208 / 256
吸血鬼殲滅戦・乃
第193話 吸血鬼殲滅戦・乃『アテナ対チュドー・ユドー』
しおりを挟むさて、オレたちが『ズメイ・ゴルイニチ・エンペラー』本体とともに、『異界の穴』から異空間へ消え去った後-。
残された世界では、ヤツの残した分身体、三頭竜の『チュドー=ユドー』、龍骨騎士『トゥガーリン・ズメエヴィチ』、無数の生み出された毒蛇『ツモク』の大群との戦いが続いていた。
アテナの忠実なる使徒『ミネルヴァ騎士団』の騎士の中でも、影の『聖なる工芸の九柱神(ミューゼス)』の一人、髪に黄金のリボンをつけた美しい女性・エウテルペーが、フルートを持ち、抒情詩・レベル6の空間魔法、敵に不利な天候に変更する天候呪文『ドニェープルの嵐』を唱えたため、太陽が姿を現し、まさにすこぶる快晴の天候と変わっていた。
闇の眷属どもが、最も嫌う陽光がさんさんと輝き、アテナさんたちを祝福しているかのようだった。
『餓者髑髏』の分体のひとつ三つの首を持つ『チュドー=ユドー』は、多頭の竜で、ロシア民話の異本などに登場する。
『チュドー=ユドー』は、本来は水棲の竜であり、異なる個体は異なる数の頭を持っていたという。
人間のように馬にまたがるという描写もされる。
ただし、ある解説によれば、『チュドー=ユドー』とは特別な種類の竜の名称などではなく、単に「怪物」を意味する「チュドーヴィシチェ」(чудовище)と同じとみなすべきで、「ユドー」という語尾は、ただ脚韻を踏むためのみに追加された語根だというのだ。
アファナーシェフの昔話集の『灰かぶりのイワン』では、主人公が三頭と六頭のズメイ、およびその妻と娘たちを倒したのだが、その類話部分をもつ第137話『牛の子イワン』では、六頭、九頭、十二頭の『チュドー=ユドー』を倒す(これがズメイであると原文には明記されないが、ドラゴンの一種であるとの解説されている)。
この世界でもその昔、伝説の雌牛の息子、超英雄族の『嵐の勇者』イワンが、退治したという『チュドー=ユドー』はズメイの竜であると明言されており、『嵐の勇者』は、アプスー(淡水の海)から出現した六頭、九頭、十二頭の『チュドー=ユドー』と対峙したという。
このとき『嵐の勇者』イワンは魔法剣『クラデニェッツ剣』を携え、竜を攻撃する武器として棍棒(メイス)と合わせて使用したと伝えられている。
『チュドー=ユドー』は、例え斬首されても非常に回復力が強く、頭部を元の場所に戻して火炎の指でなぞれば元通りにつながることが一編の昔話に描かれており、その治癒能力は頭部が再生するギリシア神話のヒュドラーを彷彿とさせる。
「この世に終焉をもたらすために我は生み出された……。偉大なる『ズメイ・ゴルイニチ』の名のもとに……。」
『チュドー・ユドー』は、そこに意思を持っていた。
世界を滅ぼさんとする邪悪なる破壊の意思ではあるが……。
アテナは、もちろん、ひるむはずもなく、ニーケに声をかけた。
「ニーケ! 今いち度、『歓喜の歌』を頼む! エリクトニオス! グラウコーピス! ヤツの注意を引いてくれ!」
アテナは再び、最大の一撃をぶつけるつもりらしい。
後方に下がっていたニーケが呪文を詠唱し始める。
「アテナ様! わっかりましたー! では重ねがけで……、上級バフ(全味方の精神・魔力・肉体強化)呪文! 『歓喜の歌』! みんなに届けっ!」
『おお友よ、このような旋律ではない! もっと心地よいものを歌おうではないか! もっと喜びに満ち溢れるものを! 歓喜よ、神々の麗しき霊感よ。天上楽園の乙女よ。我々は火のように酔いしれて、崇高なる者(歓喜)よ、汝の聖所に入る!』
ニーケの身体から発せられた光が、上空へ立ち昇り、アテナさんに優しい慈愛に満ちた光のシャワーが降り注いだ。
「よし! 聖魔力・増幅に取り掛かる! エリクトニオス! グラウコーピス!」
アテナは二人の従者に声をかけた。
エリクトニオスがさらに呪文を唱え始める。
それはレベル6の光魔法『聖者の行進』だった。
闇を払う魔法で、闇の呪文の効果を打ち消す効果があるのだ。
『Oh when the saints,Go marchin' in,Oh when the saints go marchin' in.I want to be in that number,
when the saints go marchin' in.』
その間にグラウコーピスが前へ突撃していく。
グラウコーピスの恐るべき剣戟が、『チュドー・ユドー』の三つの首のうち、1つの首をあっという間に切り飛ばしはねたのだ!
だが、それを意に介さず、『チュドー・ユドー』が呪文を唱えて反撃してきた。
『草原に響きわたる黒き同胞たちの哀歌、マネツグミたちは楽しく、戻らぬ日々を歌う。ツタの生い茂る草葉の陰の墳丘に、あの優しかった主人は眠る…。冷たい、冷たい土の中に!』
それは闇の魔法レベル5の即死呪文『主人は冷たい土の中に』だった!
恐るべし『死』の呪詛の塊が真なる闇の塊となって、グラウコーピスを包み込んだ。
だが、さきほどのエリクトニオスの光魔法のおかげで、一瞬、その魂を持っていかれそうになったグラウコーピスはそこで、耐えていた。
だが、その呪詛はぐるぐると行き場のなくなった呪いとして、いつでもグラウコーピスに襲いかからんとグラウコーピスの周囲を取り巻いていた。
すると、そこへアテナが『アイギスの盾』を前にかざし、グラウコーピスの前へ一瞬で飛び出し、盾となった。
恐ろしき闇の呪文の即死効果を遮ったのだ!
さらに、魔力を『アイギスの盾』に込めた!
『千歳(ちとせ)の岩よ、わが身を囲め、さかれし脇(わき)の血しおと水に罪もけがれも洗いきよめよ!』
魔力を込めると、自動的に石化呪文『千歳の岩よ』と同等の効力を発する特別な盾なのだ!
二つ首となった『チュドー・ユドー』の動きが止まり、一瞬で石化して固まった。
先刻の『ズメイ・ゴルイニチ』との戦いのときと同様に、怪物は身動きができなくなっていたのだ。
アテナは自身の持つ『黄金の雷光の槍』に、周りにオーラがほとばしるほどの雷光が走らせながら、魔力を凄まじいほどに集中させていく……。
アテナが槍を一点に向かって光速で突き貫いた!
「本日二度目だっ! メイルシュトローム・コンセントレーションッ!!」
その膨大に込められた魔力の大渦が一点に集中していき、『チュドー・ユドー』の石化した魂魄……『餓鬼魂』を打ち砕いたのだ!!
ドッパァアーーーァアアアーーーーーッンン……
『餓鬼魂』が瞬間的に、飛散し、四方へ飛び散ったのだ……。
そして……。
今度こそ、『チュドー・ユドー』は灰燼と化し、二度と再生する気配を見せることはなかった。
やはり分身体と本体は違うのであろう。
分体の『チュドー・ユドー』には、本体ほどの再生能力はなかったようだ。
魂魄に集積された呪詛の量が違うのだから、当然の帰結と言える。
「アテナ様ぁーー! やりましたね!」
ニーケがアテナの元へ駆け寄ってきた。
「アテナ様。この我をお守りくださり、感謝いたしますぞ。」
グラウコーピスがアテナに礼を述べた。
「何を言っている? グラウコーピス。卿は私の家族も同然であろう? 礼などいらぬ!」
「アテナ様……。ありがたきお言葉……。」
「はぁーあ。グラウコーピスさんってば。私の魔法でもあなたを守ったんですけどねぇ……。」
エリクトニオスが軽口を叩く。
「まあ……。そなたは役目を果たしたに過ぎないのでございます。」
「なぁんだよ……? ま、いいけどね?」
エリクトニオスとグラウコーピスがそんなことを言い合っているところへ、アテナの一喝が入った。
「卿ら! まだ戦いは終わっていないのだぞ!? あっちではクー・フーリン殿が龍骨騎士『トゥガーリン・ズメエヴィチ』と対峙しているし、無数の生み出された毒蛇『ツモク』の大群との戦いはまだ続いているのだからな! 気を抜くでないぞ!」
「「かしこまりました!」」
その同時刻、竜人の龍骨騎士『トゥガーリン・ズメエヴィチ』の前に立ちふさがった、クー・フーリン率いるSランク冒険者パーティー『クランの猛犬』との攻防が始まっていたのであった-。
~続く~
©「聖者の行進」(曲/アメリカ民謡 詞/アメリカ民謡)
©「歓喜の歌」ベートーヴェンの交響曲第9番の第4楽章で歌われ、演奏される第一主題(作曲:ベートーヴェン/作詞:シラーの詩作品「自由賛歌」、最初の3行のみベートーヴェン)
©「主人は冷たい土の中に」(曲/フォスター 詞/フォスター)
©「千歳の岩よ」(曲:ヘイスティングス/詞:作詞者不詳)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
