記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第20章 獅子は吠え、虎は猛る

第288話 ケジメ

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「ダハハハ……。ま、まさかこのオレが……本気を出したこのオレが、負けちまうなんてよぉ……」

 サイバラはまともに体を起こせず、仰向けのまま話し始める。

「約束だ……サイバラ。まずはシシバ達に謝ってもらうぜ。――丁度、当人達も来たみたいだしな……」
「……何ぃ?」

 ゼロラの言葉を聞いて、サイバラはゼロラと同じ方向に顔を向ける。





「フン……。本当にあのサイバラが内通者――【虎殺しの暴虎】だったとはな」
「旦那様、頭領……。いかがいたしましょうか……?」
「……バクトはん。ここは俺に任せてくれまへんか?」

 ギャングレオ盗賊団の元締め、バクト。参謀長、コゴーダ。そして頭領、シシバ。
 その三人がゼロラとサイバラの前に現れた。

「……いいだろう、シシバ。サイバラの処分は貴様の好きなようにしろ」

 バクトから了承得たシシバはサイバラの方へと歩いて近づいて行った――

「シ……シシバの……カシラぁ……」

 サイバラは重たい体をひるがえし、自らの近くに立ったシシバの前で両手と両膝を着く。

「シシバのカシラ……。今回の騒動は全てオレの責任ッス……。どうぞオレのことは好きなように殺してくだせぇ……」

 サイバラは腹を括っていた。
 ギャングレオ城を崩壊させ、ギャングレオ盗賊団を暴走させた責任が許されるはずなどない。
 ゼロラに敗北したことで、サイバラは完全に決心した。
 だからここで"偽っていた自分自身"を受け入れてくれたシシバに殺されるならば、それはサイバラにとって本望だった――





「……フンッ!」

 バキンッ

 サイバラの頬にシシバの蹴りが"一発だけ"入る。

「……今回はこれで勘弁しといたるわ」
「……待ってください。なんで……なんで"一発蹴り入れた"だけで終わるんスか……?」

 シシバが制裁として"一発蹴りを入れただけ"だったことにサイバラは不満を漏らした。

「オレはギャングレオ盗賊団を滅茶苦茶にしたんスよ!? それなのにこれで終わりって――オレには……オレにはその程度の価値しかないとでも――」
「そんなんちゃうわ。今回の騒動は俺にかて責任はある」

 不満を漏らすサイバラを見ながら、シシバは"サイバラに隠していた"事実を伝え始めた――

「サイバラ。お前がただギャングレオ盗賊団に入ったわけやないことには、ずーっと前から気づいとった。せやから、俺はお前の行動をコゴーダに監視させとったんや」
「コ……コゴーダの兄貴に……?」
「ええ。私は頭領から秘密裏に頼まれていたのですよ。『サイバラ君がおかしな行動をしないか見張っていてほしい』とね……」

 シシバはサイバラが内通者である可能性に気付いていた。
 そのためコゴーダにサイバラの見張りを任せていたことを――

「ですが……私の力ではサイバラ君の行動を完全に把握することはできませんでした。ルクガイア暗部構成員としても、サイバラ君は優秀だったようですね……」
「まあ、俺もお前が独断でおかしなことするとは思うてへんかったからなあ。……ギャングレオ盗賊団の一員として動いとるお前はなんや楽しそうやった。ただ演技をしとるだけには見えへんかったんや」

 コゴーダとシシバはサイバラにこれまで隠していた事実を伝え続ける。

「……サイバラ。俺から頼ましてもらうわ。もう一度、"ギャングレオ盗賊団特攻隊長"として俺らに協力してくれへんか?」
「そ……そんな……。な、なんでオレなんかに……?」
「お前を"特攻隊長"として幹部に就かした気持ちは嘘やない。お前が密偵やろうがなんやろうが……お前ならちゃーんとやってくれると思うたんや――」

 シシバは膝を折ってサイバラの顔を見つめながら言葉を紡ぐ。



「――もういっぺん戻ってこい、サイバラ。"俺はお前を最初から認めとる"。そうでなきゃ、お前に特攻隊長なんかやらせへん」



 その言葉を聞いたサイバラは顔を地面へと伏せる――

「あ……あぁ……。あああぁ……!ああああ!!」

 そのままサイバラは涙を流して叫び始めた。

 これまで仲間を騙し続けていた己の愚かさを――
 そんな己のことを認めてくれた"本当の主"への感謝を――
 今でもまだ己のことを仲間だと思ってくれることへの幸福を――
 己を許してくれる仲間への謝罪を――

 それらの気持ちを吐き出すべく、サイバラはひたすらに泣き続けた。



「ス、スンマセンしたぁ……! 本当に……本当にスンマセンしたぁああ……!!」
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