記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第28章 勇者が誘う、最後の舞台

第417話 【慈愛の勇者】①

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 ユメ様は抜き取った刀の切っ先を、こちらへと向けます。

 この構えには、見覚えがあります。
 ロギウス殿下が使っていた剣技――<理刀流>。
 剣術流派としての宗家は、ユメ様のお父さんでもある、イトーさん――

 歴代最強の勇者とも言われた、ユメ様――
 その剣技は、自分の想像できる領域ではありません。

 ですが――

「お姉ちゃん……下がっていてください」
「ラ、ラルフル……大丈夫なの? 相手はあのユメ様よ……?」

 ――自分はここで、退きたくありません。
 お姉ちゃんも心配するほどの強敵です。
 ですが、この人と戦った先にこそ、自分の更なる高みがあるように感じます。



 お姉ちゃんに後ろに下がっていてもらい、自分はユメ様の前へと一歩出ます――



「覚悟はよろしいですね? あなたの力を見極め、更なる高みへと導けるよう、私も最善を尽くします……!」
「はい。よろしくお願いします。ユメ様……!」

 自分とユメ様は互いに構え合い、静かに睨み合います。
 ユメ様の目は本気です。本気で戦う覚悟が伝わってきます。

 強くなった今だから分かる、達人の間合い――
 しばらく時が流れた後、自分は意を決しました。



「ハアァ!!」

 こちらから先手を打ちます!
 ユメ様の実力は未知数ですが、怖気づいてもいられません!

 ここにたどり着くまでに得た力――
 その全てを、ユメ様にぶつけます!

「いい動きですね。あの人が認めただけのことはあります」

 ユメ様は飛び掛かってきた自分に対し、僅かに体を傾けて攻撃を躱します。

 動きに一切の無駄がありません。
 こちらの拳を躱したユメ様は、そのままの流れで刀による突きを放ってきます。

「フゥウン!」


 ガキンッ!


「足にかけた<鉄の防御>によるガード……。流石です。私の攻撃にこれだけ素早く適応できるとは、想像以上です」

 ユメ様はこちらの実力を褒めてくれますが、その表情にはまだまだ余裕が見えます。
 咄嗟にガードはできましたが、今のやり取りだけでも、十分に伝わってきます――



 ――歴代最強と謳われた、【慈愛の勇者】の実力。
 その力は間違いなく、レイキース様以上です……!



「驚いている暇なんて……与えませんよ?」

 自分が考えている暇もなく、ユメ様はすぐに背後へと回り込んでいました――

「は、速い!?」
「セヤァアア!!」

 ――そしてそこから放たれる、刀による横なぎ。
 防御が間に合わないと判断した自分は、咄嗟にしゃがんで躱します。

「テヤァアア!!」
「甘い!!」

 そこからユメ様へと足払いを仕掛けますが、軽く飛び上がって躱されました。
 自分はそのまま側転で起き上がりつつ、距離を離しますが――

「すみませんが、付け入る隙は与えません!」

 ――ユメ様はすぐに近づき、突きの連撃を仕掛けてきます!

 攻撃も回避も、その全てが一連の流れとして取り込まれている、ユメ様の戦い方――
 分かってはいましたが、この人はとんでもなく強いです……!

「ハァアア!!」
「フフッ。いい気迫ですよ」

 しかし、自分とて負けるつもりはありません。
 ユメ様の速さに置いて行かれぬよう、全神経を集中させて反応します。


 バキンッ! ガキンッ!


 自分の拳と蹴りがユメ様の刀と衝突するたび、この幻想的な世界に衝突音が響き渡ります。
 自分の攻撃はユメ様に捌ききられますが、決して押されているわけではありません。

 かつての自分では、決してたどり着けなかった領域――
 圧倒的な強者がたどり着けるレベルの戦い――

 ――今の自分は、そこにたどり着いた実感があります。

 魔法使いだった時よりも、今の自分ははるかに強くなったという確信。
 研ぎ澄まされた集中力は、ユメ様の流れるように鋭い剣捌きも、確実に捉えられています――





「――え!? ラ、ラルフル!? ユメ様!? そ、その姿はもしかして――」
「『その姿』……?」

 自分とユメ様の戦いを離れていたお姉ちゃんの声で、自分はふと我に返ったように動きを止めました。
 お姉ちゃんの顔を見ると、何かに驚いているようです。
 お姉ちゃんが言うには、自分の姿に何かあるようですが――





「――え? な、なんですか!? これは!?」

 自分の体から湧き上がる、<緑色のオーラ>。
 自分には魔力がないので魔法ではないはずですが、それに近いような力を感じます。

 この力は一体――



「やはり、あなたならその領域にたどり着けると、信じていましたよ」

 自分の体に起こった現象に驚いていると、ユメ様が語り掛けてきました。
 ユメ様は構えを解き、静かにたたずんでいます。

 ただその体には、自分と同じ現象が起こっています――



 ――<白色のオーラ>。
 ユメ様の体から発せられるそのオーラは自分のものと同じく、強い力を感じ取ることができます。
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