記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第24章 常なる陰が夢見た未来

第364話 一緒に帰ろう

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「ゼロラさん達は大丈夫なのですか……?」
「さあ? どうやろ? ここからやと、魔王城の中の様子なんて、分からへん」
「まあ、オレ達はここで言われた通りに、こいつらを見張っておくしかないッスね」

 魔王城の外では、ガルペラ、シシバ、サイバラの三人が待機していた。
 この三人に与えられた役目、それは目の前にいる三人を見張ること――

「う、うぐぅ……! お前ら、僕にこんなことをしてただで済むと……!? クウッ!?」
「い、痛いですわ……! ウウゥ……!」
「致し方あるまい。拙者らでは、この者達に歯が立たぬ……」

 勇者レイキース、賢者リフィー、戦士バルカウスの勇者パーティー。
 リョウに魔法を封じられ、サイバラによって両手両足を折られた三人は、地べたに転がって苦痛をこらえていた。

「しっかし、勇者パーティーって言っても、全然大したことなかったッスね。魔法が封じられていたとはいえ、オレに簡単に手足を折られてるッスし」
「こいつらは不意打ちと魔法を交えた連携ができんと、こんなもんや。手足が折れたぐらいで、ピーピーうるさいの~」
「普通はそうなると思うのです……」

 目の前で屈服する勇者パーティー三人を見て、サイバラとシシバは呆れた表情をし、ガルペラは軽く引いていた。

「お前ら! 勇者である僕にこんな真似をした以上、後でどうなっても――」
「なんだぁ? オレにメンチでも切りてぇのかぁ? 勇者さんよぉ? てめぇ、今の状況分かってんのかぁ? おおぅ?」
「う、うぐ……!?」
「メンチ切って、逆にサイバラにメンチ切られてビビりおった。ホンマ、しょっぱいやっちゃで」

 今も目と口で抵抗の意志を見せるレイキースに、サイバラが屈んでサングラスを外しながら睨みつける。
 もはや無力化し、目の前で醜態をさらす勇者など、サイバラ達には何一つ怖くない。
 そんなレイキースの姿を見て、シシバもさらに呆れかえる。



 ――そんな時、魔王城に変化が起こった。



「み、見るのです! 魔王城を覆う闇が――<ナイトメアハザード>が晴れていくのです!」
「ほ、本当ッスね……! 中で何が起こったんスか!?」
「分からへん……。分からへんが、なんや上手いこと行ったみたいやな……!」

 ガルペラ達三人の目の前にある魔王城から、ずっと溢れ出ていた<ナイトメアハザード>が消えていく。
 絶望、憎悪、憤怒、嘆き――
 一人の少女が抱いた負の感情が、どんどんと晴れていく。

「あ、ありえない……。【栄光の勇者】である僕でさえ、倒せなかったのに……!?」

 消えゆく<ナイトメアハザード>を見て、レイキースも驚いた。

 だが、その驚きは"安心"から来るものではない。
 勇者である"自分とは違う"誰かが、この魔王の眷属が起こした異変を解決してしまったこと――
 絶対的存在である勇者の存在を揺るがす者がいる――

 レイキースの驚きは、そこからくる"焦燥"によるものだった。



「おう、シシバにサイバラ。それにガルペラ侯爵。そっちも手筈通りに行けたみたいだな」
「こっちも無事に終わったよ。ただ、まだやることがあるんだよね……」

 そんな<ナイトメアハザード>が消えた魔王城の中から、ジフウとリョウが現れた。
 二人とも晴れ晴れとした表情をしているが、レイキース達には難色を示している。

「ガルペラ侯爵。レイキース達を先に、<転移魔法陣>でウォウサカに戻すことはできるか?」
「できるのですけど、流石に何度も使えないのです。あと一回使ったら、次に使うのに時間がかかるのです」

 ジフウはガルペラにこの後のことを考えて願い出た。
 ガルペラは首をかしげるが、今その事情を説明することはできなかった。

「できるのなら、頼む。ガルペラ侯爵もレイキース達と先にウォウサカへ戻っていてくれ。その後、近くの漁師にでも頼んでこっちに船をよこしてくれ」
「事情は呑み込めないのですが……分かったのです。私はレイキースさん達を連れて、先に戻るのです」

 それでもガルペラはジフウの願いを聞き、<転移魔法陣>を展開する。
 レイキース、リフィー、バルカウスの三人を連れて先にウォウサカへ戻る準備を始めた。

「それでは、後は任せるのです。すぐに漁師さんにもお願いするのです」
「待て! 話はまだ――」

 シュゥウウン――

 事態について知ろうとするレイキースの言葉も聞かず、ガルペラは勇者パーティーの三人を連れて<転移魔法陣>と共に消えていった。

「やれやれ。レイキース達がいなくならないと、あの子も出てこれないからな」
「『あの子』? なんのこっちゃ? ここに俺ら以外の誰かでもおるんか?」
「事情は後で説明するよ、シシ兄。それにしても、このまま船が来るまで待ちぼうけも退屈だね―― ん?」

 ジフウ達三人兄妹が話をしていると、リョウが何かに気付いた。
 リョウの目線の先にあるのは、海に浮かぶ一隻の船――

「あ! あれはギャングレオ盗賊団が貿易に使ってる貨物船ッスね。こっちに向かってくるッスが、なんでまた――」
「ウチの貨物船やと? 多分、コゴーダ辺りが舵切っとるんやろな。心配で迎えにでも来てくれたんかいの~」

 その船を同じく確認したサイバラにより、船の正体が分かる。
 それはギャングレオ盗賊団が所有する貨物船。
 ルクガイアでは珍しい帆のないデザインのため、サイバラとシシバもすぐに状況を理解した。

「おや、好都合だね。それじゃ、ボクはあの船に飛んでいって、先に連絡してくるよ」
「大丈夫か、リョウ? 近づいてきてるとはいえ、結構な距離があるぞ?」
「問題ないね。それに、あの船ならあの子も安心できそうだ」

 ジフウに心配されるが、リョウは軽々と魔法で空を飛んで船へと向かった。

「せやから、『あの子』って誰やねん?」
「まさかこんな絶海の孤島に、人でもいたんスか?」

 今だに事情が呑み込めない、シシバとサイバラ。
 そんな二人を他所に、ジフウは今だ魔王城の中にいる仲間達に声をかけた。

「おーい。もう出てきて大丈夫だぞ。丁度、迎えの船も来てるみたいだしな」

 その声を聞いて、中から"四人"が外に出る。

「ほら、大丈夫ですよ。もう、レイキース様達もいません。自分達もついてます」
「怖がらなくていいからね? ここにはあなたを虐げる人はいないから」

 ラルフルとマカロンが前を歩いて先に出てくる。
 誰かをあやすように、優しく後ろへ声をかけながら――



「ミライ、大丈夫だ。ラルフルとマカロンが言う通り、怖がる必要はないんだ」
「えっぐ……ひっく……。ほんとに……? ほんとにこわい人、いない……?」

 そしてラルフルとマカロンに導かれ、ゼロラも外へと出る。
 その腕に抱かれているのは、幼い少女――
 ゼロラがかつて【伝説の魔王】ジョウインだったころ、【慈愛の勇者】ユメとの間にできた、愛娘――ミライ。

「ひ、ひいぃ……!? お日様、まぶしいよぉ……!」
「ん? この子は誰ッスか? でもなんだか、眩しがってるみたいッスね。ここはオレのグラサンを――」

 数年ぶりに見る太陽の光に、目を覆うミライ。
 そんなミライのために、自らのサングラスを差し出そうとするサイバラ。

「ひいぃ!? こ、こわい! この人のおめめ、こわい!」
「ドアホ! こないに小さいお嬢ちゃんを怖がらせるなや!」

 しかし、ミライはサングラスを外したサイバラの目を怖がってしまう。
 そんなサイバラに対して、シシバは喝を入れる。

「ひいいぃ!? この人、声大きい! こわい!」
「おい、シシバ。この子を怖がらせたら、どうなるか思い知らせてやろうか?」
「な、なな、なんやゼロラはん? え、えらいガチでキレとらへんか?」

 だが、ミライはそんなシシバの喝にも怖がってしまう。
 ゼロラも思わず、シシバがビビるほどの剣幕で睨みつけてしまう。

「ゼロラさん、ダメですよ? ミライちゃんが余計に怖がっちゃいます」
「ゼロラさんはミライちゃんのお父さんなんですから。笑顔でいなくちゃ。ね?」
「す、すまない……」

 そんなゼロラもまた、ラルフルとマカロンに注意される。

「ゼロラはんが『お父さん』? こらまた、どないなっとるんや?」
「その話の続きは落ち着いてからしてやるよ。迎えの船も近づいてきてるしな」

 首を傾げ続けるシシバだったが、ジフウはミライが落ち着く時間を用意させたかった。
 これまで二年間ずっと、一人きりだったミライ。
 ずっと人間全てを恨み続けていた幼い少女に、いきなりこの数の人間は衝撃が強すぎた。

 それはゼロラも分かっていた。
 それでも二年ぶりに再会できた愛娘と、一緒に人の世で生活していくことを心に決めた。



「さあ、一緒に帰ろう、ミライ。お父さんの仲間達と一緒なら、お前も寂しい思いをすることはない……」
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