記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第10章 黒幕達

第130話 ヒーロー・アンド・カップル

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 今日は朝からゼロラさんは一人でギャングレオ盗賊団のアジトに向かっています。
 自分もついて行こうとしたのですが、『向こうも乗り気である以上、一人で来るという約束を違えるわけにはいかない』と言われてついて行けませんでした。
 王宮でのお仕事も早く終わったので、ミリアさんと一緒にセンビレッジの街を歩きながらゼロラさんの帰りを待つことにしました。

「それにしてもセンビレッジって本当に賑わってるわよね。王都以上じゃないかしら」
「ガルペラ侯爵の手腕のおかげですね」

 センビレッジの様子を二人で見ながら思いました。色んな商店が並んでいて、商品もたくさんあります。ガルペラ侯爵の理想が実現すれば、他の街もセンビレッジのように賑わうかもしれません。

「あ! ミリア様だ!」
「本当だ! 聖女ミリア様だ!」

 街の人たちが時折ミリアさんに反応します。聖女であるミリアさんが街中を歩いていたら当然です。

「な、なんでアタシのことがバレたのかしら……?」

 むしろなんでバレないと思ったのですか? 髪型をロングヘア―からポニーテールにしただけで変装になると思ってましたか?

「ミリアさんって、結構ポンコツですよね」
「な・に・が・い・い・た・い・の・か・し・ら?」

 久しぶりに出ました。ミリアさんの"一字間隔置き脅し"。でももう怖くないです。

「自分をビビらせようとしても無駄ですよ。ミリアさんのことは自分が良く知ってますから。いつだって優しさが隠れているのがミリアさんです」
「!? ア、アンタ! そういう事をこんな街中で平然と……!?」

 ミリアさんは顔を赤くしながら手で覆い隠してしまいました。自分とミリアさんの関係が進んでから、こういう一面もかわいいと思えるようになってきました。

「あのポニーテールの人って?」
「ミリア様だろ」
「じゃあ、あの二人の関係は?」
「バカップルだろ」

 通りすがりの人達がそんなことを言ってました。傍からそう見えてしまうと思うと自分も恥ずかしくなってきました。



 そうして少し歩いていると、大勢の人が舞台の周りに集まっているのが見えました。
 何かと思ってミリアさんと一緒に見に行くと、何やらショーをしているようです。

「ヘンサルカーどもよ! 貴様らのボス、ヘンショッカーはどこにいる!? このキャプテン・サラダバーが成敗してくれる! ビー・ヘルシー!」
「ウッキー! ボスが出るまでもない! 俺達が倒してやるぞ、キャプテン・サラダバー!」

 な、なんですかあれは!? 緑色の全身タイツに赤いマフラー、緑色のヘルメットをかぶった人がポーズを決めながら、黒色の全身タイツと猿のお面をかぶった人達と戦ってます!?

「最近噂で聞いた"ヒーローショー"ってやつね。元々はパサラダ野菜の宣伝だったとか。それにしてもおかしな恰好で……」
「カ、カッコイイー!」
「……え?」

 すごくカッコイイです! 衣装もさることながら、ポーズやセリフもすごくカッコイイです! ヒーローショーってこんなにカッコよかったんですね!

「あれってカッコイイのかしら?」
「カッコイイに決まってるじゃないですか!」

 ミリアさんは分かってないです! あのセンスの良さが分からないのでしょうか!?

 ガバッ!

「――あれ?」
「え!? ちょ!? ラルフル!?」

 ミリアさんのセンスに文句を言おうとしたら、全身を黒い布で覆い、悪そうな仮面をつけた人に攫われてしまいました! 何がどうなってるのですか!?

 サラサラ バッ!

 自分が事態を飲み込めていないと人ごみを挟んで反対側にいる人が何やらスケッチを自分に見せてきました。

『お嬢ちゃん、ゴメン。人質役でショーに飛び入り参加してください』

 ……これってもしかして、自分が人質としてステージに上がるってことですかね? 後、毎度のことながら自分は男です。
 そんなことを考えていると自分は抱えられたままステージに上げられました。

「グハハハ~! 待たせたな、キャプテン・サラダバー! 大人しくするのだ! このお嬢ちゃんがどうなってもいいのかな~?」
「くっ!? 卑怯だぞ! ヘンショッカー!」

 自分を捕まえている人――ヘンショッカーさんは自分を人質にしてキャプテン・サラダバーさんを脅しています。

 サラサラ バッ!
『そのままヒロイン役で捕まえられててください。後は流れで』

 ……やっぱりこのまま役を演じ切るしかないのでしょうか? 女性に間違われたままなのは不服ですが。

 サラサラ バッ!
『ちょっと待ちなさい。アイツは男よ』

 自分が憂鬱になりながら捕まえられていると、ミリアさんがスケッチを持ち上げて遠くから訴えてくれました!
 そうです! 自分は男です! 人質を女性にするならばせめてミリアさんの方を――

 サラサラ バッ!
『え? あの容姿で? でも仕方ないのでこのまま押し切ってもいいですか?』

 自分にスケッチで指示を出してた人はミリアさんにも見えるように再度スケッチを出します。
 押し切らないでください。気にしてるんです。

 サラサラ バッ!
『ならあらかじめ、人質のために女性用の衣装ぐらい用意しなさい!』

 ミリアさん? なんで止めないんですか? 怒りますよ?

 サラサラ バッ!
『すいません。でも彼に女性用の服を着せたら似合いそうですよね』

 サラサラ バッ!
『似合うに決まってるでしょ! この間着た時はメッチャ似合ってたわよ!』

 論点がズレてきてませんか? それと二人ともそんなに素早くスケッチで論争しないでください。

 サラサラ バッ!
『ですよね~。こちらも完全に女の子だと間違えましたもん』

 サラサラ バッ!
『それは仕方ないわ。アイツの容姿は反則よ』

 もうこれ完全に論点変わってますよね? 自分、怒っていいですか?

 サラサラ バッ!
『では次の機会にはちゃんと女性用の衣装を用意してもいいですか?』

 サラサラ バッ!
『スタアラ魔法聖堂聖女の権限で許可します。後、衣装はメイド服で』

 職権乱用ですよね? こんなところでそんな権限使わないでください。衣装も指定しないでください。

 サラサラ バッ!
『あなた聖女様だったのですか!? 問題ないですか!?』

 サラサラ バッ!
『問題なし』

「問題ありまくりですよぉおお!!」
「へぇあぁあ!?」

 ドシーン!

 自分は自分を捕まえていたヘンショッカーさんを投げ飛ばしました。
 ――流石に怒りました!!

「え? ちょ? 台本と違う――」

 キャプテン・サラダバーさんは自分の様子を見て慌てています。でももう関係ありません!

「こうなったら……自分がヘンショッカーさんを倒します!」
「いや、商会長――じゃなかった、ヘンショッカーもう倒れてますけど?」

 サラダバーさんに言われて気付きました。さっき自分が投げ飛ばしたので、ヘンショッカーさんはすでに伸びてます。

「……じゃあ! あなたを倒します!」
「なんで!?」

 自分の怒りが収まらないからです!!
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