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第10章 黒幕達
第129話 イトーさんはもの思う
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今日はゼロラが朝から出かけているため、この俺、イトーは酒場兼ギルドの仕事に専念できる。
ゼロラは汚れ仕事から足を洗って以来、ガルペラ侯爵の下で働いているから俺も面倒な仕事を請け負わずに済んでる。
汚れ仕事さえなければこの店も平和なもんだ。これもゼロラが動いてくれたおかげだな。
ドヨドヨ ザワザワ
そんなことを考えながら呑気に仕事をしていると、店の中が急に騒めき始めた。
「な、なあ。あの姉ちゃんは誰だ?」
「知らねえ……。でも美人だな……」
どうやら原因は店にやって来た一人の女にあるようだ。ツバの大きい帽子をかぶって、水色のワンピースを着たお洒落な女だが――よく見ると俺の知ってる奴だ。
「やあ、久しぶりだね、イトー殿。元気にしてたかな?」
「お前さん……リョウか?」
ワンピースの女――リョウは俺の前まで来ると挨拶してきた。よく見ると顔にも化粧をしている。紫色の髪と体格でなんとなくリョウだとは思っていたが、一瞬別人かとも思った。こいつの普段の姿なんてスッピンに白衣しか見たことなかったが、ここまで化けるとはな……。
「……なんでお前さんがそんなに女らしい格好してるんだ? 店の客も思わず振り向いてたぞ」
「ほうほう。今のボクはそんなに女性的か。これは頑張っておめかしした甲斐があったね」
俺や客の反応を見てリョウはご機嫌にカウンターの席に座る。
「転属されて会えなくなるって聞いてたが?」
「確かに魔幻塔の警備は厳重だね。でも、ボクにかかれば一日ぐらいは抜け出せるさ」
リョウは貴族による監視の厳しい魔幻塔に転属された。その話はゼロラから聞いていた。
それが栄転だってことにも驚いたが、今のこいつの姿を見てさらに驚いた。客の視線を全部集めてやがる。
「ところでゼロラ殿はいないのかな?」
「あいつなら今日は朝からどこかに出かけてるぞ」
目をキラキラ輝かせながら尋ねてきたリョウだったが、ゼロラがいないことを聞くと急に暗くなった。
「そっかー……。せっかくおめかししてまで来たんだけどなー……」
――ちょっと待て。まさかゼロラに会うためにそんな恰好をしてきたのか!? まさかリョウもゼロラに好意を抱いてるのか!?
「ゼロラ殿がいないと意味ないよ……。警備をかいくぐってまでここに来たのにさ……」
リョウはカウンターに肘をつきながら物憂げな表情を浮かべている。
悔しいが絵になる。リョウは普段の奇行のせいで忘れがちだが、かなり整った容姿をしている。黙ってればスレンダーな美人だ。そんなリョウが身なりを整えて物憂げな表情を浮かべると、名画の一枚ではないかと思うぐらい似合う。
ドヨドヨ ザワザワ
店の中が再び騒めき始める。
「あれって、この村の娘だよな?」
「でもあんなに綺麗だったか……?」
そしてその原因はまたもこの店にやって来たもう一人の女のようだ。胸元が開いた黄色いドレスを着たこれまた美人だが――あれも俺の知ってる奴だ。
「リョウさん。やはりここにいらしてましたか」
「へぇ~……マカロンも随分勝負に出た格好だね」
黄色いドレスの女はやはりマカロンだった。普段の素朴なエプロンではなく、派手過ぎず、それでいてちょうどいい具合に落ち着いたドレスを着ていたので、赤い髪と体格を見なければ別人かと思った。こちらもまた顔に薄く化粧をしている。
「マ、マカロンもゼロラに会いに来たのか?」
マカロンがゼロラに好意を抱いていることは知っている。だからこいつもゼロラに会いに来たと思った。ただ中々進展しない関係に俺やリョウがヤキモキしていたのだが――
「いいえ、イトーさん。私はゼロラさんが朝から出かけていることは知ってます。確かにこの服はゼロラさんに見せようと思ったものですけど……」
この様子を見るに、何か吹っ切れたようだ。
「先程、リョウさんがこの店に入るのが見えましてね。珍しくお洒落をしていたので、私も負けじと勝負服を着てきたのですよ」
「クフフフ。流石はボクのライバルだ。すごく似合ってるよ」
ああ、似合ってる。マカロンは普段仕事をするときの地味なエプロン姿に隠れがちだが、かなり整った容姿をしている。かわいらしい小動物のような美人だ。おまけに器量よしときている。密かにマカロンに好意を寄せている冒険者もこの中には多い。
それにしても……この二人、いつの間に仲良くなったんだ? お互いの呼称も変わってるし、恋敵のはずなのにどこか友情のようなものを感じる。
「そうだ。折角だからここにいる人達に、ボクとマカロンのどちらが魅力的か判断してもらおう!」
「いいわよ! その勝負……受けて立つ!」
リョウの提案にマカロンが指をビシッと指して応じる。
勝手に話を進めるな。ここは俺の店だ。
「さあ! みんな! ボク達二人のどちらが魅力的かな!?」
リョウの突飛な発言に店内がどよめく。客達はオドオドしながらも二人を見比べていたが――多くの男性客の目線がある一点に注目していることが分かった。
「あ! これって私の方を見てる人が多いですよね!? ね!?」
「――正確には、"マカロンの胸"を見ている人だな」
そう。男性客の目線の先にあるのは"マカロンの胸"だ。ツルペタなリョウの胸よりも、程よく実ったマカロンの胸の方に目が行くのは男ならば仕方がない。ドレスで胸元が強調されているので尚更だ。
「こ、この胸かー! この胸の差なのかー!? ボクだってこれぐらい欲しかったさー!!」
「きゃ、きゃああ!?」
モミモミモミモミ
リョウが嫉妬にかられた表情でマカロンの胸を揉みしだく。客は全員目のやり場に困ってこちらを見なくなってしまった。
しかし"恋は盲目"とはよく言ったもんだ。リョウやマカロンをここまで変えてしまうのだから。特にリョウはこれまでが変態で奇行ばかりしていたから落差が激しい――
モミモミモミモミ
「ちょ、ちょっと……!? リョウさん、揉みすぎ……!」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ!」
「欲情してんじゃねえ!!」
俺はマカロンの胸を揉み続けるリョウの頭をひっぱたいた。
本質は変わってないようで奇妙な安心感を得てしまった……。
ゼロラは汚れ仕事から足を洗って以来、ガルペラ侯爵の下で働いているから俺も面倒な仕事を請け負わずに済んでる。
汚れ仕事さえなければこの店も平和なもんだ。これもゼロラが動いてくれたおかげだな。
ドヨドヨ ザワザワ
そんなことを考えながら呑気に仕事をしていると、店の中が急に騒めき始めた。
「な、なあ。あの姉ちゃんは誰だ?」
「知らねえ……。でも美人だな……」
どうやら原因は店にやって来た一人の女にあるようだ。ツバの大きい帽子をかぶって、水色のワンピースを着たお洒落な女だが――よく見ると俺の知ってる奴だ。
「やあ、久しぶりだね、イトー殿。元気にしてたかな?」
「お前さん……リョウか?」
ワンピースの女――リョウは俺の前まで来ると挨拶してきた。よく見ると顔にも化粧をしている。紫色の髪と体格でなんとなくリョウだとは思っていたが、一瞬別人かとも思った。こいつの普段の姿なんてスッピンに白衣しか見たことなかったが、ここまで化けるとはな……。
「……なんでお前さんがそんなに女らしい格好してるんだ? 店の客も思わず振り向いてたぞ」
「ほうほう。今のボクはそんなに女性的か。これは頑張っておめかしした甲斐があったね」
俺や客の反応を見てリョウはご機嫌にカウンターの席に座る。
「転属されて会えなくなるって聞いてたが?」
「確かに魔幻塔の警備は厳重だね。でも、ボクにかかれば一日ぐらいは抜け出せるさ」
リョウは貴族による監視の厳しい魔幻塔に転属された。その話はゼロラから聞いていた。
それが栄転だってことにも驚いたが、今のこいつの姿を見てさらに驚いた。客の視線を全部集めてやがる。
「ところでゼロラ殿はいないのかな?」
「あいつなら今日は朝からどこかに出かけてるぞ」
目をキラキラ輝かせながら尋ねてきたリョウだったが、ゼロラがいないことを聞くと急に暗くなった。
「そっかー……。せっかくおめかししてまで来たんだけどなー……」
――ちょっと待て。まさかゼロラに会うためにそんな恰好をしてきたのか!? まさかリョウもゼロラに好意を抱いてるのか!?
「ゼロラ殿がいないと意味ないよ……。警備をかいくぐってまでここに来たのにさ……」
リョウはカウンターに肘をつきながら物憂げな表情を浮かべている。
悔しいが絵になる。リョウは普段の奇行のせいで忘れがちだが、かなり整った容姿をしている。黙ってればスレンダーな美人だ。そんなリョウが身なりを整えて物憂げな表情を浮かべると、名画の一枚ではないかと思うぐらい似合う。
ドヨドヨ ザワザワ
店の中が再び騒めき始める。
「あれって、この村の娘だよな?」
「でもあんなに綺麗だったか……?」
そしてその原因はまたもこの店にやって来たもう一人の女のようだ。胸元が開いた黄色いドレスを着たこれまた美人だが――あれも俺の知ってる奴だ。
「リョウさん。やはりここにいらしてましたか」
「へぇ~……マカロンも随分勝負に出た格好だね」
黄色いドレスの女はやはりマカロンだった。普段の素朴なエプロンではなく、派手過ぎず、それでいてちょうどいい具合に落ち着いたドレスを着ていたので、赤い髪と体格を見なければ別人かと思った。こちらもまた顔に薄く化粧をしている。
「マ、マカロンもゼロラに会いに来たのか?」
マカロンがゼロラに好意を抱いていることは知っている。だからこいつもゼロラに会いに来たと思った。ただ中々進展しない関係に俺やリョウがヤキモキしていたのだが――
「いいえ、イトーさん。私はゼロラさんが朝から出かけていることは知ってます。確かにこの服はゼロラさんに見せようと思ったものですけど……」
この様子を見るに、何か吹っ切れたようだ。
「先程、リョウさんがこの店に入るのが見えましてね。珍しくお洒落をしていたので、私も負けじと勝負服を着てきたのですよ」
「クフフフ。流石はボクのライバルだ。すごく似合ってるよ」
ああ、似合ってる。マカロンは普段仕事をするときの地味なエプロン姿に隠れがちだが、かなり整った容姿をしている。かわいらしい小動物のような美人だ。おまけに器量よしときている。密かにマカロンに好意を寄せている冒険者もこの中には多い。
それにしても……この二人、いつの間に仲良くなったんだ? お互いの呼称も変わってるし、恋敵のはずなのにどこか友情のようなものを感じる。
「そうだ。折角だからここにいる人達に、ボクとマカロンのどちらが魅力的か判断してもらおう!」
「いいわよ! その勝負……受けて立つ!」
リョウの提案にマカロンが指をビシッと指して応じる。
勝手に話を進めるな。ここは俺の店だ。
「さあ! みんな! ボク達二人のどちらが魅力的かな!?」
リョウの突飛な発言に店内がどよめく。客達はオドオドしながらも二人を見比べていたが――多くの男性客の目線がある一点に注目していることが分かった。
「あ! これって私の方を見てる人が多いですよね!? ね!?」
「――正確には、"マカロンの胸"を見ている人だな」
そう。男性客の目線の先にあるのは"マカロンの胸"だ。ツルペタなリョウの胸よりも、程よく実ったマカロンの胸の方に目が行くのは男ならば仕方がない。ドレスで胸元が強調されているので尚更だ。
「こ、この胸かー! この胸の差なのかー!? ボクだってこれぐらい欲しかったさー!!」
「きゃ、きゃああ!?」
モミモミモミモミ
リョウが嫉妬にかられた表情でマカロンの胸を揉みしだく。客は全員目のやり場に困ってこちらを見なくなってしまった。
しかし"恋は盲目"とはよく言ったもんだ。リョウやマカロンをここまで変えてしまうのだから。特にリョウはこれまでが変態で奇行ばかりしていたから落差が激しい――
モミモミモミモミ
「ちょ、ちょっと……!? リョウさん、揉みすぎ……!」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ!」
「欲情してんじゃねえ!!」
俺はマカロンの胸を揉み続けるリョウの頭をひっぱたいた。
本質は変わってないようで奇妙な安心感を得てしまった……。
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