166 / 256
幕間4
第153話 幕間・その4『アイの冒険・その4』
しおりを挟む※『楼蘭』周辺地図
さて、マスターから『霧越楼閣』の西方の調査と、地図の作成を命ぜられたワタクシ、アイです。
その上、ワタクシの下僕の三匹の魔物、『猿』『豚』『河童』を探し出し、連れ帰る……それも使命なのです。
そして、ようやく1匹目の『猿』のハヌマーンとその娘セイティーンを探し出し、仲間にしたのです。
旅の道連れは、ワタクシと、地図作成バイオロイドのマッパ・マッパー。
測量と地質調査の記録担当のバイオロイド、タダタカ。
上空からの立体測量担当の幽霊型ナノテクマシン、ピリー・レイス。
『猿』ことハヌマーンと、その娘セイティーンです。
そして、ワタクシたちの行路と合わせ、はるか上空の人工衛星『マゼラン』が常に位置を把握し、情報を送受信する仕組みになっている。
ワタクシたち一行は『豚』のかすかな痕跡をたどり、戦闘民族サラマンダーの国『火竜連邦』へやってまいりました。
サラマンダー、火竜種族はとにかく好戦的で、戦士としての誇りが何より大切という思想もあり、それぞれが帝を名乗り、皇王を名乗っているのだ。
その中の皇帝のひとり、東の木帝である伏義(ふっき)・太皞(たいこう)皇帝の支配するヴォウルカシャの森にその『豚』の痕跡がかすかに測定できたのだ。
アイたち一行は、ヴォウルカシャの森の中に『烏斯蔵(うしぞう)』という街に到着した。
「さて、ここで反応が強く現れていますが、どこにいるのでしょう?」
「アイ様の加護を頂いているワシのように身体が死ぬわけもありませぬからな。どこぞで身動きできなくなっていると思われますな。」
「父ちゃんみたいにか?」
「そうよ。セイティーン。それにあの『豚』には検知機能を搭載したGPSマーカーを持たせていたはずですが、それに反応しないということは……。」
「ああ。父ちゃんの頭の輪の『緊箍児(きんこじ)』みたいにか!」
「ヂュ・バージェ(猪八戒)のヤツめがアイ様の呼びかけに応じぬはずはありえませんからなぁ。」
一行が街の中を探索する。
街にはたくさんの店があり、多くの店に火蜥蜴のレリーフが置かれている。
街一面に広がるかわら屋根の瓦は、この付近の土を利用して造られたもので、黒と白い粒子が混じったような、グレーがかった色をしている。
街の全景を見下ろせば、瓦の海とも思える光景が眼下に広がっていた。
街を行く人々の服装は、中華風の格好で、種族はほとんどがサラマンダーである。
アイたちの姿は珍しいらしく、じろじろと見られる。
街の中をみんなで見て回ったが、なかなかヂュ・バージェの姿は見つけられなかった。
「父ちゃん……。おなか空いたよ。」
「ん……? ああ、そうだなぁ。アイ様。すみませぬが何か食事を取りたいと思いますが……。」
「そうですね。では、あの『高老荘』という中華飯店に入りますか?」
「そいつはキテマスねー! 美味そうですねー! ひゃっはっはー!」
「よろしゅうございますな。」
「わたくしめも……。異論ございません。」
地図作成班員のマッド・マッパー、タダタカ、ピリー・レイスも賛同する。
「お客さん! 『高老荘』へ、いらっしゃいアルよ!」
奥に厨房があり、そこをお店の大将っぽい火蜥蜴が料理をしている。
出迎えたのは娘のようだ。
「なにがオススメなのです?」
「ええ。うちの看板料理は最高の『チャーシュー』アルね!」
「なら、それを5人分もらおうかしら?」
「へい! まいどありアル! 爸爸(パーパ)! 『チャーシュー』5個ね!」
「あいよっ!!」
待っている間、他の火蜥蜴の客たちの話し声が聞こえてくる。
「いやぁ。ここの大将・高太公(こうたいこう)の『チャーシュー』は最高だな。」
「看板娘の高翠蘭(こうすいらん)ちゃんの笑顔がたまんないよなぁ!」
「だな!」
「しかし、繁盛してるなぁ。この店は。」
「ああ。なんでも肉を取っても取っても回復する魔法の豚を手に入れたようだぞ。」
「へぇ! あの『皇国』のセーフリームニルみたいだな。」
「アイ様。どうやら評判の良い店のようですな。」
「そのようね。セーフリームニルって豚は有名なの?」
「あたしも聞いたことあるよ。『皇国』のその肉はアンドフリームニルという料理人が作る料理らしいね!」
そんな話をしていると、店の娘が料理を運んできた。
「はい! 『チャーシュー』5人前、お待たせアルよ!」
「おお。来た来た。」
「うわぁ! 美味しそう!」
みんながはしゃいでる中、アイだけが少し黙ってその『チャーシュー』を観察していた。
「この……、『チャーシュー』から、『豚』の痕跡を感知したわ!」
「え? アイ様。そりゃそうですよー。『チャーシュー』って焼き豚なんですからぁ~!」
「セイティーン。そういう意味ではないわ。」
「アイ様。それは……。ヂュ・バージェのことですか?」
「そう……。この『チャーシュー』はヂュ・バージェの肉が使われている!」
「「ええぇ!?」」
一同はその後、一口も手を付けずに、黙ってしまった。
「ちょっと! そこの娘!」
「あ、はーい! 何アルか? お客さん。」
店の娘がやってきた。
「この『チャーシュー』の素材は何を使っているのかしら?」
「え? ああ。昔、父が捕まえたハイオークの肉アルよ!」
「そのオークって……、どこにいるの?」
すると店の厨房から大将が叫ぶ。
「おいおい! お客さん! それは企業秘密アル! 翠蘭(すいらん)! しゃべるなアル!」
「わかったアル!」
「商売の邪魔だ、帰った帰った!」
そう言って、店を追い出されるアイたち。
外に出されたアイたちだが、アイはすぐにハヌマーンに指示を出した。
「この店を調べなさい! 『豚』を捕まえて飼育していると推測されます!」
「了解しました!」
店の裏の倉庫のような建物に調査に忍び込んだハヌマーン。
その奥に鎖でぐるぐる巻にされて捕らわれた豚が一匹いた。
「おお! ヂュ・バージェじゃあないか!? 大丈夫か!?」
「あ……、ああ……? あんさんはハヌマーンの兄貴じゃあないか!? 懐かしい……。」
「いったいどうしたのだ? お主もアイ様に授かった魔道具を持っておったろう!?」
「それが……、あの真珠を取られてしまったんじゃ……。ここの主人の高大公のヤツめに……。」
「そうだったのか……。とにかく、ここから出してやろう!」
「おっと! そうはいかねぇぜ! やっぱりこの盗人たちめ! 来ると思ったぜ!?」
振り返るとそこにいたのは高大公とその手下たちだった。
「しまった……! 見つかったか……。」
取り囲まれたハヌマーンとヂュ・バージェ。
だが、そこに宙空からアイがふわりと降りてきたのだ。
「ワタクシの下僕によくぞ手を出したわね?」
そう言って、アイが周囲の超ナノテクマシンに命令を下した。
「死になさい!」
ドッバァアアーー……ン
一瞬にして、周囲の火蜥蜴たちは血という血を吹き出して倒れたのだ。
その様子は赤い噴水が乱れて噴出したような、ある種の美しささえあった……。
「超ナノテクマシンによる内部からの破壊……『爆刹那』……。せめて美しく散りなさい……。」
「おお……。淡島様。お久しゅうございます……。」
「ふむ。ワタクシの授けた真珠を取られたというのね?」
「は……。死よりも恥ずかしい恥辱です。」
「まあよいわ。それに……、真珠はおまえに似合わないかもね……。『豚』に真珠って言うものね。」
「そいつは聞いたことありませんが、手に余るほどの魔法具であったかと存じあげます。」
「じゃあ、新しくこのセコ・王虫(おうむ)の『骨』を渡しておくわ。」
「感謝します!」
「豚を盗んで骨を施す……とは、このことかしらね?」
「は……、はぁ。」
こうして、アイは二匹目の魔物『豚』を探し出し、配下に加えたのだった。
ところで、『チャーシュー』の素材を盗まれ、店主がいなくなった『高老荘』は娘の高翠蘭があとを継ぎ、いかがわしいお店とリニューアルされ、人気店となったそうなのですが、それはまた別のお話……。
~続く~
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
