記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第27章 追憶の番人『殿』

第399話 恋路のために対決を

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「ま、まさか……リョウは"告白されたことがない"から、ここまで動揺してるのか?」
「お、おそらくな……。ゼロラも知っての通り、リョウは中身に問題があるから……」

 俺はリョウの兄二人の言葉で、リョウがこうなった理由を理解できた。
 ジフウも言っているが、リョウはその変態性のせいで、第一印象はあまりよろしくない人間だ。
 そのせいでこれまで告白されたことがなかったのだろう。

 そんなリョウが初めてまともに会った相手に、いきなり結婚を申し込まれた。
 しかも相手は一国の王子。顔もイケメンだ。
 さらに将来有望で、次期国王として期待されている。

 リョウもパニックを起こすわけだ。
 全てが衝撃的すぎて、とても脳の処理が追い付かなかったのだろう。

「リョウ! しっかりせい! 気をしっかり持つんや!」
「……ハッ!? や、やあ、シシ兄。ボクとしたことが、立ったまま眠っていたようだよ。寝不足かな?」
「んなわけないやろ!? お前まで現実逃避するんやない!」

 シシバの呼びかけで、リョウはなんとか意識を取り戻してくれた。
 だが、リョウ自身も兄二人と同じく、この状況を飲み込めてない。

「リョウ大神官、僕は本気です。どうか、僕と結婚してください」
「……ど、どうやらボクは、まだ夢の中のようだ。もう一度寝れば、目が覚めるのかな?」

 そんなリョウにお構いなく、ロギウスはその手を取りながら、告白を続けている。
 当のリョウ本人は、なおもこの状況を飲み込めないようだ。

「リョウ……落ち着いて聞いてくれ。お前は本当に、ロギウス殿下に告白されたんだ……」
「……本当なのかな? ボク、一国の王子様どころか、誰かから告白をされたことすらないんだけど?」
「ああ、本当だ。何と言えばいいのかは分からんが、お前は一国の王子に結婚を迫られてるんだ……」

 ジフウはなんとか説明をし、リョウも事態を飲み込み始めた。
 これまで直視できていなかった自身の手を取るロギウスの姿を見て、告白されたことがようやく事実だと理解したようだ。

「あ、あの……ロギウス殿下? な、なんでボクに告白したのかな?」
「改革の戦いの前日、通信魔法であなたの姿を見た時から一目惚れしました。また、他の人にも話を聞き――」

 立ったまま気絶していて話を聞けてなかったリョウに、ロギウスは再度告白した理由を説明し始めた。
 リョウの容姿や、内面。その全てをほめちぎっている。
 その話を聞くたびに、リョウの顔がこれでもかと赤くなる。

 本当にリョウはこういう経験が全くないらしい。
 リョウがここまで恥ずかしがる姿なんて、見たことがない。

 恐るべし、ロギウス。

「お願いします、リョウ大神官。どうかこの僕と婚約し、ともにこの国を支える伴侶となってください」
「あ、あばば……!? ボ、ボクが将来的に王妃様になるってことかな!?」
「『将来的に』と言うほど、先の話ではありません。この婚約が成立すれば、僕はすぐにでも父上から王位を受け継ぐつもりです」
「あばばばば!?」

 ロギウスの衝撃発現に、リョウは頬を赤くしながら、目元が青ざめている。
 凄まじく複雑な心境なのが見ただけで分かる。

「ロ、ロギウス殿下の気持ちは嬉しいよ。その気持ちが本物だってことも、ボ、ボクには分かりゅ」
「僕の気持ちをこの短時間で理解していただけるとは……。流石は僕が見込んだ女性です」
「お、お願い! これ以上ボクを褒めないで! ちゅ、ちゅらい!」

 ロギウスはなおも畳みかけるように、リョウへの求愛を続ける。
 リョウはなんとか言葉を返そうとするが、緊張で噛みまくっている。
 しかし、そんなことはロギウスには関係ないようだ。

「リョウ大神官。僕の思いに応えることはできませんか?」
「そ、そのだね……急に言われてもね……」
「確かに急な話ではあります。ですが、あなたには僕以上に思いを寄せる人がいるからではないでしょうか?」
「そ、それは……」

 ロギウスに尋ねられ、リョウは横目で俺の方を見てくる。
 リョウは俺に別れを告げたばかりだが、まだ心のどこかで迷いはあるようだ。
 俺もリョウのことは今でも好きだ。
 それでも、"俺がそもそも結婚していて、子供までいた"という、お互いに踏み込めなくなった事情が壁となっている。

 俺としてはリョウが幸せになってくれるなら、ロギウスと結婚してほしい。
 ロギウスは腹黒かったり、今のように暴走する一面もあるが、リョウのことをしっかり受け入れる覚悟をしている。
 そんなロギウスなら、リョウのことも幸せにしてくれるだろう――



「成程……やはり、ゼロラ殿ですか。確かにゼロラ殿は強くて男らしく、優しさも持ち合わせています。リョウ大神官の心をゼロラ殿から僕に向けるのは、簡単な話でないことも分かります」

 リョウの気持ちを読み取ったロギウスは、握っていたリョウの手を離して立ち上がった。

 そして腰に携えた刀を抜きながら、俺の方へと歩いてきて――





「ゼロラ殿! 僕はあなたに決闘を申し込みます! リョウ大神官の夫となるに相応しい人間はどちらか……ハッキリさせましょう!」
「ハアァ!?」

 ――ロギウスは刀の切っ先を俺に向けながら、決闘を申し込んできた。
 まさかロギウスが俺をここに呼んだ理由って――



 ――俺と決闘するためか!?



「ロ、ロギウス。落ち着いてくれ。リョウのことなら、俺は譲るから――」
「『譲る』なんて、生半可な覚悟はやめていただきたい! 僕は本気です! そもそもあなたを越えなければ、リョウ大神官の心を動かすこともできません!」

 ロギウスよ! リョウのことで完全に暴走してるぞ!?
 確かに俺も言い方が悪かったが、もう少し話し合えばなんとかなると思うんだが!?

「あなたが例え、かつての【伝説の魔王】であったとしても、僕はあなたに挑みます」
「ほ、本気なんだな……。もう少し話し合うことは――」
「不要です。僕はあなたを超え、リョウ大神官の心を射抜いてみせます!」

 恐ろしいまでに盲目なロギウス。
 『恋は盲目』とも言うが、完全にそれを地で行ってる状態だ。

 これはもう、話し合いでどうこうできないみたいだ……。

「ゼロラ殿。この玉座の間の先にある、王宮の屋上まで一緒に来てください。あそこはこのルクガイア城において、古来より決闘場とも言われてきた場所です。この一大局面にこそ、相応しいでしょう」
「わ、分かった……。とりあえず、俺も行く……」

 ロギウスは一人真剣な表情で、俺を王宮の屋上へと連れていく。
 周囲の他の人間もあまりに唐突なロギウスの対応に、口を挟む余裕すらないようだ。
 全員がただただ、ロギウスの勢いに押されて固まっている。

「その……ゼロラ殿よ。余の息子のせいで……何と言うか……すまぬ」

 屋上へと向かう間際、玉座に座っていた国王が俺へと話しかけてくれた。
 物凄く申し訳なさそうな表情で、言葉にも詰まっている。

 ロギウスよ……。リョウに恋をするのも構わない。百歩譲って、俺と決闘することも許そう。



 だがな、父親をこれ以上不安にさせるなよ……。
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