【読者への挑戦状あり!】化け物殺人事件~人狼伝説・狼の哭く夜~

あっちゅまん

文字の大きさ
62 / 62
エピローグ

エピローグ 終

しおりを挟む




 コンジ先生の告発に、みんな黙ってしまいました。

 スエノさんもしばらく黙っていましたが、ふいに顔を上げ、こう言ったのです。




 「今……、キノノウ様がおっしゃったことは、何一つ、証拠はありませんよね?」

 スエノさんが自信たっぷりの表情でそう言う。



 「たしかに……、そうですね。証拠はありません。……すべて、僕の推論ですね。」

 コンジ先生もあっさりとその事実を認めてしまいました。

 勝ち誇った顔でスエノさんがさらに続ける。



 「……仮に、それが事実だったとして、何が悪いとおっしゃるのですか? 実際に殺人を犯したのはあの人狼であり、その殺意も人狼が化けた人物の持っていた深層心理からなる『七つの大罪』……でしたよね? 何も責められる道理はありませんわ!」

 スエノさんは少し怒っている様子でした。



 「私が仮にそんなことを行ったとしても、それは……、殺されたあの方たちにも原因はあると思いますよ……。」

 「ほぉ? それはいったいどういうことだね?」

 ジェニー警視も疑問を呈した。



 「ビジューさんはあの有名な絵画『モナリザの最後の晩餐』に魅入られていましたわ……。そこを襲われたのですから、ある意味、本望でしょう……。」

 「スエノ……。なんて言い方を……。」

 「それに、シープはこともあろうに私を疑っていたなんて……。使用人の風上にも置けないわ!」

 スエノさんが声を荒げる。



 「ふむ……。ビジューさんやシープさんは自ら部屋を出て犠牲になったのだ……。ある意味、スエノさんの言う通り、自業自得な面もあるだろう。しかし、ママハッハさんやアネノさんはどうだというのです?」

 コンジ先生が質問というより、詰問をする。

 しかし、アレクサンダー神父……は、忘れていらっしゃる?



 「母……? 姉? ふん……。あんな人たち、死んで当然ですわ。」

 スエノさんも神父さんのことは無視して、語り出しました……。



 「私の……、生い立ちはキノノウ様やジェニー警視にもお話しましたね? メッシュはもちろん、ジニアスも知っていますよね……。私を育ててくれたのはあの義理の母ではない! ナニーなのよ!!」


 スエノさんの生い立ちの話は私もコンジ先生から聞いていました。

 彼女の実のお母さんは、パパデスさんの浮気相手で、スエノさんを産んだ際、亡くなってしまったと……。

 そして、他に身寄りがなかったため、パパデスさんが引き取ることになった。

 スエノさんは、ナニー・ウーバという女性が乳母として雇われ、面倒を見ていたのですが、ママハッハさん達からはまったく無視されて、挙句の果てに解雇されたのだと……。



 「たしか乳母のナニー・ウーバさんは解雇されたんでしたね……?」

 ジェニー警視がそう言うが早いか、スエノさんが否定する!



 「いいえ! 違うのよ……。ナニーは……。ナニーは……、殺されたのよ!」

 スエノさんが悲痛な声で叫んだ。

 


 「それは、いったいどういうことですか!? お嬢様!? あのナニーが?」

 これにはメッシュさんも驚いた様子です。



 「メッシュ……。おまえが知らなかったのも無理はないのです。私もナニーは解雇され、故郷に帰ったものだとばかり思っていました……。」

 スエノさんがそこで息を飲んだ。


 「だけど……! ある日、私は聞いてしまったのです! アネノと義母が……、ナニーを死なせてしまったって、話しているのを!!」



 シーンとみんなが黙り込んでしまっていました。

 そして、スエノさんが再び話し出しました。



 「アネノが義母にこう言っていました……。ナニーの死体は山に埋めてきた……と! そうよ! ナニーは解雇されたのではなく、アネノと義母がしつけと称して、行き過ぎた体罰を与えたため、死んでしまっていたのよっ!!」

 スエノさんは歯を食いしばって鬼のような形相をして泣いていました。



 「私は決して姉たちを許すことはできない! 死んで当然なのよ!!」

 「お嬢様……。」

 「スエノ……。」

 「スエノさん……。」



 みんながスエノさんに同情していた。

 しかし、そこまで聞いたコンジ先生がゆっくりとまた話し始めたのです。


 「ふむ……。なるほどね。そんな事情があったのは同情に値するね……。だが、君はそれだけの理由で人狼の正体をみんなに黙っていたわけではあるまい? ……そうだ。パパデスさんが亡くなり、ジジョーノさんも亡くなった……。その時点で人狼が捕まってしまえば、シンデレイラ家の莫大な財産は……、ママハッハさんとアネノさんにそのほとんどが相続されることになっていただろう……。」

 スエノさんがハッとした表情を浮かべ、コンジ先生を見たのです。



 「君は……、それが許せなかったのではないか? このままでは、ますますママハッハさんやアネノさんが好き勝手に生きていくことになる……とね。」

 「ええ! そうよ! アネノにも義母にも……、1ドルだって渡すものですかっ!! あんなヤツラに……、そんな権利はないのよ!! 全部、私のものよ! 私はずっと我慢してきたのよ!」

 スエノさんが叫んだ。

 その顔は欲に目がくらんだ『強欲』そのものでありました。



 「ええ……。そうですね。実際、あなたは莫大な財産を受け継がれた……。そして、あなたの犯した罪を法的に立証することは、できないでしょう……。」

 「キノノウくんの言うとおりだな……。スエノさん、あなたは自らの手を汚したわけじゃあない……。それに、証拠は……、ないのだからな。」

 「お嬢様……。あなたは、変わってしまわれたようですな……。」

 「スエノ……。」



 「な……、何が悪いのよ!? 私は、私の当然の権利を守っただけなのよ! たまたま目障りな姉や義母が死んだだけよ! 今、ジェニー警視やキノノウ様が言った通りよ! 私を裁くことなんて……、できないのよ!」

 スエノさんは勝ち誇ったように、そう宣言したのでした……。





 翌朝-。

 私たちは、麓の村を離れ、帰ることになりました。

 ジェニー警視もあとは現地の警察にまかせ、イギリスに帰国するようです。



 「待って! メッシュ! 辞めるってどういうことよ!?」

 「はい。お嬢様。私はパパデス様に直接雇用されていたのです。パパデス様がお亡くなりになられ、あっしももう一度、自分の店を持とうと思いやす。」

 「なぜ!? 今まで通り、館で料理人をしてくれてもいいじゃないの?」

 「申し訳ございません。お嬢様にお仕えする気は……、もうありませんでして……。」

 「メッシュ! あなた! この恩知らず!!」

 「パパデス様にいただいた恩はあれど、お嬢様にいただいた恩は……、もうお返ししましたぜ。」



 どうやら、メッシュさんはシンデレイラ家から出ていくようです。

 そして、もうひとり……。



 「ジニアス!! あなたまで!? 私を置いていくというの!?」

 「スエノ……。僕は……、君への気持ちは、失われたよ……。」

 「どうして!? あんなに愛し合ったじゃあないの!?」

 「……君は……、僕を利用したのだろう? そして、僕を人狼の盾にもした……。」

 「そ……、それは……!!」

 「すまない……。愛していたよ。本当に……。でも、もう、一緒にはいられない……。」

 ジニアスさんが振り向いて、去っていく……。




 「ジニアスゥウウウウーーーーーーッ!! ……どうして!? どうしてなのよ!? 私は大金持ちなのよ!?」


 スエノさんの悲痛な叫び声が周囲の山間に響き渡るようでした-。


 そんな彼女を残し、私たちは、車に乗り込み、イエローナイフ空港へ向かうのでした-。




 「コンジ先生……。ジニアスさんにスエノさんのこと、事前に話していたのですね?」

 「ああ。何も知らずにスエノさんと一緒になるのは……、アンフェアだとは思わないかい?」

 「でも……、こうなることはわかっていらっしゃったのでしょう? 悪いおヒトだわ。先生……。」

 「ふふ……。ジニアスさんは本当に純粋な人だからね……。ちょいと手助けしたまでさ!」


 ああ。コンジ先生はこういう方でした。

 でも、私も何も知らずに見せかけだけの幸せに踏み込んでいくのは、違うなぁとは思います。

 事実を知って、ジニアスさんがご自身で判断するのが一番なんでしょうね……。






 その後、『或雪山山荘』でたった一人残されたスエノさんが、どう暮らしたのかは……、私たちは知るすべはなかったのです。


 ただ、私はそれ以来、吹雪の山を見ると、人狼の凄惨な事件と、たった一人残された大金持ちになった彼女のことを思い出さずにはいられないのでした-。







 ~完~




 『化け物殺人事件~人狼伝説・狼の哭く夜~』は、これにて完結です。

 いかがだったでしょうか。

 お楽しみいただけたら嬉しく思います。



 ※名探偵「黄金探偵」コンジの第二作目にあたる、

 『化け物殺人事件 ~フランケンシュタインシュタインの化け物はプロメテウスに火を与えられたのか?~』を公開いたしました。

 そちらもぜひ、よろしくお願いします(*´∀`*)b


 あっちゅまん



しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

オフィシャルヒゲダンス

犯人わかりました。
簡単だったかな…

2021.03.04 あっちゅまん

ありがとうございます!
答え合わせは、解答編をお待ち下さい!

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。