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第5章 交わり始める思惑
第54話 三公爵
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「お二方とも。忙しい中お集まりいただき感謝する」
王都の貴族街にあるひと際大きな屋敷に男二人と女一人が集まっていた。
「陛下にこの国の未来は託せない。我ら"三公爵"が知恵を集めてこそ、この国の政策は動くのだ」
この場にいる三人は三人とも帰属における最高爵位・公爵の身分を持つ者たちであり、国の権力を実質的に握っている"三公爵"と呼ばれている。
一人は他二人を集めたこの屋敷の主、ボーネス公爵。
三人の中でも特に由緒ある血族の男で、最年長であることもあり、三人のリーダー的な存在だ。
「そうね。今や国民の意思は私達と勇者に向いている。陛下じゃ何もできないわ。オホホホ……」
もう一人は妙齢の美女である、レーコ公爵。
あらゆる手を使って公爵の地位まで成り上がったやり手で、"美魔女"などと呼ばれている。
「御託はいらん。俺は貴様らと慣れあうつもりなど毛頭ない」
そして鋭い目つきと傲慢な態度で二人に接する最後の一人、バクト公爵。
他二人ほど目立った功績は上げていないが、他者をねじ伏せる威圧感と冷静な頭脳を併せ持ち、公爵の地位を不動のものとしている。
「バクト公爵は相変わらず攻撃的な方だ。少しはわしらと仲良くなっておいた方が後のためだぞ?」
「だったらまずその見え透いた態度をやめろ。"自分こそがこの国の頂点に相応しい"って考えてるなら、最初からそう言え」
仲を取り持とうとするボーネス公爵にバクト公爵は睨みながら返した。
この三人は"三公爵"と呼ばれて腐敗した貴族達のトップに立っているが、三人が完全に協力関係にあるわけではない。
いずれは残りの二人を蹴り落し、自らがこの国の実権を掌握する。今は対等な関係を貫いているが、三人ともそういう腹積もりのようだ。
「確かにいずれは私達も争うことになる関係だけど、今は協力しててもいいんじゃないかしら?」
「うるせえ、ババァ」
「バ、ババァ!? あなただって歳は私と大差ないじゃ……!」
「落ち着け、レーコ公爵。バクト公爵も言葉を選んでくれたまえ。今回は交友を深めるために場を用意したが故」
「"腹の探り合い"と素直に言え」
「ガハハ。どうにもバクト公爵は気難しい」
ボーネス公爵はバクト公爵の言葉を否定しなかった。"交友を深めるため"などと言ったが、事実こうして三人が集まるのにはそういった狙いがある。
「ならば世間話の一つでもしようか。最近、勇者レイキース様に取り入ろうとする不逞な輩がいるそうだが?」
「あら? 悪いことを考える人もいるのね」
「その言葉、そっくり貴様に返してやるよ」
レーコ公爵はとぼけた態度をとるが、ボーネス公爵とバクト公爵は何か探りを入れるような態度を見せる。
三人とも言葉には出さないが、勇者レイキースを利用しようとしているのはレーコ公爵であることは周知の事実である。
まだ若い勇者レイキースに色仕掛けで迫ったとか、甘言でたぶらかしたとか。レーコ公爵は勇者レイキースを自らの"手札"として用意しているようだ。
「それよりも噂じゃ王国騎士団軍師のジャコウ様が闇魔法を研究して<魔王の闇>を復活させようとしてるなんて話を聞いたわ。誰の差し金かしら?」
「どうせどっかの狸ジジィだろ」
「ガハハハ。お二方とも意地が悪い」
レーコ公爵とバクト公爵の問いかけに、もはや隠そうともしないボーネス公爵。
ジャコウの<魔王の闇>の研究に手を貸しているのはボーネス公爵だ。この三人の誰が権力の頂点に立とうとしたところで、最後には武力がものを言う。そう考えたドーマン男爵はジャコウに強大な武力である<魔王の闇>を復元させるため、全面的にバックアップしている。それがボーネス公爵の"手札"だ。
「ところでバクト公爵よ。お主もワシらに何か話題はないのかな?」
「回りくどいことは嫌いなんでしょ? なんなら率直に聞いてあげようかしら? あなたの"手札"は何かしら?」
「貴様らは馬鹿か? なぜわざわざ敵に塩を送るような真似をしなければいけないのだ?」
バクト公爵は毅然とした態度でボーネス公爵とレーコ公爵の質問を拒絶する。
「まあ言わぬなら結構。こちらも少し手札を見せすぎたかな」
「それに……大方の想像はついてるからね」
「貴様らごときでは、俺の想像を読み切ることなどできはしない」
ボーネス公爵もレーコ公爵も、バクト公爵が隠し持っている"手札"については薄々感づいている。
だがバクト公爵の"手札"は二人の"手札"と違って、かなり弱いものだ。
バクト公爵も二人がそこまで考えて各々の"手札"をけん制のために見せていることは承知の上だ。
「話が終わったのならさっさと帰らせろ。最初にも言ったが、俺は貴様らと慣れあうつもりはない」
「そうね。短い時間だったけど、中々楽しめたわ」
「ではまた今度。次はもっと政治的な話題でも話しましょうか」
そう言ってレーコ公爵とバクト公爵をボーネス公爵は見送るのだった。
■
「あのクソジジィにクソババァが。何が楽しくてあんな馬鹿どもとつるまなきゃならんのだ」
「旦那様。少々言葉は選ばれた方が良いかと」
「向こうも同じように考えてるだろう。こんなところで本音を隠す必要性もない」
"三公爵"の交流を終えたバクト公爵は馬車で従者と共に自身の屋敷へと帰る途中だった。
「なんでしたらあの二人も今のうちに"標的"にしておきましょうか?」
「やめろ。流石にあの二人を狙うのはリスクが大きすぎる」
従者は何かを主に提案するが、すぐに却下される。
「貴様らは引き続き俺の指示通りに暴れろ。あの戦闘馬鹿にもそう伝えておけ」
「旦那様がそうおっしゃられるのなら、仰せのままに」
頭を下げた従者にバクト公爵は続けて言う。
「俺の計画は必ず実現させろ。失敗は許さないからな……コゴーダ」
王都の貴族街にあるひと際大きな屋敷に男二人と女一人が集まっていた。
「陛下にこの国の未来は託せない。我ら"三公爵"が知恵を集めてこそ、この国の政策は動くのだ」
この場にいる三人は三人とも帰属における最高爵位・公爵の身分を持つ者たちであり、国の権力を実質的に握っている"三公爵"と呼ばれている。
一人は他二人を集めたこの屋敷の主、ボーネス公爵。
三人の中でも特に由緒ある血族の男で、最年長であることもあり、三人のリーダー的な存在だ。
「そうね。今や国民の意思は私達と勇者に向いている。陛下じゃ何もできないわ。オホホホ……」
もう一人は妙齢の美女である、レーコ公爵。
あらゆる手を使って公爵の地位まで成り上がったやり手で、"美魔女"などと呼ばれている。
「御託はいらん。俺は貴様らと慣れあうつもりなど毛頭ない」
そして鋭い目つきと傲慢な態度で二人に接する最後の一人、バクト公爵。
他二人ほど目立った功績は上げていないが、他者をねじ伏せる威圧感と冷静な頭脳を併せ持ち、公爵の地位を不動のものとしている。
「バクト公爵は相変わらず攻撃的な方だ。少しはわしらと仲良くなっておいた方が後のためだぞ?」
「だったらまずその見え透いた態度をやめろ。"自分こそがこの国の頂点に相応しい"って考えてるなら、最初からそう言え」
仲を取り持とうとするボーネス公爵にバクト公爵は睨みながら返した。
この三人は"三公爵"と呼ばれて腐敗した貴族達のトップに立っているが、三人が完全に協力関係にあるわけではない。
いずれは残りの二人を蹴り落し、自らがこの国の実権を掌握する。今は対等な関係を貫いているが、三人ともそういう腹積もりのようだ。
「確かにいずれは私達も争うことになる関係だけど、今は協力しててもいいんじゃないかしら?」
「うるせえ、ババァ」
「バ、ババァ!? あなただって歳は私と大差ないじゃ……!」
「落ち着け、レーコ公爵。バクト公爵も言葉を選んでくれたまえ。今回は交友を深めるために場を用意したが故」
「"腹の探り合い"と素直に言え」
「ガハハ。どうにもバクト公爵は気難しい」
ボーネス公爵はバクト公爵の言葉を否定しなかった。"交友を深めるため"などと言ったが、事実こうして三人が集まるのにはそういった狙いがある。
「ならば世間話の一つでもしようか。最近、勇者レイキース様に取り入ろうとする不逞な輩がいるそうだが?」
「あら? 悪いことを考える人もいるのね」
「その言葉、そっくり貴様に返してやるよ」
レーコ公爵はとぼけた態度をとるが、ボーネス公爵とバクト公爵は何か探りを入れるような態度を見せる。
三人とも言葉には出さないが、勇者レイキースを利用しようとしているのはレーコ公爵であることは周知の事実である。
まだ若い勇者レイキースに色仕掛けで迫ったとか、甘言でたぶらかしたとか。レーコ公爵は勇者レイキースを自らの"手札"として用意しているようだ。
「それよりも噂じゃ王国騎士団軍師のジャコウ様が闇魔法を研究して<魔王の闇>を復活させようとしてるなんて話を聞いたわ。誰の差し金かしら?」
「どうせどっかの狸ジジィだろ」
「ガハハハ。お二方とも意地が悪い」
レーコ公爵とバクト公爵の問いかけに、もはや隠そうともしないボーネス公爵。
ジャコウの<魔王の闇>の研究に手を貸しているのはボーネス公爵だ。この三人の誰が権力の頂点に立とうとしたところで、最後には武力がものを言う。そう考えたドーマン男爵はジャコウに強大な武力である<魔王の闇>を復元させるため、全面的にバックアップしている。それがボーネス公爵の"手札"だ。
「ところでバクト公爵よ。お主もワシらに何か話題はないのかな?」
「回りくどいことは嫌いなんでしょ? なんなら率直に聞いてあげようかしら? あなたの"手札"は何かしら?」
「貴様らは馬鹿か? なぜわざわざ敵に塩を送るような真似をしなければいけないのだ?」
バクト公爵は毅然とした態度でボーネス公爵とレーコ公爵の質問を拒絶する。
「まあ言わぬなら結構。こちらも少し手札を見せすぎたかな」
「それに……大方の想像はついてるからね」
「貴様らごときでは、俺の想像を読み切ることなどできはしない」
ボーネス公爵もレーコ公爵も、バクト公爵が隠し持っている"手札"については薄々感づいている。
だがバクト公爵の"手札"は二人の"手札"と違って、かなり弱いものだ。
バクト公爵も二人がそこまで考えて各々の"手札"をけん制のために見せていることは承知の上だ。
「話が終わったのならさっさと帰らせろ。最初にも言ったが、俺は貴様らと慣れあうつもりはない」
「そうね。短い時間だったけど、中々楽しめたわ」
「ではまた今度。次はもっと政治的な話題でも話しましょうか」
そう言ってレーコ公爵とバクト公爵をボーネス公爵は見送るのだった。
■
「あのクソジジィにクソババァが。何が楽しくてあんな馬鹿どもとつるまなきゃならんのだ」
「旦那様。少々言葉は選ばれた方が良いかと」
「向こうも同じように考えてるだろう。こんなところで本音を隠す必要性もない」
"三公爵"の交流を終えたバクト公爵は馬車で従者と共に自身の屋敷へと帰る途中だった。
「なんでしたらあの二人も今のうちに"標的"にしておきましょうか?」
「やめろ。流石にあの二人を狙うのはリスクが大きすぎる」
従者は何かを主に提案するが、すぐに却下される。
「貴様らは引き続き俺の指示通りに暴れろ。あの戦闘馬鹿にもそう伝えておけ」
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