記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第7章 家族

第87話 フォーレス救出作戦③

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 ライカンに連れ去られた私はフォーレスの森の奥にある洞窟の牢屋に囚われていた。

「ブヒヒヒヒ。久しぶりだな、マカロンのお嬢ちゃん」

 牢屋の外で私をニヤつきながら見ているのは、あの日私を攫った魔王軍亜人隊隊長のオーク、オクバであった。

「ホホホホホ。これはオクバ殿がおっしゃっていた通り、別嬪さんでおじゃるな」

 そしてもう一人、人間の姿があった。小太りでオジャル伯爵と呼ばれる男は私を舐め回すように見る。

「魔王ジョウイン公が倒されたからと言って、おでから逃げられると思ったか?」
「オクバ殿よ。あまりこの娘を怖がらせるでないおじゃ。まろの妻となる女でおじゃるぞ」

 こいつらが私を攫った目的。それは私をこのオジャル伯爵の妻にするためのようだ。
 そのためにオクバはあの日のように私をここまで攫ってきたようだ。

 いつかこんな日が来るんじゃないかと思ってた。
 魔王軍に囚われていた私がゼロラさんに助けられて今まで裕福とは言えないが、それでも穏やかで平和な日々を送り、そして生き別れていた弟のラルフルにも再会できた。この二年間があまりにも幸せ過ぎたのだ。
 私はかつて魔王軍と契約を交わした身。罪を受けて生き続けなければいけない存在。その罪が私と同じく魔王軍だった魔物とつながっているオジャル伯爵と結婚することならば、それは相応の罰なんだろう。

 私の頭の中にはふとゼロラさんの姿が浮かんだ。

「ん? どうしたお前ら? 何? 侵入者?」

 私が考えていると部屋にゴブリンたちがやってきて、オクバに何かを伝えた。

「人間二人が!? しかもパンクタイガーが倒されただと!? 馬鹿な! 魔力は感じ取れなかったぞ!?」

 人間二人。亜人隊でも魔力を感じ取れなかった人間……。
 私はラルフルとゼロラさんのことだと理解した。

 なんでここに来たの?
 私を助けに来たの?
 危険を冒してまで私に助けてもらう意味なんてないのに?
 私は二人が心配だった。

 でも……心のどこかで"嬉しい"と思ってしまうことは罪だろうか?

「オジャル伯爵。ここの守りはゴブリンに任せて、おでは侵入者を迎え撃つ」
「パンクタイガーを倒すほどの手練れなら、まろも出たほうがいいでおじゃろう」

 オクバとオジャル伯爵は私が囚われている部屋を出て迎撃の準備を始めた。
 さっきの様子からして、オクバとオジャル伯爵はこいつらの最高戦力だろう。ラルフルとゼロラさんの身が危ない! 何とかして二人を守る方法は……!?


 プシュゥウウウ

「キキィイイ!?」

 二人の心配をしていたら、突如部屋の中に煙が充満した。

「ゴホッ! ゴホッ!」

 私は思わすせき込むが、人体に悪影響はないようだ。ゴブリンたちは慌てて煙の原因を探し始める。

 ガガガッ! ガガガッ!

「キェエアァ……!?」

 今度は物音と共にゴブリンたちが次々に倒れ始めた。一体何が起こってるの……!?

「よく分からねーが、どこかで誰かが陽動してくれたみたいだな。殲滅の手間が省けた」
「フォオオオ」

 少しずつ晴れていく煙の中に見たことのない二人の姿があった。

「あ~? 『殲滅より救出を優先しなよ』だと~? 安全に救出するために殲滅の必要があるんだろーが!」

 一人は右目に青色のモノクルのような見たことのない道具をつけた白衣の男。
 右手には見たことのないL字型の武器を持っている。

「フォオオ……」

 もう一人は白衣の男の発言に「フォオオ」としか答えない全身を鎧で纏い、左目を赤く光らせたゼロラさんよりもはるかに大きな人。
 ……そもそも"人"なのだろうか? その異様な姿はゴーレムのような魔物にも見える。

「牢を開けろ、フレイム」
「フォオ!」

 白衣の男に指示されると、フレイムと呼ばれた巨人が私が囚われている牢屋の鉄格子を軽々と捻じ曲げてしまった。
 この二人は……私を助けに来たの……?

「ケガはないみたいだな。ならさっさとここからずらかるぞ」
「ま、待ってください! 私の弟と友人がすぐそこまで来てるんです! 助けないと!」
「弟? それに友人もか。弟の方は助けてやってもいーが、友人の方は知らん。そもそもこれ以上目立ちたくねー」
「フォオオオ、フオ、フォオオオオ」
「『目立ちたくないなら最初から殲滅なんて考えないでよ。それにラルフルには顔を見られたくないだけじゃん』だって~? お前は逐一一言多いんだよ!」

 この二人はあまり私に協力的ではないようだ。それにしてもラルフルのことも知っている……? 私のことも助けに来たし、一体何者なの?

「それなら私一人でも助けに行きます!」
「馬鹿か!? お前みたいな小娘一人でどうにかなる状況じゃねーんだぞ!?」
「でも、二人を置いて逃げるなんてできない!」
「強情な女だな~。誰に似たんだか……。それならこいつを持っていけ」

 白衣の男は右手に持っていた武器と似たような形のものを私に手渡した。

「これは……?」
「俺特製の改造型"グレネードランチャー"だ。筒のところに水を入れて引き金を引けば氷結弾を発射できる。弾が切れたら水を補充しろ」

 "グレネードランチャー"? 氷結弾? とにかくこれで氷を発射できるってこと?

「俺にできることはここまでだ。後は勝手にしろ」
「ま、待ってください! 助けてくれたことには感謝します。せめてお名前だけでも教えてください!」

 白衣の男とフレイムという巨人は私を残して部屋を出ようとするが、引き留めて名前を伺おうとした。

「……こっちのでかいのは俺の弟のフレイムだ。そして俺は"ドク"……いや、ドクター・フロストだ」
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