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第10章
468話
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村では、生還祝いとして、宴会を開く事にした様で、私達も誘われたが、そんな気分では無いのと、疲れが溜まっていたので丁重に断り私は直ぐにベットに身体を放り投げた。
「ふぅ……」
疲れている筈なのに、何故か眠れない………
すると、扉を叩く音がした。
「チルちゃん……一緒に寝よー?」
「うん、いいよ」
姉さんは、部屋に入って来て一人用の寝具に入って来た。
「「……」」
姉さんも私も、一言も話さないし、話す気力も残っていないかもしれない……
静寂な部屋には、外から聞こえて来る宴会の音が入って来る。
太鼓がドンドンと鳴り響き、寝るのには適さない環境ではあるが、今はそれが有難い。
理由は私も姉さんも同じだ……
「ヒック……ヴッ……おにい……さん……弱くて……ごめんなさい……」
姉さんは泣いている。そして私も泣いている……
お互い、背中を突き合わせている為、嗚咽しているのがお互いに伝わっているだろう。
しかし、泣き声を太鼓の音が掻き消してくれる為、感謝の気持ちしか無い。
……アトス様は私達の為に犠牲になった。そして、あの状況を考える限り生きては居ないだろう。
考えれば、考える程悲しくなり、涙が溢れ出る。そして、最後に行き着くのは、自分の弱さに対する怒りである。
もっと強ければ……
もっと強くなる訓練していれば……
上げればキリが無い事は分かっている。
これまでに自身の訓練をサボった日も無ければ、妥協した日も無い。
しかし、もっと出来た事が有ったのでは無いか?
もっともっと、努力出来たのでは? と頭の中でグルグルと考えてしまう。
隣では、姉さんが自身の弱さに嘆き、アトス様に対して謝っている──しかし、姉さんは十分アトス様の役に立てていたし、姉さんが居なければ生き残れ無い場面は何度もあった。
それに比べて私は、居ても居なくても変わらなかっただろう。
多少は、戦闘などで辛くなったかもしれないが、アトス様、姉さん、リガスの三人が居れば普通に問題なかった筈だ。
そう考えると自分という存在にますますイライラしてしまう。
せっかく、アトス様は私と姉さんを地獄の底から救い出してくれた。
それだけでは無く、そのまま私と姉さんを拾って育ててくれた……
私はアトス様に出会う前は毎日、神様に地獄の日々から救い出してくれる様にお祈りしていた。
毎日……毎日……毎日だ。
そして、ある日アトス様が現れた。浅はかな私は、最初にアトス様を見た時は、怪しいと感じてしまったが、間違えだった……
アトス様は、姉さんを虐める男達を倒し、一生出られないと思ったスラム街から出してくれて、いつもお腹が空いていた空腹感を満たし、外の世界で生きていける様に鍛えてくれた……
そんな、アトス様に一体私は何をしてあげられただろうか? ──いや、何もして無い。
終いには、私達を守る為に片腕を失くして、最後は自分自身の命を犠牲にしてまで守ってくれた……
本当に凄いお方だったな。
それから、私達は一つの狭い寝具で泣き続けた、それはもう、涙が枯れるまでだ。
一体どれくらい時間が経ったか分からないが、外の喧騒な気配は無くなり、本当の静けさが部屋を包む。
「チルちゃん……」
「なに?」
姉さんが、ガラガラな声で話し掛けて来る。
「お兄さんは、私達を守る為に囮になったんだよね……?」
「うん……」
「私達って弱いよね……」
「うん……」
「おにい……ゔぅ……さんは……ヴッ……」
枯れるまで泣いた筈なのに姉さんの目からは涙が再び湧き上がる。そして私の目からも……
そして、私達はお互い正面に向かい合い、再度泣き始める。
「わだじが……よわがっだがら……ヴッ……」
「ううん……姉さんのせいじゃ無いよッ……ヴッ……ワダジのせい……ヴッ……」
再び私達は嗚咽でまともに言葉が紡げなかった。
恐らくどっちが悪いと言う事は無いのだろう……悪いのは私達二人の所為だ。
「うん……そうだね……ゔぅ……チルちゃんの言う通り私達二人が弱いのがいけなかったんだね……」
「うん……」
「チルちゃん……」
姉さんが、自分の袖で涙を拭う。
「私達、強くなろうッ──このままじゃダメだよ」
泣いた所為で、姉さんの目はとても腫れているが、目の奥には力強い意志が宿っている。
「お兄さんは、こんなメソメソしている私達を望んで無いよ!」
……私と姉さんの差はこれなのだろうと、私は思った。
いつまでも、ウジウジ考えていた私と違い、姉さんは悲しんだ後に次の行動を直ぐに起こす事が出来る人である。
普段は怠け者でふざけている時もあり、勘違いされる事もあるけど、やっぱり姉さんは凄い。
「あはは……チルちゃんの表情が少し良い感じになってきたね」
姉さんは、いつも私を引っ張って行ってくれる。私がどんな道を歩めば良いか悩んでいても、必ず良い方に導いてくれる。
「チルちゃん、村に帰ったら特訓だよー! えいえいおー!」
姉さんに着いて行けば、何とかなる──だけど、今回は、ただ姉さんの背中を追い掛けるだけじゃダメだッ。
それだと私は成長しないし、姉さんと肩を並べて戦う事が出来ないッ!!
「それじゃ、早速明日にはココを出てエルフの村に帰ろう!」
「うん」
「あはは、チルちゃん大丈夫だよ! チルちゃんには私が居るからね!」
「うん……」
それから明日は起きたら直ぐにこの村を出る事を決め、姉さんがリガスに伝えに行く為、部屋を出て行った。
私も、ある事を考えながら姉さんの後を追いリガスの所に向かう……
「ふぅ……」
疲れている筈なのに、何故か眠れない………
すると、扉を叩く音がした。
「チルちゃん……一緒に寝よー?」
「うん、いいよ」
姉さんは、部屋に入って来て一人用の寝具に入って来た。
「「……」」
姉さんも私も、一言も話さないし、話す気力も残っていないかもしれない……
静寂な部屋には、外から聞こえて来る宴会の音が入って来る。
太鼓がドンドンと鳴り響き、寝るのには適さない環境ではあるが、今はそれが有難い。
理由は私も姉さんも同じだ……
「ヒック……ヴッ……おにい……さん……弱くて……ごめんなさい……」
姉さんは泣いている。そして私も泣いている……
お互い、背中を突き合わせている為、嗚咽しているのがお互いに伝わっているだろう。
しかし、泣き声を太鼓の音が掻き消してくれる為、感謝の気持ちしか無い。
……アトス様は私達の為に犠牲になった。そして、あの状況を考える限り生きては居ないだろう。
考えれば、考える程悲しくなり、涙が溢れ出る。そして、最後に行き着くのは、自分の弱さに対する怒りである。
もっと強ければ……
もっと強くなる訓練していれば……
上げればキリが無い事は分かっている。
これまでに自身の訓練をサボった日も無ければ、妥協した日も無い。
しかし、もっと出来た事が有ったのでは無いか?
もっともっと、努力出来たのでは? と頭の中でグルグルと考えてしまう。
隣では、姉さんが自身の弱さに嘆き、アトス様に対して謝っている──しかし、姉さんは十分アトス様の役に立てていたし、姉さんが居なければ生き残れ無い場面は何度もあった。
それに比べて私は、居ても居なくても変わらなかっただろう。
多少は、戦闘などで辛くなったかもしれないが、アトス様、姉さん、リガスの三人が居れば普通に問題なかった筈だ。
そう考えると自分という存在にますますイライラしてしまう。
せっかく、アトス様は私と姉さんを地獄の底から救い出してくれた。
それだけでは無く、そのまま私と姉さんを拾って育ててくれた……
私はアトス様に出会う前は毎日、神様に地獄の日々から救い出してくれる様にお祈りしていた。
毎日……毎日……毎日だ。
そして、ある日アトス様が現れた。浅はかな私は、最初にアトス様を見た時は、怪しいと感じてしまったが、間違えだった……
アトス様は、姉さんを虐める男達を倒し、一生出られないと思ったスラム街から出してくれて、いつもお腹が空いていた空腹感を満たし、外の世界で生きていける様に鍛えてくれた……
そんな、アトス様に一体私は何をしてあげられただろうか? ──いや、何もして無い。
終いには、私達を守る為に片腕を失くして、最後は自分自身の命を犠牲にしてまで守ってくれた……
本当に凄いお方だったな。
それから、私達は一つの狭い寝具で泣き続けた、それはもう、涙が枯れるまでだ。
一体どれくらい時間が経ったか分からないが、外の喧騒な気配は無くなり、本当の静けさが部屋を包む。
「チルちゃん……」
「なに?」
姉さんが、ガラガラな声で話し掛けて来る。
「お兄さんは、私達を守る為に囮になったんだよね……?」
「うん……」
「私達って弱いよね……」
「うん……」
「おにい……ゔぅ……さんは……ヴッ……」
枯れるまで泣いた筈なのに姉さんの目からは涙が再び湧き上がる。そして私の目からも……
そして、私達はお互い正面に向かい合い、再度泣き始める。
「わだじが……よわがっだがら……ヴッ……」
「ううん……姉さんのせいじゃ無いよッ……ヴッ……ワダジのせい……ヴッ……」
再び私達は嗚咽でまともに言葉が紡げなかった。
恐らくどっちが悪いと言う事は無いのだろう……悪いのは私達二人の所為だ。
「うん……そうだね……ゔぅ……チルちゃんの言う通り私達二人が弱いのがいけなかったんだね……」
「うん……」
「チルちゃん……」
姉さんが、自分の袖で涙を拭う。
「私達、強くなろうッ──このままじゃダメだよ」
泣いた所為で、姉さんの目はとても腫れているが、目の奥には力強い意志が宿っている。
「お兄さんは、こんなメソメソしている私達を望んで無いよ!」
……私と姉さんの差はこれなのだろうと、私は思った。
いつまでも、ウジウジ考えていた私と違い、姉さんは悲しんだ後に次の行動を直ぐに起こす事が出来る人である。
普段は怠け者でふざけている時もあり、勘違いされる事もあるけど、やっぱり姉さんは凄い。
「あはは……チルちゃんの表情が少し良い感じになってきたね」
姉さんは、いつも私を引っ張って行ってくれる。私がどんな道を歩めば良いか悩んでいても、必ず良い方に導いてくれる。
「チルちゃん、村に帰ったら特訓だよー! えいえいおー!」
姉さんに着いて行けば、何とかなる──だけど、今回は、ただ姉さんの背中を追い掛けるだけじゃダメだッ。
それだと私は成長しないし、姉さんと肩を並べて戦う事が出来ないッ!!
「それじゃ、早速明日にはココを出てエルフの村に帰ろう!」
「うん」
「あはは、チルちゃん大丈夫だよ! チルちゃんには私が居るからね!」
「うん……」
それから明日は起きたら直ぐにこの村を出る事を決め、姉さんがリガスに伝えに行く為、部屋を出て行った。
私も、ある事を考えながら姉さんの後を追いリガスの所に向かう……
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