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第8章 気付き始めた思い
第104話 さよならは言わない
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コンッ コンッ コンッ
「ん? こんな時間に来客か?」
俺が自室でコーヒーを飲んでいると誰かがドアをノックしてきた。マカロンかと思ったが、あいつは俺の部屋にノックして入らない。俺がドアを開けると……。
「やあ、ゼロラ殿。少し話をさせてくれないかな?」
リョウ神官? こいつの方から俺に会いに来るとは珍しい。
「何か重大な話か?」
「重大な話だね。でも危ない話じゃないよ」
そう言ってリョウ神官は部屋のベッドに腰掛けて話し始めた。
「まず一つ。ボク、今度スタアラ魔法聖堂を辞めることになってね」
「とうとうクビになったか」
「クフフフ。君は本当にボクには容赦がない。でも不思議だね。こんな会話でも君となら楽しいよ」
楽しい? こいつが俺との会話でそんなことを言うなんて初めてだな……。
「転属することになったんだ。魔幻塔っていうスタアラ魔法聖堂以上に設備の整った魔法機関にね」
「そりゃ栄転じゃねえか」
「そうなるね。ただあそこに行くとこれまでみたいに君達には簡単に会えなくなる」
リョウ神官が言うには魔幻塔は貴族達の管轄でもあるようだ。警備の目も厳しい。そう考えると、今回の異動には何か裏がある気もするが、リョウ神官は「気にしなくていいよ」と俺を気遣う。
リョウ神官と会えなくなるのか……。こんな奴だが、会えないと思うと寂しくなる。
「また会えるのか?」
「おや? 別れを惜しんでくれるのかい? それは光栄だね。ボクもなんとか会いに行けるようにはしてみるさ。ボクも会いたいからね」
……さっきからリョウ神官の様子がおかしい。こいつは口を開けば変態発言しか飛んでこないのに、そんなものが一切ない。スタアラ魔法聖堂での戦いで見せた真剣な表情とは違う、どこか朧げな表情。
「さてもう一つなんだけど……スーハー。うむ。心に決めてもいざ言おうとすると覚悟がいるね」
リョウ神官は息を整えた後――
「ゼロラ殿。ボクは君が好きだ。付き合ってくれ」
――そう俺に告白した。
「……聞き間違いか? お前今、俺に告白したのか?」
「いつもなら笑って返すところだけど……これについては本気だよ」
リョウ神官の目は真剣に俺の目を見て訴えかけてくる。
赤い瞳が真剣さを語る。こいつは"黙っていれば美人"を地で行くような人間だ。もし他の人間が同じようなことをされれば一瞬で落ちていただろう。だが俺は――
「……今の俺には……その気持ちに答えることはできない」
――"イエス"と答えることができなかった。
記憶のない俺にとってこいつは一番古い友人の一人だ。
普段は変態発言と暴走行為しかしないため、俺が何度も止めに入っているが、こいつ自身は決して悪人ではない。"欲望に忠実"と言うと聞こえは悪いが、それは"自分を偽らない"とも言える。リョウ神官には人間的な魅力が十分にあることも知っている。
だが、そんな真っ直ぐな気持ちに俺はすぐに返事できなかった。
「クフ、クフフフ。いや、いいんだ。なんとなく予想はできていた。今の僕にはゼロラ殿の答えが"ノー"でなかっただけで十分さ」
そんな俺の返事にもリョウ神官は妙にご機嫌だ。
「すまない……。お前が本気なのは分かってる。だからこそ……曖昧な返事はしたくない」
「うむ。それでこそゼロラ殿だね。ボクもきっとそういうところに惚れたんだろう。でも一つだけお願いがある……」
ベッドから立ち上がったリョウ神官は改めて俺の方を見て言った。
「ゼロラ殿、これからはボクのことを"リョウ神官"なんて呼ばずに、もっと親しみやすく"リョウ"と呼んでくれ」
確かに"リョウ神官"なんて呼び方は他人行儀すぎたか。俺は少しうつむいた後に顔を上げて言った。
「分かったぜ・・・・・リョウ」
パシャ
「ん? なんだ今の音は?」
「記念すべき第一枚。しっかり納めさせてもらったよ」
いつの間にかリョウ神官は見たことのない道具を俺に向けていた。
「うむ! 我ながら完璧な出来栄えだね! ゼロラ殿の顔もよく撮れている」
「それは?」
「"カメラ"と言ってね。見た風景をそのまま紙に残せる異国の道具で、それをボクなりに魔道具として再現したものさ」
そう言うと"カメラ"と呼ばれるものから一枚の紙が出てきた。そこには先程の俺の顔が鮮明に写っていた。
「これは記念としてもらっておくよ。今後はカワイ子ちゃんも集めていきたいね」
「そういうところはブレねえんだな。お前らしくていい。本人の許可はちゃんととれよ?」
「クフフフ。善処しよう」
目的を果たして満足したのか、リョウは俺の部屋から出ていこうとした。
「また……会えるんだよな?」
「ああ。無理矢理にでも会いに行くさ」
「それじゃあ、"また"な」
「ああ、"また"ね。"さよなら"は言わないよ」
それだけ言ってリョウは帰っていった。
「また会える日を楽しみにしてるぜ……リョウ」
「ん? こんな時間に来客か?」
俺が自室でコーヒーを飲んでいると誰かがドアをノックしてきた。マカロンかと思ったが、あいつは俺の部屋にノックして入らない。俺がドアを開けると……。
「やあ、ゼロラ殿。少し話をさせてくれないかな?」
リョウ神官? こいつの方から俺に会いに来るとは珍しい。
「何か重大な話か?」
「重大な話だね。でも危ない話じゃないよ」
そう言ってリョウ神官は部屋のベッドに腰掛けて話し始めた。
「まず一つ。ボク、今度スタアラ魔法聖堂を辞めることになってね」
「とうとうクビになったか」
「クフフフ。君は本当にボクには容赦がない。でも不思議だね。こんな会話でも君となら楽しいよ」
楽しい? こいつが俺との会話でそんなことを言うなんて初めてだな……。
「転属することになったんだ。魔幻塔っていうスタアラ魔法聖堂以上に設備の整った魔法機関にね」
「そりゃ栄転じゃねえか」
「そうなるね。ただあそこに行くとこれまでみたいに君達には簡単に会えなくなる」
リョウ神官が言うには魔幻塔は貴族達の管轄でもあるようだ。警備の目も厳しい。そう考えると、今回の異動には何か裏がある気もするが、リョウ神官は「気にしなくていいよ」と俺を気遣う。
リョウ神官と会えなくなるのか……。こんな奴だが、会えないと思うと寂しくなる。
「また会えるのか?」
「おや? 別れを惜しんでくれるのかい? それは光栄だね。ボクもなんとか会いに行けるようにはしてみるさ。ボクも会いたいからね」
……さっきからリョウ神官の様子がおかしい。こいつは口を開けば変態発言しか飛んでこないのに、そんなものが一切ない。スタアラ魔法聖堂での戦いで見せた真剣な表情とは違う、どこか朧げな表情。
「さてもう一つなんだけど……スーハー。うむ。心に決めてもいざ言おうとすると覚悟がいるね」
リョウ神官は息を整えた後――
「ゼロラ殿。ボクは君が好きだ。付き合ってくれ」
――そう俺に告白した。
「……聞き間違いか? お前今、俺に告白したのか?」
「いつもなら笑って返すところだけど……これについては本気だよ」
リョウ神官の目は真剣に俺の目を見て訴えかけてくる。
赤い瞳が真剣さを語る。こいつは"黙っていれば美人"を地で行くような人間だ。もし他の人間が同じようなことをされれば一瞬で落ちていただろう。だが俺は――
「……今の俺には……その気持ちに答えることはできない」
――"イエス"と答えることができなかった。
記憶のない俺にとってこいつは一番古い友人の一人だ。
普段は変態発言と暴走行為しかしないため、俺が何度も止めに入っているが、こいつ自身は決して悪人ではない。"欲望に忠実"と言うと聞こえは悪いが、それは"自分を偽らない"とも言える。リョウ神官には人間的な魅力が十分にあることも知っている。
だが、そんな真っ直ぐな気持ちに俺はすぐに返事できなかった。
「クフ、クフフフ。いや、いいんだ。なんとなく予想はできていた。今の僕にはゼロラ殿の答えが"ノー"でなかっただけで十分さ」
そんな俺の返事にもリョウ神官は妙にご機嫌だ。
「すまない……。お前が本気なのは分かってる。だからこそ……曖昧な返事はしたくない」
「うむ。それでこそゼロラ殿だね。ボクもきっとそういうところに惚れたんだろう。でも一つだけお願いがある……」
ベッドから立ち上がったリョウ神官は改めて俺の方を見て言った。
「ゼロラ殿、これからはボクのことを"リョウ神官"なんて呼ばずに、もっと親しみやすく"リョウ"と呼んでくれ」
確かに"リョウ神官"なんて呼び方は他人行儀すぎたか。俺は少しうつむいた後に顔を上げて言った。
「分かったぜ・・・・・リョウ」
パシャ
「ん? なんだ今の音は?」
「記念すべき第一枚。しっかり納めさせてもらったよ」
いつの間にかリョウ神官は見たことのない道具を俺に向けていた。
「うむ! 我ながら完璧な出来栄えだね! ゼロラ殿の顔もよく撮れている」
「それは?」
「"カメラ"と言ってね。見た風景をそのまま紙に残せる異国の道具で、それをボクなりに魔道具として再現したものさ」
そう言うと"カメラ"と呼ばれるものから一枚の紙が出てきた。そこには先程の俺の顔が鮮明に写っていた。
「これは記念としてもらっておくよ。今後はカワイ子ちゃんも集めていきたいね」
「そういうところはブレねえんだな。お前らしくていい。本人の許可はちゃんととれよ?」
「クフフフ。善処しよう」
目的を果たして満足したのか、リョウは俺の部屋から出ていこうとした。
「また……会えるんだよな?」
「ああ。無理矢理にでも会いに行くさ」
「それじゃあ、"また"な」
「ああ、"また"ね。"さよなら"は言わないよ」
それだけ言ってリョウは帰っていった。
「また会える日を楽しみにしてるぜ……リョウ」
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