えるな、咆えるな! 少し変化を加えてみようかなっ!」
鞭の先端が地面スレスレを這い、下から上に向かってすくい上げるように肉を打つ。
ただし、場所は尻のド真ん中だ。
「んんんーーーー!!!」
玉がなくなっても痛覚はある。
さぞかし痛かったことだろう。
「どうしますか? まだやります? 今降伏すれば悪いようにはしませんよ?」
「……本当か?」
「まぁ契約書の内容は履行してもらいますが」
「それじゃあ意味がないっ!」
「でも、納得してサインをしたのでしょ?」
「そ……それは……魔力契約だと思ったのだ!」
「では、負けたら破棄しようとしていたというわけですね? 破棄を前提とした魔力契約ですか……王族と高位貴族がやってしまったら拙いですよね? 今後、誰もまともに取引してくれなくなりますよ? 王太子候補としても終わりだし、国の信用を落としたとして処刑されることでしょう。素直に負けを認めた方が利口ですよ?」
「……可能にする身分があるのだ!」
「残念ですが……私との取引においては身分は関係ありません」
パンダ大精霊様の加護持ちだからな。
契約を重要視する商業において、契約の履行は絶対である。相手が誰であろうが、加護持ちへの一方的な契約不履行は大精霊様へ喧嘩を売ることと同義だと、カーさんが言っていた。
それにたとえ魔力契約だったとしても、《契約》スキル持ちである俺が作った契約書は、国家間の公的文書並みの重要文書となるらしい。
その重要文書の破棄は重罪で、身分ゴリ押しができるのは世界五大国の国王くらいらしい。それも代償を払って内容を変えるくらいが限界らしく、王族では役不足らしい。
つまり、彼らはすでに詰んでいる。
「身分が関係ない……? どういう意味だ?」
「《契約》スキル持ちなので」
「――っ!」
本日一番の驚愕顔である。
最初から契約した時点で、勝利以外の道がなかったことにようやく気づいたのだ。無理もない。
「……何が狙いだ?」
まぁここまで徹底的にはめられれば裏が気になるのも分かる。が、正直俺も契約でやらされているから答えることができない。
むしろ、俺もいい加減教えて欲しいと思っている。ただ、彼らに関してだけは分かるから教えてあげよう。
「全ては分かりませんが、少しなら分かりますので教えて差し上げましょう」
「……頼む」
「とある人物が魔導船を欲しがったからです」
「……何故だ?」
「商売をするのに必要だからですね」
「手続きを踏んで購入すればいいだろう!」
いや、俺に言われても……。
「【聖獣王国】以外に店を置く予定ですからね。ここで購入したら管理下に置かれるのでしょ?」
「どこの国も同じだっ!」
「都市国家群もですか?」
「――それはっ! だが、それはあの場所で造られた船だけだ! 【聖獣王国】で造られた船に関しては、他国籍で登録することはできない!」
「まぁそこは裏技があるみたいなので」
一応念話で確認を取っておこう。
『ねっ? タマさん?』
「まぁねー!」
よかった。ないとか言われなくて。
「はぁ!? あるわけないだろっ! だが、仮にあるとしよう! 魔導船を引き渡すから奴隷は見逃してほしい!」
まぁ俺はいいけどさ……。
『どうするんです?』
「ダメに決まってるでしょー! だって――」
『アーク! 助けてーーー!!!』
俺とタマさんの作戦会議を邪魔する者が決闘場に乱入してきた。
――愛しのラビくんを虐める存在が。
「おいっ! あんた何やってるんだ!? 放してやれよ!」
という野次馬の声でラビくんの状況を把握する。鞭をしまい、王子キマイラの長剣を拾い上げた。
――《閃駆》
――《刺突》
視線の先にいるラビくんを掴んだ獣人の喉元に向けて突きを放つ。
しかし、剣先がほんの少し刺さった場所で突きが止められた。
「――間に合った!」
「放せ」
ラビくんを掴んでいる者と、俺の手首を掴んでいるカーさんに向かって言った言葉だ。
多少殺気が漏れてしまい、周囲の人物を巻き込んでしまったかもしれないが、まだそこまでの被害を出していない……はず。
だが、このまま状況が好転しないのであれば更地にすることもやむなし。
「おいおい! オレはタマさんに頼まれたからだ! 文句ならタマさんに言ってくれ!」
と言いながら、左手でラビくんを無理矢理奪い、俺の胸に押しつけてきた。
『アーク! 怖かったよぉぉぉーーー!』
うぐっ……うぐっ……と嗚咽を漏らすラビくん。
「グルルルルゥゥゥゥーーー!!!」
と、机の下で唸るリムくん。
「おい、ネポス! リムくんの対処は終わったろ? こっちを手伝ってくれ!」
「ムリ」
「嘘つけ!」
どうやらリムくんも拘束されているようで、精霊化したネーさんがカーさんの応援要請を拒否していた。
カーさんが油断している間に追加でスキルを使おうと力を込める。
――《螺せ
「――させねぇよ?! それはダメだろ!」
チッ! 勘づかれたか……!
「ちょっと! アーク! ムカつくだろうけど、少しは話を聞きなさい!」
『……親分なら問答無用で首を飛ばすと思いますが?』
「あんたは親分じゃないでしょ!?」
『親分の意志を継ぐ者です』
「じゃあ、なおさらあたしの話を聞くべきよ! そのあと、コイツをどうするか決めればいいのよ!」
『……少しだけですよ』
「よしっ! その前にラビくん! 観光したくないかしら?」
『……うっぐ……うっぐ……観光……?』
「そうっ! 最初は【九天王国】も素通りの予定だったけど、嫌な想いを我慢した御褒美に観光なんてどう? 【九天王国】は魔術大国だから、屋台でも多くの魔具が使われているわよ? 衛生面も安心だし、美味しいものもあるはずよ!」
『騙されちゃダメだよ。御褒美じゃなくても観光すればいいんだからさ』
目的地に行った後に観光すればいいんだから、素通りする必要すらない。
時間制限がある目的地への用事が済めば、【迷宮都市】に急いで行く必要もないだろう。ゆえに、鬼畜天使の言葉に騙される必要はない。
「ラビくん! お馬鹿さんの言葉には惑わされないで!」
なんだと……!?
「おい! 魔力を放出するなよ! 被害が大きくなるだろ!?」
「まだ話の途中でしょ!? ったく! 話は最後まで聞きなさいよね!」
『じゃあ続きをっ! どうぞ!』
「はいはい。ラビくん、観光地に行く頃には光の大精霊が担当する勇者召喚が行われた後なのよ。今代の聖女は異世界人だから、恒例の称号も加護もまだ誰の手にも渡っていないのよ。しかも、主導国家は【光輝神国ヘリオス】なのよねー。……急ぐ必要があると思わないかしら?」
『えっぐ……急ぐ……必要ある……』
――え? 本当に? 誘導じゃなくて?
「でしょ!? そんな中、観光の時間を取るのよ? 御褒美でしょ?」
『えっぐ……うん……御褒美……』
「じゃあ御褒美に観光するってことでいいわよね!?」
『えっぐ……観光……する……』
「よしっ! そのためにも一緒に『親分の意志を継ぐ者』を説得しましょう! このクソ犬も計画に必要なのよ! 手伝ってくれるでしょ!?」
『えっぐ……手伝う……いや……』
「――何でよ!?」
『ラビくんが我慢するってだけで我慢して下さい。それで話は終わりですか? 剣を止められている今、魔術で仕留めようかなって思っていますが……よろしいですか?』
「ダメに決まってるでしょ! そもそも決闘で一番欲しかったものは補佐官よ! 船は目眩ましよ!」
『じゃあ大丈夫ですね。コイツは補佐官じゃないし!』
ローワンさんの話を聞いたときに思いついたんだろうけど、世界五大国の高位貴族を奴隷にしようとするとは……本当に鬼畜だな。
王子キマイラが可愛く見える。
「コイツはキマイラが担当する軍事面での補佐官よ。文武の補佐官のおかげで、クソ雑魚脳筋単細胞が多大な功績を残し、ここで遊んでても継承権レースから外れずに済んでいるのよ!」
『……まさかとは思いますけど、商会の人材にしようとしてます?』
「そうよー。あっちの文の方の補佐官が『アーサー商会』の商会長で、剣を突きつけてるコイツが護衛隊長よ!」
『……コイツはサインをしてないから無理ですよ』
「王子キマイラとトレードするに決まってるでしょ!? 王子を奴隷にするなんて家臣の恥よ。軍人として恥になるから、コイツは二つ返事で身代わりを承諾するわよ!」
……マジで鬼畜だな。
ラビくんもドン引きしてるせいで、いつの間にか泣き止んでいる。
『船の裏技は?』
「亡命」
『都市国家群は正確には国じゃないから無理ですよ? どこの都市に亡命するんですか?』
「……最終的にはって話よー!」
『……本当に? 何も考えてないのではなくて?』
「考えてるに決まってるじゃない! 彼らは沈没します! ラビナイト商会が拾います! 修理します! 【迷宮都市】で登録します! 彼らに貸し出します!」
……犯罪者の手口だ。
「王子キマイラは王都に戻るけど、あの格好だからねー! 廃嫡か幽閉かになるんじゃないかしらー。おかげで第二王子に子どもができるまでは、第三王子にもチャンスがあるってわけよ! 被害者は王子キマイラだけ!」
『ラビくんもですが?』
「そうね! でも我慢できるって言ってたから、あんたも殺したり再起不能にしたらダメだと思うわー! こんなに小さい子が頑張ってるんだもの! ねっ!」
……鬼畜天使がやってもモフモフ天使並みの威力は出せないよ?
『分かりました。脅すだけにしておきます』
「――はっ!? ちょっ!」
――《武威》
「……少し違いますが、誰か答えてみませんか?」
野次馬連中にクイズを出題してみたが、姿が変わっても王族であるため誰も何も言わない。
そんな中、貸し切りにいていた酒場の店主が手を挙げた。……この人、賭けの時もカーさんの誘いにも乗ってたよな。
「どうぞ」
「キマイラだ! そうだろ!?」
「――大正解です! こちら景品です!」
金貨を五枚入れた小さい巾着を、景品として店主に手渡した。金貨は一枚十万フリムだ。
賭け金とは別の臨時収入に喜び、サービスの料理をカーさんと狼兄弟の元に運んでいった。多分、答えるように勧めたんだろうな。
「頭の飾りは取れませんので悪しからず」
「――おいっ! 執務ができないだろうがっ!」
「頭に飾りがついただけです。五体満足なんだから問題ないはずです。さらに言えば、あなた方は現在敗者側に傾いているのですよ? つまりは奴隷予備軍です。奴隷が執務をするのですか?」
「――そ、それは……」
「あなたも参戦しますか? その場合はキマイラ二号を創ることになりますが……よろしいですか?」
迷っているうちに仕上げを行うことにしよう。
今までの会話は接着剤が乾くまでの時間稼ぎで、本番はこれからだ。
「じゃーんっ! 謎肉製調教鞭~!」
謎肉ジャーキーでお馴染みである蛙肉だ。
しかも舌ベロをそのまま使っている豪華な鞭である。
腐敗処理とか作るのに苦労した一品だ。
「……ま、まさか――! それはっ! やめるべきです!」
本当にやめて欲しいようで、語尾が敬語になっている。
「何故? 一つの武器を使うだけですよっと!」
女豹ポーズを取っている王子キマイラの尻を鞭で打った。
「んがぁぁぁぁあぁっぁぁーーー!!!」
「これから行うは、王子キマイラの調教ショーです! とくと御覧あれ!」
スキルを使う必要すら感じず、固定されている尻に鞭による連撃を喰らわせていく。
しかし、王子キマイラも馬鹿ではなかったようで、尻をくねらせて逃げようとしている。
「おぉぉぉーー! 尻の振り方が玄人のようではないですか! さすがですね、補佐官殿!」
「――だからぁぁぁ、違うと言っているッ!」
「咆えるな、咆えるな! 少し変化を加えてみようかなっ!」
鞭の先端が地面スレスレを這い、下から上に向かってすくい上げるように肉を打つ。
ただし、場所は尻のド真ん中だ。
「んんんーーーー!!!」
玉がなくなっても痛覚はある。
さぞかし痛かったことだろう。
「どうしますか? まだやります? 今降伏すれば悪いようにはしませんよ?」
「……本当か?」
「まぁ契約書の内容は履行してもらいますが」
「それじゃあ意味がないっ!」
「でも、納得してサインをしたのでしょ?」
「そ……それは……魔力契約だと思ったのだ!」
「では、負けたら破棄しようとしていたというわけですね? 破棄を前提とした魔力契約ですか……王族と高位貴族がやってしまったら拙いですよね? 今後、誰もまともに取引してくれなくなりますよ? 王太子候補としても終わりだし、国の信用を落としたとして処刑されることでしょう。素直に負けを認めた方が利口ですよ?」
「……可能にする身分があるのだ!」
「残念ですが……私との取引においては身分は関係ありません」
パンダ大精霊様の加護持ちだからな。
契約を重要視する商業において、契約の履行は絶対である。相手が誰であろうが、加護持ちへの一方的な契約不履行は大精霊様へ喧嘩を売ることと同義だと、カーさんが言っていた。
それにたとえ魔力契約だったとしても、《契約》スキル持ちである俺が作った契約書は、国家間の公的文書並みの重要文書となるらしい。
その重要文書の破棄は重罪で、身分ゴリ押しができるのは世界五大国の国王くらいらしい。それも代償を払って内容を変えるくらいが限界らしく、王族では役不足らしい。
つまり、彼らはすでに詰んでいる。
「身分が関係ない……? どういう意味だ?」
「《契約》スキル持ちなので」
「――っ!」
本日一番の驚愕顔である。
最初から契約した時点で、勝利以外の道がなかったことにようやく気づいたのだ。無理もない。
「……何が狙いだ?」
まぁここまで徹底的にはめられれば裏が気になるのも分かる。が、正直俺も契約でやらされているから答えることができない。
むしろ、俺もいい加減教えて欲しいと思っている。ただ、彼らに関してだけは分かるから教えてあげよう。
「全ては分かりませんが、少しなら分かりますので教えて差し上げましょう」
「……頼む」
「とある人物が魔導船を欲しがったからです」
「……何故だ?」
「商売をするのに必要だからですね」
「手続きを踏んで購入すればいいだろう!」
いや、俺に言われても……。
「【聖獣王国】以外に店を置く予定ですからね。ここで購入したら管理下に置かれるのでしょ?」
「どこの国も同じだっ!」
「都市国家群もですか?」
「――それはっ! だが、それはあの場所で造られた船だけだ! 【聖獣王国】で造られた船に関しては、他国籍で登録することはできない!」
「まぁそこは裏技があるみたいなので」
一応念話で確認を取っておこう。
『ねっ? タマさん?』
「まぁねー!」
よかった。ないとか言われなくて。
「はぁ!? あるわけないだろっ! だが、仮にあるとしよう! 魔導船を引き渡すから奴隷は見逃してほしい!」
まぁ俺はいいけどさ……。
『どうするんです?』
「ダメに決まってるでしょー! だって――」
『アーク! 助けてーーー!!!』
俺とタマさんの作戦会議を邪魔する者が決闘場に乱入してきた。
――愛しのラビくんを虐める存在が。
「おいっ! あんた何やってるんだ!? 放してやれよ!」
という野次馬の声でラビくんの状況を把握する。鞭をしまい、王子キマイラの長剣を拾い上げた。
――《閃駆》
――《刺突》
視線の先にいるラビくんを掴んだ獣人の喉元に向けて突きを放つ。
しかし、剣先がほんの少し刺さった場所で突きが止められた。
「――間に合った!」
「放せ」
ラビくんを掴んでいる者と、俺の手首を掴んでいるカーさんに向かって言った言葉だ。
多少殺気が漏れてしまい、周囲の人物を巻き込んでしまったかもしれないが、まだそこまでの被害を出していない……はず。
だが、このまま状況が好転しないのであれば更地にすることもやむなし。
「おいおい! オレはタマさんに頼まれたからだ! 文句ならタマさんに言ってくれ!」
と言いながら、左手でラビくんを無理矢理奪い、俺の胸に押しつけてきた。
『アーク! 怖かったよぉぉぉーーー!』
うぐっ……うぐっ……と嗚咽を漏らすラビくん。
「グルルルルゥゥゥゥーーー!!!」
と、机の下で唸るリムくん。
「おい、ネポス! リムくんの対処は終わったろ? こっちを手伝ってくれ!」
「ムリ」
「嘘つけ!」
どうやらリムくんも拘束されているようで、精霊化したネーさんがカーさんの応援要請を拒否していた。
カーさんが油断している間に追加でスキルを使おうと力を込める。
――《螺せ
「――させねぇよ?! それはダメだろ!」
チッ! 勘づかれたか……!
「ちょっと! アーク! ムカつくだろうけど、少しは話を聞きなさい!」
『……親分なら問答無用で首を飛ばすと思いますが?』
「あんたは親分じゃないでしょ!?」
『親分の意志を継ぐ者です』
「じゃあ、なおさらあたしの話を聞くべきよ! そのあと、コイツをどうするか決めればいいのよ!」
『……少しだけですよ』
「よしっ! その前にラビくん! 観光したくないかしら?」
『……うっぐ……うっぐ……観光……?』
「そうっ! 最初は【九天王国】も素通りの予定だったけど、嫌な想いを我慢した御褒美に観光なんてどう? 【九天王国】は魔術大国だから、屋台でも多くの魔具が使われているわよ? 衛生面も安心だし、美味しいものもあるはずよ!」
『騙されちゃダメだよ。御褒美じゃなくても観光すればいいんだからさ』
目的地に行った後に観光すればいいんだから、素通りする必要すらない。
時間制限がある目的地への用事が済めば、【迷宮都市】に急いで行く必要もないだろう。ゆえに、鬼畜天使の言葉に騙される必要はない。
「ラビくん! お馬鹿さんの言葉には惑わされないで!」
なんだと……!?
「おい! 魔力を放出するなよ! 被害が大きくなるだろ!?」
「まだ話の途中でしょ!? ったく! 話は最後まで聞きなさいよね!」
『じゃあ続きをっ! どうぞ!』
「はいはい。ラビくん、観光地に行く頃には光の大精霊が担当する勇者召喚が行われた後なのよ。今代の聖女は異世界人だから、恒例の称号も加護もまだ誰の手にも渡っていないのよ。しかも、主導国家は【光輝神国ヘリオス】なのよねー。……急ぐ必要があると思わないかしら?」
『えっぐ……急ぐ……必要ある……』
――え? 本当に? 誘導じゃなくて?
「でしょ!? そんな中、観光の時間を取るのよ? 御褒美でしょ?」
『えっぐ……うん……御褒美……』
「じゃあ御褒美に観光するってことでいいわよね!?」
『えっぐ……観光……する……』
「よしっ! そのためにも一緒に『親分の意志を継ぐ者』を説得しましょう! このクソ犬も計画に必要なのよ! 手伝ってくれるでしょ!?」
『えっぐ……手伝う……いや……』
「――何でよ!?」
『ラビくんが我慢するってだけで我慢して下さい。それで話は終わりですか? 剣を止められている今、魔術で仕留めようかなって思っていますが……よろしいですか?』
「ダメに決まってるでしょ! そもそも決闘で一番欲しかったものは補佐官よ! 船は目眩ましよ!」
『じゃあ大丈夫ですね。コイツは補佐官じゃないし!』
ローワンさんの話を聞いたときに思いついたんだろうけど、世界五大国の高位貴族を奴隷にしようとするとは……本当に鬼畜だな。
王子キマイラが可愛く見える。
「コイツはキマイラが担当する軍事面での補佐官よ。文武の補佐官のおかげで、クソ雑魚脳筋単細胞が多大な功績を残し、ここで遊んでても継承権レースから外れずに済んでいるのよ!」
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『……コイツはサインをしてないから無理ですよ』
「王子キマイラとトレードするに決まってるでしょ!? 王子を奴隷にするなんて家臣の恥よ。軍人として恥になるから、コイツは二つ返事で身代わりを承諾するわよ!」
……マジで鬼畜だな。
ラビくんもドン引きしてるせいで、いつの間にか泣き止んでいる。
『船の裏技は?』
「亡命」
『都市国家群は正確には国じゃないから無理ですよ? どこの都市に亡命するんですか?』
「……最終的にはって話よー!」
『……本当に? 何も考えてないのではなくて?』
「考えてるに決まってるじゃない! 彼らは沈没します! ラビナイト商会が拾います! 修理します! 【迷宮都市】で登録します! 彼らに貸し出します!」
……犯罪者の手口だ。
「王子キマイラは王都に戻るけど、あの格好だからねー! 廃嫡か幽閉かになるんじゃないかしらー。おかげで第二王子に子どもができるまでは、第三王子にもチャンスがあるってわけよ! 被害者は王子キマイラだけ!」
『ラビくんもですが?』
「そうね! でも我慢できるって言ってたから、あんたも殺したり再起不能にしたらダメだと思うわー! こんなに小さい子が頑張ってるんだもの! ねっ!」
……鬼畜天使がやってもモフモフ天使並みの威力は出せないよ?
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「――はっ!? ちょっ!」
――《武威》
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克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
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