過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
348 / 492
第8章

347話

しおりを挟む
「アームズ……」

 チルの拳がバルオールの脇腹に突き刺さる……だが、直撃した本人は、なんとも無い様な表情で、そのまま攻撃を開始する。

「ガハハ、さっきから、言ってんだろ──そんな攻撃効かねぇーってな」

 チルの攻撃など、直撃しても問題無いと言わんばかりに、大斧を振り回す。

 そんなチルはギリギリで攻撃が当たらない様に必要最低限で攻撃を避ける。

「ほぅ……なかなか器用な事をするな」
「先生に教わった」

 チルが言う先生とは、恐らくリザードマンのグインの事だろう。

 先程から、避ける姿などはグインにそっくりである。

 ただ、唯一違うのは、避けてから相手にカウンターを出せない事だろう。

「悔しい……」

 チル自身もグインの様にカウンターが出せる様に、避けながら相手の様子を伺うが、一向に隙が無い為、難しい様だ。

 そして、暫くは同じ様な展開が続く。

 バルオールが攻撃して、それをチルが避ける。

 均衡している状況に見えていたが……

 差は徐々に生まれていた。

「はぁはぁ……」
「どうした──疲れちまったのか?」

 以前同じペースで大斧を振るうバルオールに対して、チルは肩で息をする様になる。

「はぁはぁ……強い……」
「ガハハ、当たり前だろ──強く無ければオーガの代表なんかにならねぇーからな」

 バルオールの言う通り、オーガは血筋など関係無く強い物が、代表になる。

 なので、代表になったバルオールは現時点でオーガ族最強だ。

「んじゃ、まぁソロソロ決着付けさせて貰うぞ?」
「望む所……」

 なんだかんだ、バルオールから直撃をあまり、貰っていないチルは疲れはあるものの、まだ戦えそうである。

 そして、2人は自身の戦いやすい構えをして、少しの間見つめ合う。

 そして……

「──ッオラ!」

 バルオールの蹴りがチルを襲う。

「それは、もう見た」

 先程、腹部に蹴りを貰ったのを覚えていた為か、難なく避けるチル。

 そして、比較的急所を狙って自身の拳を沈める様に放つ。

「──ッ」 
「まだまだ……」

 次から次へと、攻撃を放つ。

「──ッそれは、もう見たぞ?」

 先程の仕返しと言わんばかりに、チルの攻撃を避けてから、チルの腹部に拳を埋めた。

「──ッ?!」

 その瞬間、チルが吹き飛ばされる。

 チルは直ぐに立ち上がろうとするが、疲れとダメージで、木を支えにしないとバランスが上手く取れない状況まで追い込まれている。

「ガハハ、俺の一撃を受けて、まだ闘志は衰えないか!」

 一方は余裕の笑みであり、もう一方は何か打開策が無いか探している。

「さて」
「ッ早い……」

 素早く動く巨大なオーガ。

 万全のチルであれば、難無く避けられていただろう。

 しかし、疲れとダメージの蓄積で目の前に迫る拳に反応が出来ずに、攻撃が当たる。

「ッ……」

 複数のオーガ族と戦っているリガスは素早くチルのフォローに入る為移動するが……

「へへ。おっと──そっちには行かせねぇーぜ?」
「俺達はバルオール様にお前を任されたからな、行かすわけにはいかねぇーな」

 チルを直ぐに助けに行こうと思うリガスに対して邪魔する様に前に回り込むオーガ達。

 そして、バルオールはトドメを指す様にして、大斧をチルに向けて振り下ろそうと構える。

 チルは少しでも生きる可能性を上げる為に腕を自身の目の前でクロスさせる。


「娘よ無駄だ!」

 バルオールは確実にチルを仕留めたと思い笑みを浮かべる……

 しかし、実際にはバルオールが思い描く様な結果にはならなかった。

「どうなってやがる……」

 バルオールは確かに殺す気で目の前の獣人に大斧を振り下ろした。

 それなのに実際は死ぬ所か腕の一本でさえ折る事が出来なかった。

「お前、何かしたな?」

 何かを察したバルオールは直ぐ様頭を切り替えて、チルの反撃を許さないとも言わんばかりに、大斧を何度も振り下ろす。

 その攻撃にチルは両腕をクロスして耐える。

 
 誰が、どう見てもピンチの状況である筈だがチルはクロスした腕の中で笑みを浮かべて呟いた……

「流石、アトス様です……」

 どうやら、チルは自分が何故バルオールの攻撃を直撃しても死なないのか直ぐに理解した様だ。

「アトス様のスキルは偉大だけど……やはり、強い……」

 普通の人間であれば、アトスの補助があれば防御するまでも無くダメージを喰らう事は無いだろう。

 しかし、バルオールみたいな強者の場合は別だ。

 いくらアトスの補助があっても、あまりにも強力な攻撃であれば話は違って来る。

 勿論、かなりのダメージ軽減にはなっているが、そうであってもバルオールの一撃、一撃は人を殺すには十分の威力を持っている。

 チルは一つずつ丁寧にヒットポイントをズラして耐え続ける。

「アトス様のサポートが無ければ出来ない芸当……」

 腕を盾代わりに使用しバルオールの斬撃を耐え抜く姿は側から見たら訳が分からないだろう。

 そして、あまりにも様子が変な為、一度チルが距離を取ったバルオール。

 その隙に、チルは立ち上がり状況を、把握する。

「凄い……」

 そこには、先程まで木々が邪魔で見渡しが悪かった箇所が、今ではかなり切り倒された為、遠くまでみえる様になっていた。

「アトス様……やっぱり……」

 アトスがチルに向かって手を伸ばしていた。
 恐らく、サポートの為だろう。

 そして、少しすると白い光に包まれ、気が付けばいつの間にか白い光は青い光になっていた。

「何が起きてやがる……この青い光はなんだ?」

 相手側は、突然現れた青い光に動揺が隠せない様子。

 チルとバルオールの戦いに置いては、青い光が発生した所で何か戦況が改善された訳もなく、未だバルオールが優勢で一方的にチルに攻撃をしていた。

 しかし、違う所では青い光が発生した事により戦況が大きく変わっていた。

「ほっほっほ。流石アトス殿ですな」

 そう、リガスとオーガ族達の戦いである。

 物量方法でリガスにあたっていたオーガ族達。

 バルオールでさえ敵わない相手に一対一を申し込むなど馬鹿では無い様で、常に複数人で戦っていた。
 その為あってか見事リガスを倒す事は出来ずにいても、やられる事もない状況が続いていた様だ。

 だが、しかしアトスのサポートのお陰で、防御をするのを捨てたリガスは次々とオーガ達を地面に沈めていった……

 そんな様子を見ていたバルオール。

「ッチ、これはダメだな……」

 チルの事、仲間の事、そして謎の光を見て、バルオールは仲間に指示を送る。

「お前ら──退却するぞ!」

 バルオールからの言葉に、他の者達は驚きながらも指示に従った。

「逃げるの……?」
「ガハハ、口の減らないガキだ。この状況で良く、そんな口を叩ける」

 チルは今にでも倒れそうであった……

「まぁ、いい! ここは一旦逃げさせて貰うぜ」

 そう言って、バルオールを含めたオーガ族達は、壊した正門に移動して村の外に逃げていった……

「ふむ──オーガ族だけでは無く他の者達も次々と逃げていきますな」

 リガスの言葉通りオーガ族以外の種族も次々と逃げる様子が見えていた……

「リガス、私達は他に助けが必要な所に向かうよ」
「ほっほっほ。かしこまりました」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安
ファンタジー
ごく普通のフリーター・岩倉運命は謎の少年に刺され、命を落としてしまう。そんな岩倉運命だったが、サダメ・レールステンとして転生を果たす…

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...