記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第28章 勇者が誘う、最後の舞台

第415話 追憶の主

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「ユメ様……? 本当に、あの【慈愛の勇者】……ユメ様が、自分達の目の前に……?」

 もうとっくに亡くなったはずのユメ様。
 そのユメ様が、今こうして目の前にいます。

 もしかしてここは、天国なのでしょうか……?

「ユ、ユメ様に会えるなんて……? これって、私は夢を見てるの……?」
「はい。あなた達は今、夢を見ています。さらに、私を――ユメを見ています!」

 お姉ちゃんの言葉を聞いて、ユメ様は頬に指をあてながらにこやかに答えました。










 ――え? 今のってもしかして、ギャグですか?
 ご自身の名前の"ユメ"を、"夢"にかけたのですか?

 そもそも、ユメ様ってこんな人だったのですか?





「……コホン。私としたことが、少々冗談が過ぎましたね。久しぶりに人と会話をしたので、テンションが上がってしまいました」

 自分とお姉ちゃんが固まったままだったのを見て、ユメ様は顔を赤らめながら咳払いしました。
 なんとか態度を整えなおしていますが、『テンションが上がったから』という理由で、そんなギャグを言ったんですか……。



 もしかして、ミライちゃんのハイテンションは、お母さん譲りなのでしょうか?
 ユメ様って、想像していたよりもフランクな人ですね……。



「――いえいえ、少し待ってください。あなたは本当にユメ様なのですか? 突拍子がなさ過ぎて、自分には理解できません」
「確かに突拍子もない話でしょう。ですが、私は本当に【慈愛の勇者】ユメなのです。どうすれば信じてもらえるでしょうか――」

 ユメ様は顎に手を当てて考え込み始めました。
 どうにかして自分とお姉ちゃんに信じてもらおうと、必死な様子がうかがえます。

 ――ただなんとなくですが、この人は本当にユメ様なのでしょう。
 ミライちゃんと似通ってますし。このまま考え込まれても話が進みませんし。

「わ、分かりました。あなたがユメ様であることは信じます」
「よかった~。ジョウインさんかミライちゃんがいないと、説明できないから困ってたのよ~」
「それだったら、ミライちゃんも連れてこればよかったのでは? 私達が部屋で見た光で、ユメ様がここに導いたんですよね?」

 お姉ちゃんの言う通りです。
 あの光がユメ様の娘であるミライちゃんによって発せられたものならば、ミライちゃん自身を連れてくればよかったのに――

「残念ながら、ミライちゃんを連れてくることはできません。ジョウインさん――いえ、ゼロラさんも同様です。ここに連れてこれるのは、『ゼロラさんとミライちゃん。二人と特に深い関係のある人間』だけです」
「つまり、当事者とも言える『ゼロラさんとミライちゃん本人は連れてこれない』と、言うことですか?」
「そういうことです」

 ユメ様は呆気からんと答えますが、やっぱりまだ状況を飲み込めません。
 そもそも、この世界は何なのでしょうか?
 ユメ様はどうして、こんなところに――

「あっ。『状況が飲み込めない』って顔をしてますね? 仕方がないので、もう少しだけ説明します」
「すいません。お願いします……」

 ユメ様は少しずつ、自分とお姉ちゃんに事情を説明してくれました。

 まずこの世界は、ユメ様の力で作られた世界のようです。
 死してなおこうして、別世界を作り上げるとは――
 流石は歴代最強ともうたわれた、【慈愛の勇者】ですね。

 そして、自分とお姉ちゃんをこの世界へと招いた力――
 それはミライちゃんがユメ様と縁のある花――清白蓮華に触れたことで発せられた光で、間違いないようです。

「ちなみに、ここは本当に"夢の世界"のようなものです。現実世界でのあなた達二人は、今眠っています」
「あ……。ただのギャグじゃ、なかったんですね……」

 ユメ様は本当にお茶目ですね。流石はミライちゃんのお母さんです。
 ゼロラさんもこの人と結婚して、結構大変だったのではないでしょうか?

 ――でも、今が幸せそうなので、構いませんね。



「そして、近くにいたあなた達二人だけは、こうして導くことができました」
「それについては、自分とお姉ちゃんが"ゼロラさんと特別深い関係にある"からですか?」
「そうなりますね」

 だから一緒にいたミリアさんは、ここには来れなかったのですね。
 自分にとって、ゼロラさんは師匠であり、超えたい存在――
 お姉ちゃんにとって、ゼロラさんは想い人――
 そんな特別な思いがあるからこそ、こうしてユメ様に会えたのですか。



「それにしても、やって来てくれたのがあなた達二人で助かりました。私もこの世界から少しだけ様子はうかがえましたが、あなた達二人なら、"これから起こる事態"を乗り越えられそうです」
「『これから起こる事態』……ですか? 一体、何が起こるのですか?」

 自分の質問に、ユメ様は少し暗い顔をしながら答え始めました――
 現実世界とは違う、この別世界から見ていた世の中の状況――

 きっとユメ様は、自分達よりもいち早く状況を感知しています。



「私の次の代の勇者――【栄光の勇者】と呼ばれる当代勇者、レイキースの動きについてです」
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