203 / 256
吸血鬼殲滅戦・離
第188話 吸血鬼殲滅戦・離『最凶のワールドボス』
しおりを挟む人々は震えた。
この世が終わるかもしれないと……。
なにせ、勇者クー・フーリンや、アテナの一撃でも倒せず、さらなる成長を遂げていく恐ろしい怪物が空に悠然と身構えていたからだ。
その気になれば、『チチェン・イッツァ』の街など、あっという間に飲み込まれてしまうだろう。
それが行われないのは、他ならぬその勇者やアテナたちが、気を引いているからなのだ。
願うしかなかった。
勇者と聖女騎士の勝利を……。
人々にできることは、祈ることしかなかったのだ。
『餓者髑髏』の今までにも現れたことのない『ズメイ・ゴルイニチ・エンペラー型』が、その多頭の首の内、3つ首が分裂していく!
そして、3つ首の『餓者髑髏』と、9つ首の『餓者髑髏』に分かれた。
「行けぃ……! 我が分身んんんんーーーっ! 三つ首の『チュドー=ユドー』よ! 喰らえ喰らえ喰らえ!!」
「ぎぃっ!」
『チュドー=ユドー』と呼ばれた分裂体が、空から舞い降りてこようとしたのだ。
だが、それだけではなかったのだ。
また『ズメイ・ゴルイニチ・エンペラー型』の多頭の内、2つ首が分かれ、竜人の姿へと変貌していく。
双頭から生まれた竜人は、やはり恐ろしいほどの魔力に満ち満ちていた。
「行けぃ……! 我が子・龍骨騎士よぉぉおおおーーーっ! 『トゥガーリン・ズメエヴィチ』よ! 奴らをすべて滅せ滅せ滅せよ!!」
「承った!」
そうして、この双頭の竜人も空から舞い降りてきたのだ!
さらに、『ズメイ・ゴルイニチ・エンペラー型』は残った7つの首の内、1つの首を切り離した……。
そして、その首は無数の蛇に変わっていく。
うじゃうじゃと数え切れないほどの恐らくは猛毒を持っているであろう、毒々しい色の無数の蛇に分かれ、空から降ってきたのだ。
「行けぃ……! 我が手下『ツモク』どもよ! 奴らをすべて呪え呪え呪え呪えぃーーーーっ!!」
無数の毒蛇『ツモク』たちは、まるで、雨あられのごとく、空から降り注いできたのだった。
6つ首になったとはいえ、一向にその魔力と呪詛が衰えた様子が見えない『ズメイ・ゴルイニチ・エンペラー』は、空からその多頭の首ひとつひとつから、青い光を輝かせはじめた。
まさか……!?
あれは、青ひげ男爵の使っていたあの魔法か!?
(マスター! 『青い眼の人形』でございます!)
(ああ。覚えていたよ? もちろん、名前を言うのがちょっと面倒だっただけだよ?)
と、そんな言い訳をしている場合ではない。
すると、『ズメイ・ゴルイニチ・エンペラー』が、時間を早めたかのように呪文を詠唱した。
『青い眼をしたお人形は、アメリカ生まれのセルロイド。日本の港に着いたとき、一杯涙を浮かべてた。私は言葉が分からない、迷子になったら何としょう! 優しい日本の嬢ちゃんよ! 仲良く遊んでやっとくれ! 仲良く遊んでやっとくれ!』
ヤツの首ひとつひとつの口が青く激しくまばゆいくらいに輝いた!
次の瞬間、『ズメイ・ゴルイニチ・エンペラー』の眼から青いレーザー光線のようなものが乱反射された!
周囲に展開していた『ククルカンの蜥蜴軍』の兵士の魔法の防護壁をも貫き、たくさんの兵士たちが殺されたのだ。
幸い、オレたちは一度経験しているので、かわすことに成功していた。
アテナさんたちは、その名高い『アイギスの盾』で完全に防御していたし、クー・フーリンさんたちもその魔力障壁で耐え抜いたようだ。
「な……!? 『青い眼の人形』の呪文だと!?」
「過去の『餓者髑髏』の例でも、あんな呪文を使うという凡例はありません!」
「いったい、どういうことだ!? 今回の『餓者髑髏』のこの異常さは……!?」
はい。それ、アイのせいです。
いや、オレたちのせいか……。
みなさん、ごめんなさぁーい!
オレは心のなかで謝るのだった。
(マスター! ご安心を! マスターをもし責めたてる者がいればワタクシがその者の息の根を止めて差し上げますわ!)
(いや……。アイ……。それだけはやめてくれ……。)
(おお! マスターはなんとお優しい! マスターにはワタクシがずっとずっとお味方ですから安心してくださいね!)
(お……、おぅ……。)
アイはアイで、オレのことを全力で思ってくれているのはわかるんだけどなぁ……。
『餓者髑髏』の分体のひとつ三つ首の『チュドー=ユドー』が地上に下り立ってきた。
さきほど六つ首の『餓者髑髏・山御子龍(ズメイ・ゴルイニチ)型』にもひるまなかったアテナさんのパーティーが『チチェン・イッツァ』の街を守ろうとその正面に立ちふさがった。
「ぎぃいいやぁああああーーーーうううぉーーーおおおっ!!」
『チュドー・ユドー』がけたたましい叫び声をあげた。
やはり進化した『ズメイ・ゴルイニチ・エンペラー』から生み出された分体だ。
三つ首といえども、さきほどの『山御子龍型』にもひけをとらない魔力と呪詛を撒き散らしている。
「アテナ様! お気をつけを! さきほどの六つ首と同様……、いえ、それ以上の魔力を秘めております!」
エリクトニオスさんがアテナさんに忠告する。
「承知している! だが、思い出せ! 私たちはすべての民の『法』の守護者なのだ!」
「は! 出過ぎた忠告でございました。」
「しかし、アテナ様。エリクトニオスの言葉もあながち的を射ておりますぞい。さっきのヤツでさえ、我らの連携技で仕留めそこねたのだ。しかも……、あの上空にこれらのさらに上位種がひかえておりますゆえ……。」
「うむ。グラウコーピス。もっともな意見だな。さきほどの連携技だけでは上空の『エンペラー』はおろか、この『チュドー・ユドー』でさえ、食い止めるのが精一杯であろうな……。」
「アテナ様! ファイトですわ! ニーケはアテナ様を信じています!」
「ああ! ニーケ。君にはいつも励まされる。感謝する!」
『法国』の防衛の要、防衛大臣を務める彼女は、知恵、芸術、工芸、戦略を司る者なのだ。
「行くぞ! エリクトニオス! グラウコーピス! 援護をニーケ! 頼んだぞ!」
「このグラウコーピス! かしこまりましたそ!」
「わかりましたよ! いっつも私が嫌な役目を引き受けるんですからね!」
「アテナ様! 後衛はおまかせを!」
エリクトニオスとグラウコーピスがそれぞれアテナとともに前に出る。
****
さて、もう一匹の竜人の龍骨騎士『トゥガーリン・ズメエヴィチ』が、地上に下り立った。
そして、その前にはクー・フーリン率いるSランク冒険者パーティー『クランの猛犬』が立ちふさがった。
「アテナ様たちは、あの『チュドー・ユドー』を引き受けてくださった。我らでこの『トゥガーリン・ズメエヴィチ』を仕留めるぞ!」
「あたしもさっきよりもっと強力な必殺技を食らわせてやるわ!」
「スカアハ師匠に無茶はさせられませぬ。このフェルディアも出し惜しみなくやらせていただきます!」
「おお。いいのぉ! その心意気じゃ! 若者よ!」
「オイフェ母様ぁ……。援護の魔法、頼みましたよ!?」
「こら! コンラ! おまえ、いつから偉そうな口を聞くようになったんだい! まだまだひよっこの分際で!」
「あああああーー! はいはい。わっかりましたよ。僕も精一杯やしますって!」
****
二体の分体それぞれをアテナさん、クー・フーリンさんたちが受け持ってくれるようだ。
だが、まだ上空にその大ボス『ズメイ・ゴルイニチ・エンペラー』がいる上に、無数の生み出された蛇『ツモク』の大群が『チチェン・イッツァ』の街へ襲いかかっていたのだ。
危機はいまだ変わらない。
いや、もっと悪い状況下に陥っている。
『チチェン・イッツァ』の防衛軍、ククルカンさん、なんとか耐えてください!
オレはそう願うしかなかったのだったー。
~続く~
©「青い眼の人形」(曲/本居長世 詞/野口雨情)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
