記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
65 / 476
第6章 少年少女の思いの先

第65話 ボクが処刑寸前なのだが?

しおりを挟む
 ゼロラ殿のミリア様誘拐騒動の後、ボクはミリア様の部屋にいた。

 現在、衛兵二人がお互いに剣を構えてボクの目の前で交差させている。
 そしてボクはというと、両腕を後ろに縛られた状態で、その交差した剣の間に首を差し出す形で座らされている。

 完全に処刑台に上げられた死刑囚の姿だね。

「……それでボクはここからどうすればいいのかな? ボクの宝のありかを大声で伝えればいいのかな?」
「結構余裕ありますよね。リョウ大神官」
「あなたの宝なんてろくな物じゃなさそうなので、いりません」

 それは心外だ。ボクが密かに集めた美少女・美少年コレクションを『ろくな物』呼ばわりとはいただけない。

「もういいわ。ガルペラ侯爵は無事だったし、今後このようなことは控えるように」
「うむ。今度からもっとバレないようにするよ」

 ミリア様のお許しが出たのでボクは後ろ手に縛られた縄を魔法で燃やして立ち上がる。

「やっぱりこの人にただの縄なんて意味ないよな」
「ノリでやっただけだからこうなることは分かってたわ」

 ノリで処刑ごっこは勘弁願いたいね。もっとも、ミリア様がそのつもりなのは知ってたから付き合ったんだけどね。

「『もっとバレないようにする』って、やめるつもりはないのですね」
「あきらめろ。ミリア様もそれを知ったうえで『控えるように』とおっしゃったのだ」

 衛兵達の間でのボクの評判が悪い。ちょっと辛い。

「それで今後どうするつもりなのかな、ミリア様? このままオジャル伯爵と婚約するのかな?」
「婚約は破棄するつもりよ。そして、アタシはラルフルともう一度話をする。そのためにゼロラさんは明日、オジャル伯爵とアタシが会う時に、ラルフルを連れてきてくれると約束してくれたわ」

 うんうん。やっぱり純愛が一番だよね。ボクは寝取られはNGな主義なんだ。

「ただ相手のバックにはボーネス公爵もいる。皆には苦労をかけることになるわ……」
「気にしないでください、ミリア様! 我らもミリア様とラルフルの仲を応援します!」
「お二方のためならば、ボーネス公爵を敵に回すのも構わぬ所存でございます!」

 ミリア様って本当に慕われてるよね。ボクはここでは比較的新参者だけど、その気持ちはわかるよ。

「ではミリア様。本日のところはボク達は失礼いたします。明日、オジャル伯爵が来ようと、ボーネス公爵が現れようと、最悪の事態には備えるようにいたします」
「頼りにしてるわ。お願いね」

 ボクと衛兵たちはミリア様の部屋を出ていった。



「意外とすんなり引き下がったのですね、リョウ大神官」
「んー? 君たちはボクを何だと思っているのかな?」
「変態」
「ストーカー」
「クフフフ。これは手酷い評価だね」

 ボクだって時と場合を選ぶことだってあるさ。

「失礼ながら発言させてください。リョウ大神官は元々"こうなることが分かっていた"のではないですか?」

 ボクと衛兵の会話に、外で待機していた神官の一人が口を挟む。

「リョウ大神官は我々神官に事前に申されましたよね。『もしゼロラ殿が何か行動を起こした場合、その意を汲んで神官は行動を起こすように』と」
「え? リョウ大神官、そんなことを言ってたのですか?」

 うん、言ってたね。まさかゼロラ殿がガルペラ侯爵を囮にボクを巻き込むとは思わなかったけど。

「まさかリョウ大神官は全て計算の上で……!?」
「買いかぶり過ぎだね」
「ですが、ミリア様のことを思ったうえで行動されてはいたのでしょう?」

 それについては否定しないかな。ボク達聖堂内の人間じゃ、ミリア様の心を開くことはできない。でも……ゼロラ殿ならやってくれそうな気がしたんだよね。彼のことは信用できる。この短期間でラルフル君やガルペラ侯爵とも仲良くなれる人間性の持ち主だ。
 ちょっと妬ましいほどにね。

「ボクのことを少しは信用しなおしてくれたかな? だったら明日は覚悟を決めておいてくれ。下手をすれば戦闘になる。ボクだってミリア様を守りたい」
「分かりました。我らも尽力いたしましょう」

 と言っても、最悪ギャングレオ盗賊団や黒蛇部隊クラスの相手じゃない限り、ボク一人でも対応できるんだけどね。

「た、大変です! リョウ大神官! 遠方の見張りの者より連絡が入りました!」

 ……騒々しいね。でも必死な様子だ。これはただ事じゃないのかな?

「遠方より、王都よりオジャル伯爵とボーネス公爵が部隊を引き連れてこちらに向かっています! 距離と速度からして、本日未明にはこのスタアラ魔法聖堂に到着するものかと!」
「……随分急なお出ましだね。明日まで待ってもくれないのか」

 これは想定外。急に押し掛けられては悠長なことも言ってられないか。

「大神官の権限で命じるよ。ボーネス公爵もオジャル伯爵も、このスタアラ魔法聖堂内に入れないでね。こちらからの手出しは無用。ボクも準備をした後、聖堂正面で出迎えるよ。後のことは終わってから考えるよ」
「はっ! リョウ大神官の命令のままに!」

 ミリア様が絡むとボクの命令も素直に聞いてくれるよね。いつもこの調子ならいいんだけど。

 さて、こっちは救援要請でもしようか。ただ追い返すだけじゃ駄目だ。これは"ミリア様とラルフル君のための戦い"。役者がそろわないと意味がない。通信魔法を使えばここからでも状況を伝えるぐらいはできるだろう。

『……官……? こ……法……か?』

 やっぱりこちらから向こうの状況を知るのは難しいね。こんなことならもっと通信魔法の精度を上げておけばよかった。
 こっちの言葉はちゃんと聞こえてるはずだから、とりあえず報告させてもらうよ。

「この通信魔法の都合上、急に一方的で悪いんだけど、どうしても知らせたいことがあるんだ。……ミリア様を迎えるボーネス公爵とオジャル伯爵の部隊が予定より早く……今日の未明にやってくる。急いでスタアラ魔法聖堂まで来てくれ」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

処理中です...