記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第15章 メカトロニクス・ファイト

第209話 不安定な交渉

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「……なーんでそーだと思うんだ~? 助けてやった恩人に対してよ~?」

 俺の問いかけにフロストが顔をしかめながら反応する。

「フロスト。お前は以前、マカロンが魔王軍の残党に誘拐されたことは知ってるな? いや、知ってるどころかマカロンを救出した張本人だ。あの後マカロンが言ってたんだ。『ドクター・フロストと名乗る男に助けられ、"グレネードランチャー"という武器を渡された』ってな」
「ほーん。それで俺がマカロンの弟であるラルフルのみを助けようとしたって言いてーのか~? それは早計に過ぎるんじゃねーか~?」

 フロストはあくまでシラを切るつもりらしいが、今の話ではっきりした。

 なぜなら――

「マカロンとラルフルの二人が再会し、周囲にも二人が家族であることが知れ渡ったのは、"マカロンが誘拐されたその日"なんだ。こんな山奥にその情報が、そんなに早く伝わるものなのか?」
「!!? そ、それは……!」

 どうやら図星のようだ。フロストの表情が一気に強張る。

「フロスト。お前はマカロンとラルフルが兄妹であることを、ずっと昔から知っている。そして二人を陰ながら見守っていた。違うか?」
「…………」

 完全にだんまりとなったフロスト。俺はさらに質問を重ねる。

「そしてお前はあの姉弟に対して、"何か後ろめたい事情"がある。いざという時、助けに現れるのに、"傍にいてやることができない"ほどに後ろめたい事情があるんだろ? それが何かまでは分からねえが」
「……ゼロラ~。お前って、結構頭いいんだな~。ただのチンピラだと見くびってた俺の失態だぜ~。クカカカ~……」

 他人に"頭がいい"と褒められたのは記憶喪失になったこの二年間で初めてだぜ。

「もっとも。今の話は俺もロギウス達から聞いた話と合わせての想像だったんだがな。俺はそんなに頭がいい人間じゃねえよ」
「カマかけてる時点で相当だと思うがな~。お前は面白い奴だな~、ゼロラ~。クーカカカ……!」

 乾いた笑い声を上げながら、どこか楽し気なフロスト。
 変な所で気に入られてしまったようだ。

「実際、僕もゼロラ殿は結構なキレ者だと思うけどね。謙遜じゃなくて、本気で本人が気づいてないみたいだけど」

 傍で話を聞いていたロギウスもコメントしてきた。
 俺ってそんなに頭いいのか? 大体殴って解決するタイプだぞ?

「フロスト元隊長。あなたがマカロンとラルフルの状況を逐一把握できたのは、黒蛇部隊を使っていたからだろう? あなた自身が隊長を務めていた、当時のルクガイア王国騎士団二番隊の後身。彼らから情報を聞き出していた」
「あ~、そーだよ。だが、全部が全部追いきれたわけじゃーね~。マカロンが誘拐された件は、事前に黒蛇部隊が情報を手に入れられたから俺も動けた。王宮でラルフルを助けられたのも、単なる偶然だ。俺はそもそも"円卓会議"で混乱に乗じて、レーコ公爵を殺すつもりでフレイムを上空に待機させてただけだからな~」

 レーコ公爵を殺すため……。
 そのためにフレイムを上空で待機させていたが、事態を確認したために指示をラルフルの援護に変更させたのか。

「黒蛇部隊も律儀なんだよな~。追放された元隊長にわざわざ報告なんてしてくれてよ~。俺は……あの二人のことは放っておきたいんだが……やっぱ放っておけねーんだよな~……」

 どこか寂しくて悲しそうな眼をするフロスト。
 そんな姿を見ると、この男は正気と狂気の間を行ったり来たりしているように見える。

「フロスト元隊長。ラルフルは今、僕達と共に戦うために過去と対峙しようとしている。そのためにバルカウスと戦う可能性もあるだろう」
「は~!? なーんでラルフルがバルカウスと戦うことになってるんだ~!? ロギウス~、てめーの差し金だな~!?」

 ラルフルの話を聞いて、フロストはそれがロギウスの差し金だと勘繰る。どうやらフロストから見てもロギウスという男は腹に一物抱えた人間に見えているようだ。

 ――煩悩はおっぱいでいっぱいだけど。

「彼の了承を得たうえで戦いの場に出てもらっている。そんなにラルフルのことが心配なら、自分も一緒にいればいいんじゃないか?」
「……今更一緒にいてやるわけにもいかねーよ」

 ロギウスが諭すようにフロストを勧誘するが、やはり後ろめたさからなのか、応じようとはしない。

「フロスト。お前が二人の傍にいてやれない事情を話す必要はない。だが、あの二人は今現在もこの戦いの渦中にいる」
「…………」
「お前に無理を言うつもりはない。だが、マカロンとラルフルの姉弟を守ってやりたいと思うのならば、お前にはあの二人の傍にいてほしい。俺だってあの二人を守りたい」
「……そーか~」

 黙って俺の話を聞いてくれたフロストは、今度はロギウスの方を見て確認するように問いかける。

「……俺が王都の近くまで出てきたら、レーコ公爵を殺しに行くかもしれねーぞ?」
「"手綱を握っておく"という意味では、合理的だろうね」
「……俺はすでにてめーらの仲間になってるバクトのアホが嫌いなんだが?」
「それでもレーコ公爵のように、"殺したいと思っている"程ではないだろう? 別に彼と仲良くしてほしいとは思ってないさ」

 ロギウスへの確認を終え、しばしの沈黙の後、フロストが口を開いた。



「……クカカカ! いいだろう! てめーらの改革活動のための戦いとやらに手を貸してやる! だが、俺が手を貸すのはあくまで"戦闘だけ"だ! これはいわば、俺という傭兵との契約! 目処が付いたら俺は、また元の生活に戻らせてもらうからな~! クーカカカカ!」

 これまでの落ち込んだ声とは違い、フレイムに俺達の相手をさせていた時のような明瞭な声と高笑い。
 フロストの内心は複雑だろうが、"マカロンとラルフルのため"にも協力してくれることは分かった。

「フレイム! お前ももちろん協力しろ! 嫌とは言わせねーからな~?」
「フッオオオオ! オオオ!」
「『モチのロンだよ! 兄ちゃん!』か。上々だ~!」

 横で話を聞いていたフレイムも協力してくれるようだ。

「フレイムが協力してくれるのは有難いが、やりすぎるんじゃねえぞ?」
「安心しな~。王国騎士団の相手をする時は、フレイムの出力を"対人戦闘用"に切り替えてやるからよ~。傭兵となる以上、主の意向には従うぜ~」

 やっぱり俺達と戦った時は対人戦を想定してなかったんじゃないか……。

 何はともあれ、これで強力な戦力が味方についた。王国騎士団との戦うことになっても、こいつらがいれば何とかなりそうだ。
 ――やり過ぎなければの話だが。

「世紀の天才科学者、ドクター・フロスト! 【王国最強】のサイボーグ、フレイム! 俺達兄弟が、お前らの戦いを勝利に導いてやるよ~! クーカカカカ!」
「フオオオ! フッオオオー!」
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