216 / 256
吸血鬼殲滅戦・怒
第201話 吸血鬼殲滅戦・怒『いっときの休息』
しおりを挟む自宅である『霧越楼閣』、オレは医療ルームを出る。
部屋の外には、医療用ロボットメイドのメンテ・ナースと医療用バイオロイドのドクドク・ドクターが立っていた。
「ジンサマ。オゲンキニナラレテ、ナニヨリデス。」
「ジン様。お目覚めになられましたな。何よりでございます。」
「ああ。ふたりとも。ありがとうな。ずっと診ていてくれたのか?」
「はい。もちろんです。」
「ご苦労だったな。休んでていいぞ?」
「はい! ありがたきお言葉。」
「ハイ。リョウカイイタシマシタ。」
そして、2階にあるコントロールルームへ向かった。
まるで正月朝の元旦にパンツを履き替えた爽やかな気分で……いや、すべてを言うまでもない。
とにかく、スッキリした気分で、部屋に向かったんだ。
「あ! ジン様! お目覚めですかい? ……っと、アイ様もご機嫌麗しゅう……! へへへ。」
コントロールルームの部屋の隅にいたのはデモ子だった。
「あれ? アイ!? いつのまに後ろに!? 起こさないようにしたのに!」
「マスター! お忘れですか? この身体は常にホストコンピューターと同期しています。マスターがお目覚めになれば自動で目覚めますからね?」
「あ。そうだった! でも……、そのネグリジェのような薄着のままっていうのは……ちょっと、目の得……、いや目の毒だからさ? 着替えて来なよ?」
「イエス! マスター! では少し席を外しますね。デモ子! マスターに粗相の無いようにね!?」
「あいあい! わかってまっさー!」
アイが部屋の外に出た後、デモ子が薄気味悪くニタニタと笑ってこちらを見ている。
「なんだよ?」
「あ、いえいえ。……そういえば! ジン様ってアイ様もあたしも犠牲にしようとされなかったですよね? いったい、どうしてそんなふうに優しいのですか? あたしのいた異世界や、今のこの残された『ロスト・ワールド』では、情けは無用、油断したら殺られる世界ですよ?」
「ふむ。改めて聞かれるとなぁ……。なんとも言えないが、オレのいた世界では当たり前だったんだよ。人の命はみな平等、人は生まれながらにして生きる権利を持っている……とね。」
「そうなんですか!? そいつはえらく平和な世界だったんですねぇ……。」
「いや。そんなこともなかったよ。戦争だってあったし、世界は不平等でもあった。……だけど、基本的にはみんな平和を望んでいたと思うし、他人には優しくありたいと願っていたと思うんだ。そして、オレもそんな平凡な考えを持った一人だったってわけだよ。」
「ああ! あたしはジン様に一生ついていきます! もちろんアイ様に服従しているというからだけではありません! 今、心底! ジン様に感服しましたのですぜ!」
「お……、おぉ……。」
デモ子……。その見た目は気持ち悪いけど、なんだか憎めないやつだな。
アイもこういうところが気にいったのかなぁ。
すると、部屋の扉が開いて、ズッキーニャが入ってきた。
「ジン兄さぁああーーーん!!」
「おお!? ズッキーニャ! 元気にしてたかい?」
「もぉ! お帰りになるなら、知らせてくださぁい!!」
「ああ、ごめんごめん。急に帰ってくることになったんだよ。」
「ちゃぁんと、勉強してるかい?」
「うん! もちろん! モルジアーナ先生がいろいろ教えてくれるんだよ!? あのね? わたし……、『魔法』使えるようになったよ!?」
「おお! それはすごい! やっぱりズッキーニャも妖精さんなんだね。オレには『魔法』は使えないからなぁ……。」
「ええ!? そうなの? でも……、ジン様はもっとすごいことができるのよ! そっちのほうがすごいもん!」
「ははは! ありがと!」
ズッキーニャの後ろにいる亡霊のサタン・レイスも嬉しそうに微笑んでいるが、それが見えているのはオレとアイ、デモ子だけのようだ。
そんなふうにズッキーニャと話しているところ、部屋に入ってきた者たちがいた。
「ああ!? ジン……、さんじゃないの!? アイさんも!」
「ホントだ! ジン様! お久しぶりです! アイ様! ご無沙汰してます!」
妖精種族の王女・ベッキーとその仲間のパックだ。
「これはこれは。お久しぶりですね。パックさんにベッキーさん。」
「お……、おぉ! そっか。そういえば、ウチにいそうろうしてるんだったっけ? ベッキーとパック……。元気してた?」
「ま、まぁね! そういえばさ、あんた! 今までどこ行ってたの?」
「ああ。クエストでさ、『チチェン・イッツァ』の街まで行ってたんだ。」
「へぇ……。そういえば、パパからメッセージが来てたわ。なんだか戦争になるみたいよ? あなたも気をつけなさいよ!?」
「お……おぉ……。つか、その子、誰?」
オレはベッキーとパックの後ろに隠れるようにしている妖精種族のものを見つけた。
「あ……! ぼ……、僕は、ジム・キャノンと言います。パックに助けられて、今は一緒にいます。」
「ああ!? 君がジムかい? 聞いているよ。ゆっくりして行ってね?」
「ジン様! ヒルコ様がおいらを助けてくれたんです! ジン様のご命令と聞きました! ありがとうございました!」
パックもすかさずお礼を言ってきた。
「いや……。それはベッキーに頼まれたからだよ。礼ならベッキーに言ってね。 なあ? ベッキー?」
「そそそ……。そうだったっけ……? まあ、もう忘れたかしら?」
「ええ!? いやいや! ほら! あんなに真剣な表情で……、それに泣いていたじゃあないか?」
「じじじ……! ジン!? ちょっと! こっち来てちょうだい!」
「え? どうした?」
ベッキーが顔を真赤にして、オレの手を掴んで、部屋の隅に連れて行く。
「いいかしら? パックを救うようにたしかに頼んだけど……。そんなに強調しなくていいのよ?」
「どうしてだよ? あんなに心配してたじゃあないか?」
(マスター! ベッキーはパックのことが好きなので照れているのでしょう。)
(あ……!? なるほどぉ……。そういうことか? そっかそっかぁ!)
「ですから……。そこにはもう触れなくっていいのよ? わかった? ジン?」
「はいはい。そういうことね? わかったよ。ベッキー! 頑張れよ!?」
オレはベッキーに向かって、グッドポーズをした。
「なんのしぐさかしら? 全然わからないけど、まあ、わかってくれたようね……。」
ベッキーはポーズの意味はわからなかったようだが、安心したようだ。
「ジン様! ベッキーお嬢様をお世話していただき、感謝いたします!」
「ジン様。本当にいろいろお世話になっています!」
そう言って、ベッキーの後ろに控えていた二人、黒騎士エレオーレス・デュラハンと湖の婦人マダム・レイク・ヴィヴィアンが挨拶してきた。
かと、思ったら、その爺やのほうの首が地面に、ポトリ! ……って落ちたんだ!
ポトリ……
「うおっ!? びっくりしたぁっ!?」
「おっと……。これまた失礼……。」
相変わらず、デュラハンのエレオーレスさんの首は落ちやすいらしい……。
「それで、もうクエストは終わったのかしら?」
ベッキーがそう質問してきたのだ。
「ああ。クエストはね……。終わったんだけどな。」
「あら? まだ何か用があるの?」
「ああ。そうなんだ。やり残したことがあるからね? またすぐに戻らないといけない。」
「ええ? ジン兄ちゃん! また出かけちゃうの!?」
「うん。ごめんね? ズッキーニャ。オレにはまだしなければいけないことがあるんだよ?」
オレは思った。
吸血鬼種族にも、もちろん言い分があるのかもしれない。
オレの元いた世界でも、相手にも相手の理由や都合があるんだってことは十分知っている……。
だが……!
他人を平気で殺そうとするヤツラは……。
その反対に『自分たちが殺される』ということも、受け入れなければいけない。
自分勝手に生きるものは、その報いが来たとしても……。
甘んじて受けなければいけない。
オレの大事な仲間や、アイを犠牲にしてくれたんだ……。
しかるべき報いを喰らわせてやる!
オレはそう思う……。
~続く~
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
