【読者への挑戦状あり!】化け物殺人事件~人狼伝説・狼の哭く夜~

あっちゅまん

文字の大きさ
10 / 62
第1日目

第5話 到着1日目・昼その5

しおりを挟む



 この『或雪山山荘』の左右にある塔は全部で5階建てだった。

 外から入る出入り口はなく、館の中からしか入れない。

 1階と3階にそれぞれ扉がついているが、いずれも普段は鍵がかかっていて出入りができない。



 鍵は3階部分の鍵は、それぞれの扉とつながっているパパデスさんの部屋と、ママデスさんの部屋に置いているものがひとつ。

 他にはマスターキーが警備室に保管されているという……。

 今、シープさんが持って来ていた鍵はその警備室のマスターキーである。



 あと、この『左翼の塔』は1階から5階まであるようだが、『右翼の塔』には地下があって、そこにあの名画、巨匠レオナルホド・ダ・ビュッフェの『モナリザの最後の晩餐』が保管されているとのことだ。

 それで今、私とコンジ先生は、『左翼の塔』の5階に螺旋階段を上がっているところだ。

 5階から薄明かりが漏れ出ている。





 5階に上がってみると、その奥にはそれはそれは荘厳で見事なステンドグラスがあった。

 それはアンチャン・ガーデンの制作で、代表作であるバルセロナのサラダ・ファミリー協会の色彩溢れるステンドグラスに負けず劣らずの瞑想の世界に誘われる美しさでした。

 「生命」の素晴らしさを表しているんだとか。



 「うわぁ!! すごくきれい……。」

 私がステンドグラスに感動していると、コンジ先生は目ざとくそのステンドグラスの下の床にうずくまって礼拝をしている男を見つけていた。

 黒い神父の服を着ていて、明らかに宗教家だとわかる。



 「我が……主よ……。お導きを……。神よ……。」


 ぶつぶつと地面に顔をこすりつけるかと思うくらい近づけ、熱心に祈りを捧げている。

 私たちが上がってきたことに、まったく気がついていないみたい……。



 「おい! 君! いったい何をやってるんだ? ここで。」

 「いや! コンジ先生……。どうみてもお祈りしてるんでしょうが! 邪魔しちゃ悪いですよー!」

 「ん? 何に対して祈りを捧げる必要があるっていうんだね? ジョシュア……。君はこの世に神なんて存在がいるとでも?」

 「いやぁ……。そりゃ私だってそんなに信心深いわけではないのですけど? ほら。信仰は個人の自由だから。」



 私たちが話してる間に、ふとその黒の神父姿の男がこちらを振り返ってじっと私たちを見ているのに気がついた。


 「え……っと、アナタたちは?」

 男が尋ねてきた。


 「あ! こんにちは! お祈りのお邪魔してすみません。こちらはコンジ・キノノウ先生です。探偵をしてます。私はその助手のジョシュアといいます。」

 私がコンジ先生の分も自己紹介しておいた。



 「ああ。これはこれはご丁寧に……。私はアレクサンダー・アンダルシアと言いマース!」

 「アレクサンダーさんですね。あなたもシンデレイラさんに招待されたんですね。」

 「その通りなんデスネー。私は神父をしております。よろしくデース!」

 「ふん。僕には宗教の必要性がまったく理解できないね。くだらない。」

 「オオ……。アナタは神を信じないのデスカ!? それでは救われませんデスネー。」



 アレクサンダー神父はじっとコンジ先生を見て、憐れむように首を振る。


 「僕は今まで、自分自身の力と頭脳で道を切り開いてきた。もちろんそれはこれからも変わらない……。」

 「フーム……。アナタ……。死相が見えマスネ。神の愛に……。愛におすがりしなサイ! さもなければ、恐ろしい運命が身を焦がすであろうゾ!」

 「ほらね。こういう輩はすぐにそういう脅しをかけてくるんだ。……残念ながら、自分の身は自分で守るのであしからず!」

 「ちょっと……。コンジ先生ったら! あはは! 気にしないでくださいね! 口ではこう言ってますけど、けっこう信心深いので神様によろしく言っておいてください!」



 私はあわてて、フォローを入れる。

 
 「まあ、いいでショウ! アナタがたに神の御加護があらんことヲ!!」

 神父はそう言ってまた身をかがめ、地面に頭をこすりつけるようにしてお祈りを再開した。


  「我が……主よ……。お導きを……。神よ……。」



 またぶつぶつと言い出した神父を後ろに、私たちは来た道を引き返し、螺旋階段を降りるのだった。


 「コンジ先生。ホントにああいう宗教の人嫌いですね……。」

 「ふん。宗教家が嫌いなわけではない。人に自分が絶対正しいと価値観を押し売りしてくる輩が嫌いなだけだよ。」

 「まあ、私も苦手ではありますけどね……。」



 「ジョシュア。君、気がついていたかい?」

 「え? 何がですか?」

 「うむ。さっきのアレクサンダーとかいう神父だが……。ヤツはとんでもなく危ないヤツかもしれないぞ。」

 「ええ!? 普通の神父さんでしたよ?」





 「君……。思い出して見るんだ。いいかい? 僕たちはシープさんの案内でこの『左翼の塔』に来ただろう?」

 「はい。その通りです。ここの美術品を鑑賞させてくれたんですよね。」

 「ああ。来た時、この塔のどこから来たんだい?」

 「そりゃ、今この目の前に見えてきた、あの扉ですよ!」



 私たちはちょうど階段を1階まで降りて、その出入り口の扉まで来たところだ。

 外にはシープさんが待っていてくれているみたいだった。

 これは待たせちゃったな。シープさんに迷惑かけちゃったじゃない?


 もう……! コンジ先生が5階を見に行ったりするからぁ!



 「ああ……。ジョシュア……。君は成長しないなぁ。いいかい? 今、目の前に見えるシープさんが手に持っているのは何だ?」

 「え? ああ。この塔の扉の鍵じゃないですか? 来る時、あれでこの扉、開けてましたよね?」

 「それで?」

 「え……? それだけですけど……。」

 「ああ。もう……。あのさ、ここに来た時、あの鍵で解錠して僕たちはここに入ったんだよね?」

 「はい。」

 私はまだ気づいていなかった。




 「じゃあ、今5階にいるあの神父はいつここに入ったと言うんだ?」



 「あ……! そういえば!? じゃあ、あの神父さん、鍵が閉まったこの塔にずっと居たってこと!?」

 「そうなるよね。まあ、そのあたり、シープさんに確認してみようか。」



 「シープさん。ちょっとお尋ねしたいのだが。」

 「ああ。キノノウ様にジョシバーナ様。遅かったですね。何かありましたか?」

 「いえ。あの……。シープさん。5階にアレクサンダーさんという神父さんがいたのですけど……。いつから居るんですか?」



 「ああ。アレクサンダー神父に会われたのですね。彼は昨日ここに来てから食事の時間以外はずっとあそこに居ますよ。」

 「ええ!? 本当ですか! お祈りしてたみたいですけど……。」

 「そうですね。ずっとお祈りしてますねぇ……。ほら? ここに呼び鈴があるでしょう? 食事の時間以外で出られる時はこれを鳴らせば私が来ることになっています。
もちろん、食事の時間は呼びに来ますので。」

 そう言って、シープさんは、1階扉の内側の壁を指差した。

 たしかに、呼び鈴のボタンらしきものがついていた。



 「なるほど。じゃあ、不審に侵入していたわけではないのだね? まあ、狂信家ってところかな。」

 「ははは……。」

 シープさんは否定はしなかった。内心はシープさんも狂信的な宗教家だなって思っているようだ。



 「アレクサンダー神父が残っていますけど、ここには貴重な美術品がありますので、扉は外から施錠しておかなくてはなりません。」

 「ああ。塔の内側からは鍵をかけることはできても解錠することはできないのですね。そっかぁ。シープさん。おまたせしてすみません……。」

 「いえ。お客様がご満足いただければそれで幸いです。」



 私たちが廊下に出た後、シープさんが扉を施錠した。外側から鍵を施錠してしまえば内側からはもう開けられない。一方通行の扉というわけか。


 「みなさま。夕食の時間まで自由にされています。おふた方もご自由に過ごされてくださいませ。では、私はこれで失礼します。」

 シープさんはそう言って、廊下を歩いていく。



 「じゃあ……。コンジ先生、どうします?」

 「そうだな。3階に書斎があったな。どんな本があるか見てみたいな。」

 「ああ。それはいいですね。こんな豪邸ですもんね。珍しい本が置いてあるかも!」




 私たちは階段を上がって書斎に向かったのだった―。




 ~続く~




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...