記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第15章 メカトロニクス・ファイト

第195話 対決・謎の追跡者

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 六人目の追跡者は俺の前に立つと、両拳を自らの眼前に構える。

「<ボクシング>スタイルか……」
「…………」

 俺の言葉にも追跡者は何の反応も示さない。
 追跡者の構えは<ボクシング>だ。俺と同じく、こいつも素手での格闘戦をメインとしているようだ。

 ブォン!

「!!?」

 突如放たれる追跡者のパンチ。そのスピードは――俺よりも速い!

「……どうやら、本当にとんでもない奴みたいだな……」
「…………」

 小手調べの意味もあったのだろう。俺はそのパンチを難なく躱すことができた。
 追跡者のパンチはおそらく、まだ全力ではない!

「…………!」

 追跡者は今度はパンチのラッシュを仕掛けてくる。俺の後ろには壁。
 俺は横に躱してパンチを避ける。

 ボコォン! ボコォン!

「なんだと!? 壁を連続で砕いている!?」

 追跡者は俺の後ろに壁があることもお構いなしに、ラッシュで壁を砕きながらひたすらに俺を追い込んでくる!

 ガゴォオン!

「ッ!!? なんて奴だ……!?」

 ひたすら壁伝いに横へと逃げる俺を追うその拳は、近くにあった鉄骨さえも飴細工のようにへこませてしまった。
 ジフウの<黒蛇の右>や<青龍の左>のように、腕に魔力を込めたわけでもない。
 俺と同じ"ただのパンチ"で壁や鉄骨を簡単に破壊してしまったのだ。

「ウラァア!」

 ボゴン――

 俺も負けじとキックで反撃に出る。
 俺のキックは追跡者の横腹に確実に入っていた。

「…………」

 だが、ダメージは"全くと言っていいほど"入っていなかった。
 俺に蹴られた場所を軽く擦る追跡者だったが、問題ないと判断したのか、すぐに構えを戻す。
 俺も脚から伝わる感触で分かっていた。まるで、"超巨大な大木でも蹴った"ような感覚……!

「ゼロラ殿。あの六人目、相当手強いな……!」
「ああ。俺でも勝てる自信がなくなるほどだ……!」

 傍で他の五人の相手をしながら俺の様子を見ていたロギウスも、この六人目の異常なまでの実力に戦慄している。
 他の五人の実力は決して高くない。うまく様子を伺いながら戦えば、各個撃破することも可能だろう。

 ……だが、この六人目の追跡者だけは違う。
 まだ戦いの序の口だが、今のやり取りだけでも分かる、圧倒的すぎるパワーとタフネス。

 このままでは危ない……!



「うぉおお!! ゼロラの旦那から離れるどぉお!!」

 そんな危機感を抱く俺達の頭上から、俺の名を叫びながら誰かが飛び降りてきた。

「オクバ!?」

 頭上を確認した俺の目に映ったのは、元魔王軍亜人隊隊長のオクバだった!
 オクバはそのまま持っている斧を両手で握りしめて六人目の追跡者へとその斧を振り下ろした!

 ガキィイン!

「…………」
「な、なんだど!?」

 そのオクバの斧を、追跡者は片手で軽々と受け止めてしまった。

 ブォオン!

「う、うぉおお!?」

 そして地面に着地しようとしたオクバの足を掴むと、オクバのその巨体をまたも片手で軽々とこちらへ投げ飛ばしてきた!

「オクバ!! しっかりしろ!!」

 俺は慌てて投げ飛ばされてきたオクバをキャッチした。

「だ、大丈夫だど。だけどあいつ、何者だど……!?」
「ゼロラ殿の知り合いのオークか。オークの巨体を片手でこうも容易く投げ飛ばすなんて……!?」

 オクバもロギウスも目の前の追跡者に驚きを隠せないでいる。



「狼藉者ぉお! 覚悟でおじゃぁあ!!」

 驚愕する俺達の後ろから、聞いたことのある声が聞こえた。

「オジャル伯爵!?」
「その黒装束どもをひっ捕らえるでおじゃ! かかるでおじゃ!」

 声の主はオジャル伯爵だった。
 部下達を引き連れて、追跡者五人へと攻撃を仕掛ける。

「…………」

 それを見ていた六人目の追跡者は、右手で合図を送る。
 それに呼応したかのように他の五人も含めて、追跡者は全員その場から退却していった。

「危なかったな……」
「ああ……。オジャル伯爵達のおかげで助かった……」

 追跡者達も流石に分が悪いと判断したのだろう。
 オジャル伯爵達の加勢により窮地を逃れた俺とロギウスは、安堵の溜息をつくのであった。
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